第10話 彼と惑星

10  彼と惑星


わたしは夢をみる。


彼と、彼が訪ねる惑星の数々を。


わたしは自分の星に縛られ、ここに派遣されてきた財産。

貧しい故郷の星を維持するには、人的に優れた者を生み出し、派遣し、対価を要求するしかなかったから。わたしたちはそうしなければ生きていけなかったから。人々は、皆、故郷を支えるための大切な資源でしかない。


だから自由に旅なんてできやしない。

派遣先であるこの惑星と、生まれた星しか知らない。


でも彼は、パイロット。

そしてキャプテン。


星の海をわたる、翼を持った人。


わたしを愛してくれる人。



誰かに愛されるなんてこと、知らなかったわたしに

こころを教えてくれた人。



彼はひとつの惑星に縛られることなく、

いいえ、星域の壁さえ軽く飛び越えて

未知なる世界へ飛び込んで行ける人。


わたしはただ、ここで彼を待っている。

仕事をしている最中も、

家でぼんやり彼が置いていった「本」を読んでいる時も

いつも彼といろいろな惑星が頭のなかに浮かんでる。



今はこの星に縛られているわたしに、

外の世界をたくさん教えてくれるために、

彼は必ず帰ってくるから。


わたしはにっこり彼を見送り、そして迎える。


彼の仕事に危険を伴うことは百も承知。

ほんとは不安でいっぱい。体が破裂しそうなくらい。

でも、笑顔で送ってあげたいから。


そんなわたしに彼はキスしてこういうの。

「待っていて。僕は必ず帰ってくるから、ここに」



決して嘘をつくことのない彼を、わたしは信じるしかなくって。

宇宙嵐やワームホールや、海賊船やら。

何にまきこまれるかわかったものじゃない。


でも、わたしは信じてるの。その強さが、彼の帰還の力となるって。



彼と、彼の巡る惑星を夢見ながら

今日もわたしは眠りにつく。



愛しい夫の、平安を祈って。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る