第12話宇宙人
退屈な事件をいくつも解決していたカクヨだった。
そしてカクヨは今日もカクヨ研究所の一室でハンモックにゆられていた。
「あ〜ぁ、退屈。なにかおきないかな〜」
またハンモックをゆらした。
「こういうときにはクヨム君が、入り口をバン!って」
そう言って入り口を見た。
バン!
「博士! 事件です!」
「キタキターーーーーーーーー!」
カクヨはハンモックから降りるのももどかしく、転げ落ちた。
「イタタタ……」
「博士! 大丈夫ですか?」
「だ、だいじょぶ」
赤くなった額と頬と肘を撫でながらカクヨは答えた。
「それで、クヨムくん。事件というのは!?」
立ち上がり伸びでもするように精一杯体を伸ばし、腕を組んで訪ねた。
「はい、博士。これを見てください」
クヨムはタブレットを胸というか、腹というか、ともかくそのあたりに持ってカクヨに見せた。
「うわぁ…… 宇宙人ですかぁ。そのうち来るだろうとは思ってましたけど……」
「そ、そうなんですよ〜〜〜。それで帝国に入るか連邦に入るか、奴隷になるか、太陽系ごと破壊されるか選べって」
クヨムは涙声で言った。
「博士〜〜〜〜。この際、穏便にとか言いませんから。ほらぁ、いつもみたいに。ね?ね?」
「帝国? 連邦? そういうのカクヨは嫌いだなぁ」
「博士〜〜。ほらぁ…… いつもみたいにこう…… ね?」
「クヨム君」
カクヨは右手の人差し指でクヨムを下から指差した。
「こればっかりはそう簡単な問題じゃないんです!」
「そんなぁ。異能者だって、レーザーで」
カクヨは右足に体重を載せ、指差していた右手をグーにしてクヨムをバチンと殴った。
「あれは、この宇宙の存亡にかかっていたんです」
そこでカクヨは息を吸い、そしてはいた。
「だいたいですね、恒星間の何光年とか何十光年とかを超えてくる相手ですよ? 何かできると……」
「あ、博士、なにか思いついたでしょう!? それでいいから、ね? パっと! ね?」
「わかりました」
カクヨは壁沿いに置いてあるいつもの装置から、被せてあった布を剥ぎとりスイッチを入れると、いくつかあるボタンを29連打した。机に向かいデスクトップパソコンをカタカタと操作しはじめた。
「つまり、手を出さない方がいいとわかればいいわけですねぇ。出現ポイント、それと出発ポイントらしきゆらぎ…… あぁなるほどぉ」
カクヨは壁の機械の前に戻った。
「クヨム君、船団のほとんどがどこかに強制的に消えて、残った船も強制的に出発ポイントに戻されたとしたら、君ならどうしますか?」
「え? ま、まぁ様子見かな」
「そのとおり!」
カクヨはまたクヨムを右手をグーにしてバチンと殴った。
「博士〜〜。なんでなぐるんですかぁぁぁぁぁ!?」
「あ、ご、ごめんなさい」
カクヨは一度深呼吸をした。
カクヨは右手の人差し指でクヨムを下から指差した。
「博士〜〜。そ、そこつなげるんですか?」
「そのとおり! だから、そういうことをやっちゃいます。オムニバース観測それと転移装置さん、ちょっと大変だけど頑張ってください」
そう言い、カクヨは機械のいくつかのボタンを17連打した。
「さてさて、タブレットを」
「は、はい」
クヨムはタブレットを胸というか、腹というか、ともかくそのあたりに持ってカクヨに見せた。ニュースでは、宇宙船が次々と消失していると流していた。
「は、博士。ちょ、ちょっと疑問なんですけど」
「どうぞ?」
「今、消えていってる宇宙船って、他の物理法則が違う宇宙に行ってるんですか?」
「もちろん、そうですよ。出発ポイントに戻るのはいくつかで充分ですから」
「そ、それって、魔王の時みたいに一瞬で体とか分解するか、ゴルフボールくらいの大きさでグチャグチャになるとかってやつですか?」
「他になにかありますか? 物理法則が近いのは魔王のときに結構壊しちゃいましたし」
「博士〜〜。そういうのはぁぁぁぁ」
「なによ。いつもみたいにって言ったのはクヨム君でしょ?」
「博士〜〜。ぼくのせいにしないでくださいよ〜〜〜〜」
「ぼくのせいにしないでくださいよ〜〜じゃないですよ〜。そういう後ろ向きなとこがクヨムくんの悪いとこだよね〜」
そういうと、カクヨは小さな脚立からハンモックに乗って寝転んだ。
そしてカクヨは呟いた。
「あ〜ぁ、退屈。なにかおきないかな〜」
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