第9話資源戦争

 退屈な事件をいくつも解決していたカクヨだった。

 そしてカクヨは今日もカクヨ研究所の一室でハンモックにゆられていた。

「あ〜ぁ、退屈。なにかおきないかな〜」

 またハンモックをゆらした。

「こういうときにはクヨム君が、入り口をバン!って」

 そう言って入り口を見た。

 バン!

「博士! 事件です!」

「キタキターーーーーーーーー!」

 カクヨはハンモックから降りるのももどかしく、転げ落ちた。

「イタタタ……」

「博士! 大丈夫ですか?」

「だ、だいじょぶ」

 赤くなった額と頬と肘を撫でながらカクヨは答えた。

「それで、クヨムくん。事件というのは!?」

 立ち上がり伸びでもするように精一杯体を伸ばし、腕を組んで訪ねた。

「はい、博士。こちらをご覧ください」

 クヨムはタブレットをカクヨに見せた。

「あらあら〜。資源をめぐってA国とB国の戦争ですか〜。やること、全然かわりませんねぇ」

「博士〜。今度はレーザーとか言わないでくださいよぉ」

「あ、それは大丈夫」

 そう言い切るカクヨをクヨムは不安げな目でみた。

「ほ、本当に大丈夫なの! 何年も前から、資源はどうにかしないとな〜って思ってやってたことがあるの!」

「博士〜。信じていいんでしょうね?」

「もう、本当に大丈夫だから。小惑星帯からたくさん地球に持ってきてるの。そろそろ着くころ」

「そうなんだ。今度はまともそうでよかった」

 クヨムは胸をなでおろした。

「えへ、えへ、えへ、えへ、えへへへへ」

 カクヨの頭脳が超超超高速で情報処理をしているの口癖、というかたぶん意識していないだろうが、そういうときに漏れる声だった。声だけでなく顔も緩んでいる。

「A国とB国かぁ。この間、巨大ロボットを壊してやったばっかりなのになぁ」

「は、博士〜〜〜〜〜。お、穏便に、穏便に」

「でもカクヨはA国とB国、好きじゃないしなぁ」

「お願いですよお、博士〜。穏便に〜〜〜〜」

「わかったわよぉ。穏便にしてあげる。A国とB国に落とす、じゃなくておろすのは少し乱暴にするだけにするわよお」

「博士〜、落とすっていいましたよね?」

 カクヨはハンモックの向こうの机でデスクトップパソコンに向かい、なにやら操作を始めた。

「言ったっけ?」

「言いましたよぉ」

「言いましたよぉじゃないですよ〜。そういう後ろ向きなとこがクヨムくんの悪いとこだよね〜」

 そういうと、カクヨは小さな脚立からハンモックに乗って寝転んだ。


 一ヶ月後、A国とB国は巨大隕石により壊滅的な被害を受けた。他の地域には、資源が山積みになった。

「博士〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

 クヨムは涙声でなにかを言おうとした。

 そしてカクヨは呟いた。

「あ〜ぁ、退屈。なにかおきないかな〜」

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