第4話 大逃亡!

ゲームみたいに「レベル」のあるこの世界、貴族達の方が幼い頃からパワーレベリングやらなんやらで、高レベルになっている。平民出身の一般兵なんかとは比べ物にならない。


さらに、ここには大将軍とかの軍のトップとか、文官の大魔法使いがそろって出席してたんだ。人質の心配さえ無くなれば、どちらが有利なのか語るまでもない。この聖堂内だけなら兵を抑えて逃げ出すのは造作もない。


だが、戦争は数だよ兄貴!


大聖堂の中だけならば、こちらが有利だが、一歩外に出ればその形勢は逆転する。この都を取り巻く軍勢が本気で動けば、この場に居る人数で姫を護りきれる訳もない。


まずは、逃げられるヤツはとっとと逃げる。たくさんの逃亡者で西戎の軍を撹乱して、姫さんを確実に逃がす。


そして、無事に逃げられたヤツは、地方にいる皇国の軍勢を呼び戻し、今度は西戎の軍ごと都を取り巻いてやるんだ!


後を頼まれ、ここに残る者と、姫さんに付き従う者。


国家の中枢を担ってきた大貴族達は判断が早い。素早く別れて足早あしばやに移動しながら方々ほうぼうに指示を出し始めた。


俺は姫さんを抱え、南の門を目指して走る。周りの貴族達も俺がどこを目指しているのかを悟り、それぞれに動き出したようだ。


大聖堂を背にして、大通りを南に走っていると、何騎か後ろから追いかけてくる。

敵かと思って振り返ると、どうやら味方の貴族のようだ。


「おーい!御遣みつかい様!お待ち下されー!」


姫さんの顔をのぞくとうなずくので、立ち止まり、追いかけてくるのを待った。


「やあ、ありがたや。御遣い様、それがしは、右近の少将、友成ともなりと申す者、南の王国まで姫のお供をさせて頂きたく」


騎馬の先頭にいたニイちゃんがそう言ってくる。まあ、姫さんの身の回りとか面倒を見てくれる人が必要なのは確かだ。

ニイちゃんは武官らしく、貴族にしては動き易そうな服を着ている。付き従っているのも戎衣じゅういとか胡服こふくと呼ばれる騎獣きじゅう用の服。女性も二人いる。


「じゃあ、俺が南の門をち破るから、みんなはその後から出てきてよ。俺は門の外の軍勢もぶっ飛ばしているから、みんなはそのまま、バサの町まで先に行って、旅の身仕度をしてくれ。だぶん、準備が終わるまでには追いつくからさ」


そう言って俺は姫さんを友成に任せ、南の門へと走り出したのだった。

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