第5話異世界

 退屈な事件をいくつも解決していたカクヨだった。

 そしてカクヨは今日もカクヨ研究所の一室でハンモックにゆられていた。

「あ〜ぁ、退屈。なにかおきないかな〜」

 またハンモックをゆらした。

「こういうときにはクヨム君が、入り口をバン!って」

 そう言って入り口を見た。

 バン!

「博士! 事件です!」

「キタキターーーーーーーーー!」

 カクヨはハンモックから降りるのももどかしく、転げ落ちた。

「イタタタ……」

「博士! 大丈夫ですか?」

「だ、だいじょぶ」

 赤くなった額と頬と肘を撫でながらカクヨは答えた。

「それで、クヨムくん。事件というのは!?」

 立ち上がり伸びでもするように精一杯体を伸ばし、腕を組んで訪ねた。

「はい、博士。こちらをご覧ください」

 クヨムはタブレットをカクヨに見せた。

「なになに〜。なぞの失踪事件ですかぁ。事故にあったり合わなかったり。そんなことが起こるんですね〜」

「博士〜、これはアレですよ。きっと異世界に行っちゃってるんですよ」

「異世界ですかぁ。解釈にもよりますけど、超ひも理論以後のもののマルチバースなんでしょうかね?」

「博士〜、なんでしょうかね?じゃないですよ。きっと異世界で苦労しているに違いないですし。ご家族とか、まぁ、どういう人かしりませんけど心配している人もたくさんいますよ」

「まったく、クヨム君は心配症ですね」

 カクヨは部屋の片隅の布がかけてあった装置から布を取った。

「マルチバースの探査は面白そうですからね〜。量子論の方にも頑張ってもらって、一気に10の500乗個の宇宙から物理定数がこちらに近そうなものを見つける装置は作ってあったんですよぉ」

「博士〜、いつのまにそんなものを」

「いえいえ、これも衛星に載せようと思ってただけですよぉ」

 カクヨは装置のスイッチをいくつかパチパチと操作した。

「あ、あんがい少ないものですね。さて、では失踪した人でそっちに行っている人をどうやって見つけるかですけどぉ」

 カクヨは装置からマイクを取って、またパチパチと装置を操作した。

「あ〜、テステス。はい、この声が聞こえている人〜〜〜〜〜。はい、おっけー」

 そう言い、カクヨは装置のボタンの一つを押した。

「博士〜、衛星に載せるためのものになんでマイクがあるんですか?」

「載せられなかったからつけただけですよぉ?」

 カクヨはクヨムに笑顔を向けた。

「これでマーキングできました。あとは、転送先ですね。大学の体育館だとおさまらないのか。じゃぁ、キャンパスの上空3mから落ちてきてもらうということで」

 カクヨはまたボタンをポチっと押した。

 その瞬間、大学のキャンパス内に何人ともわからない人が落ちてきた。

「博士〜、あっちでうまくやっていた人だっているんじゃないですかぁ? いいんですかねぇ?」

「いいんですかねぇじゃないわよ。そういう後ろ向きなとこがクヨムくんの悪いとこだよね〜」

 そういうと、カクヨは小さな脚立からハンモックに乗って寝転んだ。

 そしてカクヨは呟いた。

「あ〜ぁ、退屈。なにかおきないかな〜」

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