第35話 ここはどこ?
「いったあ〜〜……」
「いってえ……」
「なにここ……どこ……」
そういいながら、辺りを見回す。
けれどあたりは真っ暗でなにがなんやらさっぱりわからない。
そして………
「いって!おい!いきなり引っ張んなよ」
「よかった。ロイくんは相変わらずそこにいるのね」
「そんな確認の仕方じゃなく、口でいったらどうだ?」
イラついた様子のその声に「そうねー」なんて適当に返事を返しながら、ロイと繋がれてない方の手のひらにある感触を確かめる。
うん、確かに玉はここにある。
きっと、トラップはあれどこれは本当の玉なのだろう。
ってことは玉は全部で3つなのだからあともう一つの玉を見つけられれば私らの勝ち……。
そしたらキラと話す機会もできるかもしれない。
その為にはまずこの謎の空間からでなくては、なんだけど……
「さっき、落ちたよな」
むすくれた様子の声でそういうロイくん。
「うん。あれは落ちたとしか考えられないよね」
「はあ……」
大きなため息をつくロイくんに、なんだか申し訳ない気持ちになる。
結局こうなったの私のせいだし。
でもまあ……
「玉は手に入ったしね」
「……ったく、お前はなんでそういつでも能天気なんだよ」
「別に、能天気ではなくない?」
「どうだか……」
ひどくふてぶてしいその物言いに思わずむっとする。
「ちょっと、なによ」
そうやって、いつものごとく喧嘩が始まりかけた、その時。
「……え……」
口をつむり、黙り込む私。
「なんだよ」
「なんか、子供の笑い声聞こえない?」
「はあ?子供の笑い声だあ?」
「え……」
「なんだよ今度は」
「あそこ……走ってる……子供……」
目の前をかけている子供達。
この、地から落ちた地でそんな子らを見るのはなんとも不思議だし異常だ。
なにより先ほどまで闇が広がっていた空間にぼんやりと、しかし少しずつはっきりと現れたのだからこれは幻か何か?
ロイに至ってはなにも聞こえないし見えてもないようだし。
なんなの、これ……
「おい」
訳も分からなくて、無性に不安で、胸がぎゅっと痛くなる。
なんなのこれ。
そればかり思ってたら不意に強く手を握られる。
「ロイ……」
「俺はここにいる」
力強いその言葉でパニックになりかけた心に少しだけ余裕が戻ってくる。
「知ってるよ」
返す言葉は相変わらず無愛想になってしまう。けど
「そうかよ」
そういいながら、ロイは私の手を変わらず握っていてくれる。
余裕がでてきた私は、改めて、それを見やる。
男の子が3人と、女の子が、1人。
楽しそうに遊んでる。
私もその中の1人のようで、時節その子らがこちらをみて微笑んだり話しかけたりしてくる。
まるで夢の中にいるみたい。
そしてその子達は、全くみたこともない子らなのにどこか既視感がある。
無意識のうちに私自身の幼い頃と重ねてみてしまっているのかな。
わからないけど……
「え……」
「どうした」
「う、ううん。あ……消えた……」
「消えた?」
「うん」
そう答えながら、慌てて目元を拭う。
まだどこか自身を疑うような気持ちもあって、拭うのにつかった服の袖を触ってみた。
確かに湿っている。
じゃあ、私、本当に泣いて……
そして改めて顔をあげると、やはり、それはもう跡形もなく、なくなっていた。
「おい、大丈夫か」
ぶっきらぼうで、いつもと同じようなのに、どこか優しいロイの声音。
「うん」
少し呆然としながらそう返す。
そして、なんの前触れもなく、あたりが明るくなっていく。
現れたのは、というか、それによって明らかになったのは、私たちがどこかの廊下にいたということ。
というか、この場合さっきいた階の下の階の廊下なんだろうけど……
「なんだったんだろうね……」
そう呟いて改めてロイを見やると、ロイは予想外にとても厳しい顔をしていた。
「え、なに」
「気に食わねえ……」
「気に食わねえって……私のこと?いきなりすぎじゃ」
「お前のことじゃねえよ」
むしゃくしゃした様子でそういうと立ち上がろうとするロイくん。
だけど今は手足ともに私と繋がれてるために立ち上がろうとした状態で、足首をひねり無様に後ろ手に倒れる。
「大丈夫?ロイ」
「大丈夫か、じゃねえよ。お前も立てよ。あれ、見えねえのか」
そういわれて、ロイが見やる方向をみたら、なんと玉が落ちていた。
「あんなとこに……」
「そうだよ。はやくいくぞ」
そういうと乱暴に私の手足を引っ張るロイ。
「ちょっ、痛い!さっきからなんなの?イライラしちゃってさ」
そういわれてやっと自分がイライラしてることを自覚したらしいロイは
「……すまん。……お前のこと、利用されてんじゃねえかって思ったらむしゃくしゃして……」
という。
「……え?利用?誰が」
「……さあ。つか、利用、っつうのかもわかんねえけどさっきのお前だけに見えた変なやつらとか。……とにかくさ」
やけにもやもやした様子のロイくんはそう吐き捨てるようにいうと頭をかきむしる。
正直私は何がなんやらなんだけど。
「お前のこと守れなかったのが……」
「え?」
「とにかく立て。とっととあれ拾って勝って国に帰るぞ」
「ちょっ、まだ何言ってたか理解し途中なんですが」
「知るか。いいから立てよ」
「はあ?ほんと、失礼なやつね」
沈んでいた気持ちも気づいたら元どおり。
そして声がけするまでもなくすんなりと立ち上がる私たち。
なんなく玉を手にする。
……が、口喧嘩はおさまらぬまま、そのまま玉座の間へと向かった。
私たちが玉座の間につくと驚いたことにキラアンドケケペアもその場にいた。
まだ玉を探してると思ったのに
「くそ。やっぱり出来レースじゃねえか」
隣で険しい声音でそういうロイくん。
意味がわからないし、いちいちイライラされるとこっちまでイライラするのでやめていただきたい。
「よく戻ってきたわね」
玉座に腰掛けているオカマ王が妖艶な笑みを見せる。
私は何も言わずにスッと二つの玉をみせた。
「はい。これ、もってきました」
なんの反応もないので付け足すようにそういう。
が、相変わらず返事はない。
なに、ロイくんじゃないと言葉も返さないの?
「私の元に、といったのよ」
「はい?だから、いまこ」
「危ねえっ」
「は?」
ロイくんの言葉に怪訝な声をだした直後、ロイくんに押されて倒れこみかける私。
なんとか踏ん張ったものの……
「なにするのよ」
そういってロイのほうをみる。
そしたらさっきまで遠くにいたキラアンドケケペアがすぐそこにいた。
そして……ケケのその手には刀が握られていた。
どうやらロイくんはそんなケケから私を庇おうとしてくれたらしい。
「私の元に……ね」
もう一度そういうオカマ王。
そこにいる戦闘態勢のキラアンドケケペア。
頭の鈍い私にもなんとなくわかってきた。
戦いはまだ終わっていない。
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