第6話 押すなよ!押すなよ!
ガレキを跳ね除けて出てきた鎧男だが、ボロボロじゃん。
「あいや、待たれい!
もう一度、吹っ飛ばしてやろうと腕を上げたら、後ろから声がかかった。
どうやら知り合いらしいな。
「御遣い様も、しばらく、しばらく」
素早く、俺たちの間に入り込むと鎧男とゴニョゴニョ話し込んでいる。
友成は、姫さんのいる方を示したりして説明しているようだ。
鎧男も悩み始めちまったぞ。俺は友成の襟足を掴んで後ろにポイと投げ、鎧男の目を見ながら、友成に話しかけた
「変な事を吹き込んじゃいけないぞ、友成」
友成も一回転して見事に着地した。
「いやしかし、御遣い様……」
「ここで、正しい事やってるのは、この守安で、曲げた事をやってるのが俺たちだ……」
鎧男にも何か伝わったらしい。大鉾を一振りすると、腰を落として身がまえる。
「それがしも、お役目が
俺は、コマのように小さく回転して鎧男の懐に入ると、
「酷い!」「また、口上の最中に!」
非難の声が、聞こえるがさっきよりも当たりが柔らかい。彼らにも事情が伝わっているのだろう。吹っ飛んで行った鎧男は奥の扉にぶち当たると、半壊していた大門丸ごと向こう側に崩れ落ちてった。
「
俺は、副隊長の一人に目配せして大声で怒鳴って、ゆっくりと歩き始める。
俺が進むに連れて、守備隊の陣形が崩れる。俺は姫さんの一行を先に行かせると、さっきの副隊長に向けて叫んでやった。
「そんじゃな!追っかけて来るなよ!俺たちは逃げるけど、追っかけて来るなよ!」
そう叫んで、馬に乗ると南に向かって進み始めた。
後ろを振り返ると、案の定、さっきの副隊長が一隊を引き連れて、追いかけてくる。
「それー!あそこにいるぞー!みなのもの、にがすなー!」
「あー!また、ぐんぜいがふえているぞー!きをつけろー!」
結局、この副隊長の隊は国境まで付いて来るのだが、巧みに隊を動かしてこっちと合流する軍勢は素通しさせ、国に残る兵隊は自分達が吸収し、西戎の兵は手柄争いに見せかけて遮ったりと上手く俺たちの逃亡を手伝ってくれた。最後まで、酷い棒読みは治らなかったがな!
「ここからさきは、くにざかい、われわれはすすめないぞー!こまったなー!」
おいおい、手を振って見送る兵がいるぞ。
それほど広くない川を渡ると、ここは南蛮の地、皇国の兵はもちろん、西戎の兵も進めない。兵隊が入れば、西戎と南蛮の戦になる。あ、守安もいるな。新しい鎧に着替えたらしい。副隊長に詰め寄っていた西戎の将を抱え、そのまま川を渡ろうとして、西戎の兵に止められている。これで、皇国の隊は西戎に止められたって事になる。
「なかなか、守安も役者だな」
俺が関心していると、友成が否定する。
「いや、あやつは本気で追っかけて来ようとしてますな。何故か西戎の将が必要だと思い込んでおるようですが……」
きっと、副隊長が何か吹き込んだんだろう。脳筋過ぎるぞ守安!
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