第45話 犯人を探して

「とりあえず、私が襲われかけたのはあそこだけどきっと逃げだしたと思うから違う場所に行くべきよね」

「まあな。だけどそこに手がかりがあるかもわからないからな。とりあえず行くだけ行こうぜ」

心の傷も癒えないまま、動けないとやってられないというように私とロイは犯人を追求するために駆け回っている。


ロイの体も完全に回復したわけではないので駆け回るといってもかなりゆっくりと、だ。


最初のうちはあまりにも辛そうで休む方がいいのではといっていたんだけどよくよく考えれば私がロイの立場なら寝てなんていられないなと思ってもうなにも言わないでいる。


それにだ。

仮にロイを強制的に部屋に連れていき寝かしつけたとしよう。その場合ゆっくり休む男か?ロイは、と考えるとその声は否。絶対に起き上がってくるだろう。その予測に自信がある。


なので二人でこの事件の犯人を探している。


のだけど、どうやれば見つけ出せるだろう。


「犯人がそうみすみす証拠を残すような真似するかなあ……」

なんて若干文句めいたことをいいながらもロイと共にその場所へ歩みを進める。


「長年騎士として働いてるおれの勘を舐めるんじゃねえぞ」

「やけに偉そうなのが癪だけどそれもそうね。長年騎士をやってるロイくんの勘を少しは信じるわ。……あと、傷が痛むときは痛いっていいなさいよ。」

明らかに痛みで歪んだその顔を見てそういうもロイから帰ってくるのはそっけない

「うっせ。ほらもう着いたぞ」

という言葉だ。

本当にこの男は……と呆れつつ

「うん。着いたは着いたけどなんもないよね」

という。


さっきから痛がってるロイくんを支えてあげたいものの変に触ればもっと痛くなってしまうだろうと思い触ろうにも触らず変に浮いた手。


そして私は次の瞬間その手であるものを指差した。


「あれっ!あれは?」

そういうと体が自由に動かないロイに代わってそれの元にいきそれ手に取り、掲げてみせる私。


「なんだよ。お前ふざけてんのか」

「はあ?!どこがふざけてんのよ。これ。見えないの?あんた」

「なんだよ。バカには見えないとかいうんじゃないだろうな」

「なわけあるか!これよ、これ。髪の毛!」

「……ああ……」

「なにそのうっすい反応。本当に腹立つやつね。これは犯人追求の為の大きな証拠になるじゃない」

「いや……いやいやいやいや、お前アホか。この道を何人の人が通ってると思ってんだよ」

「……そういわれれば……」

うぐう……。

ロイに図星を突かれるなんて、屈辱。


「でもまあ、こりゃ白の長髪だな。これだけじゃ男女の判別もつきずれえよな」

「そっか……。そうだよね。はあ……。犯人探しって存外に難しいもんだね」

「……いや、そんなこともないぞ。お前、覚悟はあるか?」

「いきなりなによ」

「お前が狙われてんならお前が囮になりゃあ、簡単に犯人は捕まるはずだろ」

「……簡単に、かは謎だけど、まあ、正論ね。ロイにしては珍しく」

「ほんとにいちいちうるせえやつだな」

「それはお互い様でしょ。あとその件、引き受けた。」

「……大丈夫だ。お前を傷つけさせたりはしないから」

「なにいってんのよ。逆に犯人の心配をしてほしいくらいよ」

「……ほんとだな」

「でも今日はさすがにでてこないよね。きっと」

「いや、わからん。案外犯人はその日のうちに再犯したりするし、事件の現場に帰ってくる、なんて言葉もあるくらいだからな」

「へえ。そうなんだ。初めて知ったわ。それは」

「だからとりあえずはお前が一人でいりゃあ犯人は寄ってくんじゃねえの」

「なるほどねえ」

そういうと私はずっと手にあった知らん人の髪の毛をポイして立ち上がる。


「んじゃあ、他の星鎖の騎士団の人も呼んでくるわ」

「はあ?なんでだよ」

「なんでって、あんたその状態じゃあ思うように動けないじゃない。それだったら他の人に」

「いや、俺が行く」

そういうと強い瞳でバッと立ち上がるロイ。

「はあ?そんな強がらなくても」

「強がってなんかねえよ。それにこういうのは少人数の方が効率がいいし、俺は俺の落とし前をつけたいってだけだ。」

「強がり」

「うっせえ」

「じゃあなに、これから私はずっと一人でいればいいわけね」

「ああ。で、その後ろに俺がいるから」

「……なんか嫌な表現」

「表現じゃなくて実際にそうすんだよ」

「はーい。じゃあ、私、ここから自由に動いていいのね」

「……」

「ちょっと、聞いてます?」

「ああ……。いや、そうだな。今更か」

「独り言?ねえ」

「とりあえずは俺らなりにそうしよう。」

そういうロイの顔を見て、私と同じ感情・考えが一つあることに気づく。


サアヤのこと。


わかっているけど知りたくない。


知っているけれどまだ直視できない。



だから、違うことをしていたい。





「じゃあ、私は一人でそこらへんブラブラするから」

そういってから改めて考えると今の全身痛くて頭を打たれた次の日のロイくんにその犯人とやらを倒す力があるのかと疑問に思う。


本人が強がっているということは明白であるわけだし。


やっぱり他の星鎖の騎士団の人を呼んだ方がいいんじゃないかなという考えが一瞬頭をよぎるけど、その考えもすぐに消える。


もしほんとにピンチの時は、というかそもそもがロイに助けてもらおうなんて思わずに私がやろう。



うん。




なんて、強く決心した私だった……。





のだけどその日、その犯人が私の目の前にある現れることはなかった。




その代わり……とはいえないけど、サアヤとのお別れの式が次の日に執り行われることが決まった。

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