第13話タイムリープ

 退屈な事件をいくつも解決していたカクヨだった。

 そしてカクヨは今日もカクヨ研究所の一室でハンモックにゆられていた。

「あ〜ぁ、退屈。なにかおきないかな〜」

 またハンモックをゆらした。

「こういうときにはクヨム君が、入り口をバン!って」

 そう言って入り口を見た。

 バン!

「博士! 事件です!」

「キタキターーーーーーーーー!」

 カクヨはハンモックから降りるのももどかしく、転げ落ちた。

「イタタタ……」

「博士! 大丈夫ですか?」

「だ、だいじょぶ」

 赤くなった額と頬と肘を撫でながらカクヨは答えた。

「それで、クヨムくん。事件というのは!?」

 立ち上がり伸びでもするように精一杯体を伸ばし、腕を組んで訪ねた。

 そこでカクヨは胸ポケットからメガネを取り出し、かけ、クヨムをよく見た。

「クヨム君、急に老けてません? おじさんになってますよ?」

「クッ! この部屋にくるとつい……」

 クヨムは深呼吸をした。

「いいかぁ。カクヨぉ。いつまでも俺をこき使ってるんじゃないぞぉ! あれ? カクヨってこの時代にメガネかけてたっけ?」

「かけていませんよぉ?」

 カクヨはメガネを手にとり、ゴミ箱に向けて放り投げた。

「それに、こき使った憶えはないですねぇ」

「あ、ちょと聞いていい?」

「どうぞ?」

「今のメガネってなに?」

「おじさんになってもクヨム君なんですね〜。いいですかぁ? 頭がいい人は、それを示す記号としてメガネをかけなきゃならないんです」

「え? そうなの? 俺、この時代も俺の時代もメガネかけてないよ!?」

「あぁ、なるほど〜。だからクヨム君なんですね〜」

「カクヨだって今、メガネ捨てただろぉがぁ!」

「うん。こめかみとか鼻のあたりがね〜。あんなの人間がかけるもんじゃないですねぇ。非人道的拷問に使えますねぇ。まだムズムズしてます」

 バン!と入り口がまた開いた。

「あ〜、カクヨぉ。ごめんね〜」

「え〜と、未来のカクヨですか?」

「そうそう。このバカがタイムリープを実現させたんだけど、それでまずここに来るって書き置きのこしててさ」

 未来のカクヨは未来のクヨムの襟首を掴んだ。

「そういうのは、書き置きなんか残さずにさっさとやるもんですよぉ」

「だ、だって…… もし事故とかあったら……」

「はいはい、戻るよ。カクヨぉ、ごめんね」

 そう言って二人とも消えた。

 バン!と入り口がまた開いた。

「博士! お茶です! 珍しいのを友人からもらって!」

「クヨム君、そういうときには『!』はいらないんだよぉ。まったくいつまで経ってもクヨム君だねぇ」

「博士〜。そんな言い方はないじゃないですか〜〜」

「じゃないですか〜〜じゃないですよ〜。そういう後ろ向きなとこがクヨムくんの悪いとこだよね〜」

 そういうと、カクヨは小さな脚立からハンモックに乗って寝転んだ。

 そしてカクヨは呟いた。

「あ〜ぁ、退屈。なにかおきないかな〜」

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