"美しい"モンデリーズたちはなぜ死んだのか
- ★★★ Excellent!!!
サンフランシスコ市長選をめぐる連続怪死事件を、記録調の文体で描いたミステリ作品。
最初の被害者となった有力候補者モンデリーズを信奉するものたちが、氏のキャッチフレーズ「美しい」を掲げて続々と選挙戦に出る様は、昨今の米大統領選挙や、仏シャルリー・エブド事件の「私はシャルリーだ」を彷彿とさせて政治的ウィットを感じる。
作品の筋としては、モンデリーズたちをめぐる謎の殺人事件こそが主要な謎である。
最初のモンデリーズの死も謎だが、その後の模倣者たちの死因も謎で、死因にまつわる都市伝説――公約をパクると殺される、一定の字数以下だと殺される、という話もどこから出てきたのかかなり不穏である。
人が死にすぎの選挙戦自体そもそも異常だが、どうもこの文章全体がYomoto Mox(作者と同名)の記事によるものであり、彼がモンデリーズと関係があることは作中でも仄めかされているが、そもそも登場人物のネーミングもきな臭く、謎解きはほどほどに、まずは薄ら寒い怪文書的な文体を楽しんでみていただければと思う。
(寒すぎる夜をより寒く!? 怖い話4選/文=村上裕一)