第11話 淡い慰め
11 淡い慰め
優しくなでなでとか。そんな慰めいらない。
あたしが失恋したって事実にはかわりないんだから。
恋は女が主導権なんて誰がいったのよ。
それともあたしが女でないとでも? 小娘ですって? それとも男だとか思ってる?
いいえ、あたしは生物学的にまちがいなくオ・ン・ナです。
「悲しいけど、あたし、女なのよね」
それも妙齢の。
今が一番ノッてるはずなのに。魅力一杯なはずなのに。
なんだってスルーするわけ?
完全スルーではないけど、なんかクンクンってあたしを嗅いで、去っていったアイツ。失礼極まりない。犬か、あんたは犬か。
なんなのよーっ!
ムーカーツークー!!
あたしを何だと思ってんのよ。
いっそ視界にすら入ってませんって方がましよ。
存在に気づかなかったとか。プライド傷つくけど。そういうのならまだ許せるわ。
フラ~っとこっちまできて、どっか行くなんてあんまりじゃない?
一旦はあたしの色香に惹かれたってことでしょう?
しっぽなでなでの次はペロペロと。いいのよ、もう気持ちだけで。
君はいつも兄弟をペロペロしてるけど逆毛だっての知ってるから。不器用か。
逆、逆、とあたし心でいつも突っ込んでるんだから。
あんたがまだ子供だってのは重々承知してる。
わかんないわよね、こんな恋心。あんた相手に発情するわけにもいかないしさ。
もう落ち込むわー。
結構な美少女だと思うのよ、あたし。客観的にみての評価ね。
何がいけないんだろう。
悪いとこあったら直すから、教えてほしいの。
くー……、きっついわーこれ。
今夜はヤケ食いでもしようかしら。おしゃれなあたしがそのくらいの落ち込み。
察してちょうだい。
もう帰ろうかと振り向いたら、そこにはモデルガン(実際に弾が出る。当たるとマジ痛い。怪我する。キケン)を構えた女がいた。こいつはいつも何かしらの武器を手にあたしの後ろにいるんだ。鬼の形相で。
あんたか! あんたのせいか!
そりゃあ彼も引くわ。相手はあたしでなくてもいいんだし、わざわざ物騒な給仕係がいる女に手を出す必要なんて無いもの。
あたしは納得した。溜息ついた。
深窓の令嬢として育てられた長毛種のアタシ。
血統書付きの大層なご身分。でもそんなの関係ないの!
アタシはあの、この地域を支配する圧倒的ボスと結ばれたいだけなの!!
人間に決められた相手と結婚とかそんなの嫌なの! なのにいっつもこいつが邪魔をするのよ。
超腹の立つ! 激おこ!
チビ達があたしを慰めようとしてくれたのは、この「飼い主」に恋を阻まれたアタシを不憫に思ったからなのね。
チビなりにわかってくれてたのね。
どうもありがとう。
でも淡い慰めは要らないわ。
あたしはあたしの恋を実らせるために、がんばってみせるわ。
この優雅な生活を捨てても!
あのボスと結ばれるためなら。恋する乙女なめんじゃないわよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます