第8話異能者

 退屈な事件をいくつも解決していたカクヨだった。

 そしてカクヨは今日もカクヨ研究所の一室でハンモックにゆられていた。

「あ〜ぁ、退屈。なにかおきないかな〜」

 またハンモックをゆらした。

「こういうときにはクヨム君が、入り口をバン!って」

 そう言って入り口を見た。

 バン!

「博士! 事件です!」

「キタキターーーーーーーーー!」

 カクヨはハンモックから降りるのももどかしく、転げ落ちた。

「イタタタ……」

「博士! 大丈夫ですか?」

「だ、だいじょぶ」

 赤くなった額と頬と肘を撫でながらカクヨは答えた。

「それで、クヨムくん。事件というのは!?」

 立ち上がり伸びでもするように精一杯体を伸ばし、腕を組んで訪ねた。

「はい、博士。こちらをご覧ください」

 クヨムはタブレットをカクヨに見せた。

「あらあら〜。異能者ですか。魔王軍の影響ですかね〜」

「博士〜、こ、今度はレーザーでっていうわけにはいきませんよ」

「え? 別にいいんじゃないの?」

「ダメですよお。人間なんですから。戸籍とかいろいろちゃんと持ってますよ〜」

「えへ、えへ、えへ、えへ、えへへへへ」

 カクヨの頭脳が超超超高速で情報処理をしているの口癖、というかたぶん意識していないだろうが、そういうときに漏れる声だった。声だけでなく顔も緩んでいる。

「つまり、記録がなくなれば問題ないわけですね」

 そういうと戸棚の一つを開け、中から500mlのペットボトルを取り出した。

 また、スマホをポケットから取り出して何やら操作すると、ペットボトルの中身が蠢きはじめた。

「ナノボットさんとマイクロボットさんです」

「はぁ」

 カクヨがなにを考えているのかがわからず、クヨムは気のない返事をした。

 カクヨがペットボトルの封をあけると、中身はウゴウゴとはいだし、あるいは飛び回り始めた。

「おっと。え〜と、魔王のあとに異能者が現れたということはなんか関係あるんでしょうね」

 カクヨはいつもの装置を18連打した。

「あぁ〜〜〜。なるほどなるほど」

 カクヨは机の前に移った。

「えーと、じゃ、クラックしましょう。あははあはは。らっくしょ〜〜〜。これをボットさんに転送してっと」

 カタカタとまた何やらキーボドを叩いた。

「じゃぁ、ボットさん、その人たちに関するあらゆる記録を分解しちゃてください。ぜ〜んぶ。紙も電磁的記録も」

「博士〜、ほんとになにやろうとしているんですかぁ」

 クヨムがそういうが早いかボットたちはウゾウゾとブンブンと消えていった。

 カクヨはポケットからスマホを取り出した。

「えーと。異能があるってことは人間ではないので、熱、電磁場、重力場に変化があったら、そういう人は抹殺してください。レーザーのみなさん、がんばってね〜」

「博士〜、がんばってね〜じゃないですよ〜」

「じゃないですよ〜じゃないですよ〜。この宇宙の物理法則を書き換えるきっかけになるかもしれないの。そんなのを野放しにする方が大丈夫じゃないですよ〜」

「もっと穏便な方法だって……」

「穏便かぁ。そういう後ろ向きなとこがクヨムくんの悪いとこだよね〜」

 そういうと、カクヨは小さな脚立からハンモックに乗って寝転んだ。

 3日ほど、タブレットを眺めていた。異能者はいなくなった。

 そしてカクヨは呟いた。

「あ〜ぁ、退屈。なにかおきないかな〜」


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