第4話 異世界の女

 目が覚めると右腕は石の中だったEMBEDDED


 激痛。そして、気絶。


 次に、目から覚めたとき、右手の代わりに紅い棒JAVA BUTTON があった。紅い棒JAVA BUTTON。よくよく見れば、面とりされた直方体だ。


「目が覚めたか。」


 声の先には、全身スーツの女がいた。上から下まで紅い鎧だ。


 女は、ビーッンと革のようなSTRINGを引っ張っていた。その女の耳は、長く、どことなく幻想的だった。耳だけが、映画かコミックスでみた形であった。


 耳以外は、見慣れた外観だ。紅いスーツに、ヒール。そして革のムチSTRING


「またも、俺はの開発室に召喚されてしまったのか。」


 女の耳はピクリと動いた。思わず漏れた思考を聞かれたかは分からずじまいだったが、耳の次に動いた女のムチSTRING は、ピシャリという音とともに、確実にベッドの手すりを砕いた。ここは、ただの開発室ではない。女の耳も尖ってEDGEいる。 どこかおかしい。


 ソフトウェア開発において、スーツの女が指揮を取るMANAGEMENTことはまま見られる。紅いスーツ、ヒール、高い身長から繰り出されるムチSTRING。定番の開発スタイルの一つである。(誤解を与えたくないのだが、定番の一つだったというだけだ。今までに召喚された開発プロジェクトの中での、だ。)


 しかし、今回はENVIRONMENTが異なっている。 なにせ、女の耳が鋭角EDGEだ。


「ここは…… いわゆる異世界BAY AREAなのでは。」


 俺からの音声を入力STDINされたと思わしき女は、出力の結果として、地面をピシャリと叩いたSTDERR


 床には、石のような破片が転がった。下は石畳だろうか。病院のタイルにも見えた。床はしなるムチSTRINGに耐えられる強度ではないようだ。


 ムチSTRING言わせながら、女は、命令口調COMMANDを発した。


こい。開発室に案内する。HEY, GOTO HEAVEN WITH ME.


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 ……ここが異世界BAY AREAなのだろうか? または、開発プロジェクトのまっただ中なのか? もしくは両者なのか? 俺は分からぬまま、ベッドから腰を下ろした。


 「後者ならば、ここは仮眠室だな。」と一瞬、思い浮かんだ。だが、すぐに忘れることとなった。その後の光景を見たあとには、ささいな思い付きなどは、どうでもよくなっていたのだった。


----


 後日、俺はベッドに戻った。いや搬送されたと言っていい。ソフトウエア開発において、異世界BAY AREAかどうかは、ささいな問題だ。間違いない。ベッドとベッドの間には、どんな物語があったのか。その話は、生きて現実へと帰還したときにでも書くとしたい。

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