第3話 天の御遣い

玻璃はりの天井が破れ、何かが飛び込んでくると、聖堂内にそびえ立つ大きな祭壇が倒れてきたのだ。


後世、大聖堂に残った記録には、こうある。


時は至り、天からの御遣みつかい下りて問う。儀は成りしか。

大僧正、応えて曰く、成らず。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


いやいや、あの時、坊さんは崩れた祭壇の下でノビちゃって、何も応えて無いからな。

そう、ミツカイって呼ばれてるのが俺。田中仁だよ。宇宙から直接大聖堂に突っ込んだんだけどさ、祭壇に引っかかっちゃって、派手にひっくり返しちゃったんだよね。

おかげで、悪いオッさんはガレキの下に埋もれてて、邪魔されずに逃げ出す事が出来たんだけどさ。


姫さんもびっくりして、大きな目をまん丸にしてたな。


「神さんから、聞いているだろ?俺が南の王子のところまで連れて行ってやるからさ」


って言ったら、涙ポロポロ溢しながら、


「確かに御遣いを寄越して頂けると御神託ごしんたくを受けておりました。ですが、夢かうつつわからぬ日々にて、御神託もまことの事なのかと疑いも。誠に申し訳ありませぬ」


と、平伏し始めた。いやぁ、この国のお姫さまに土下座とかさせたら、俺の方が悪役になっちゃうよ!慌てて引き起こして、すぐに逃げ出す事にしたのだけど、さすが姫さん、育ちがいいね。みんなの方に向いて後を頼むと言付ことづけしていた。

多分、みんな高位の貴族だろうオッさん達だったけど、姫さんの一言で奮い立ち、暴れ始めた。


人間がポンポン飛んで行くのを見たのはコレが初めてだった。酷いヤツは兵士の足を掴んで、棍棒代わりにしているヤツがいたな。



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