第11話拉致
「いやぁ…… これってまいったなぁ」
倉庫のようなところで、椅子に縛り付けられ、カクヨは思っていた。
「A国とB国がカクヨに仕返しかぁ……」
軍人というよりもテロリスト風の男がA国の言葉とB国の言葉で話していた。
「いたいけな子供になんていうことをするんだろ〜な〜」
とは思うものの、どうにもすることはできない。
カクヨはカリっと奥歯に仕込んであった硬質カプセルを噛み割った。
カクヨの研究室では壁の一部が開き、そこからカクヨが現れた。手が届くところにかけてあるパレオを手にとり、身に付ける。
そこから出ると、カクヨは小さな脚立からハンモックに乗って寝転んだ。
バン!と入り口が開いた。
「博士! 事件です!」
クヨムが部屋に駆け込んでくる。
「あ、あれ?」
「なに? クヨム君?」
「あ、え〜と…… 博士が拉致されたって……」
「まったくもうー!」
カクヨはハンモックから転げ落ちた。
「イタタタ……」
「博士! 大丈夫ですか?」
「だ、だいじょぶ」
赤くなった額と頬と肘を撫でながらカクヨは答えた。
「それで、クヨムくん。拉致というのは!?」
立ち上がり伸びでもするように精一杯体を伸ばし、腕を組んで訪ねた。
「はい、博士。何でもA国とB国の変な連中が博士を拉致したって」
「あのねぇ、クヨムくん。私が拉致されたなら、この部屋に来てなにをしようっていうのかなぁ?」
クヨムはやっとそれに気づいたようだった。
「そ、そうですよね。あれ? でも博士? あれ?」
「まぁ、クヨム君には言ってなかったからな〜。ちゃんと同じようになるように誘導してるし記憶も転写してるクローンがあるんだよ」
カクヨはクヨムに背を向け、髪を持ち上げてうなじを見せた。
「えーと、わたしはNo. 2のはずだけど、あってる?」
「あ、はい。そう書いてあります」
「オリジナルも数えると、これが3体め。たった、1年や2年でこの損耗だよぉ。いやになっちゃうなぁ」
「は、はぁ」
それは日頃の行ないも関係しているのではとは言えないクヨムだった。
「というわけで、前のボディーは死んでますから、気にしなくていいです。あちらさんが見つからないようにどうにかするでしょうから」
そういうと、カクヨは小さな脚立からハンモックに乗って寝転んだ。
そしてカクヨは呟いた。
「あ〜ぁ、退屈。なにかおきないかな〜」
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