とある事件の異常性について

新たな出馬

San Francisco市長選は混迷を極めていた。

連続殺人事件が起きたことで全米の注目が集まり、最もホットな市長選が繰り広げられることになった。

現在支持率1位のフラワービレッジ候補に続くように、多くの候補者が出馬表明してきたのである。

特に目立っていた人物は二人いた。

良質で簡潔な公約で支持を集めた、ペニー・グーテナハト候補。

既存の手法にとらわれない自由奔放な公約をする、チェリーロゴス候補。

彼らは公約の一部に「美しい」という文章を取り入れ、モンデリーズ候補の死に対する哀悼を述べたことで有権者の支持を得た。

一方、ビーチサイド候補はモンデリーズに対して不満をつぶやいていた。

この対照的な態度が、有権者の心に響いたのだろう。

チェリーロゴス候補はビーチサイド候補に支持率で追随し、ペニー・グーテナハト候補に至ってはビーチサイド候補よりも支持率で上回ることとなった。

そして、さらに。

特筆すべき人物がもう一人いる。

Niagara Falls市長選に無所属で出馬していた、投資家リーマン・R・ドミネイト候補である。

リーマン・R・ドミネイト候補は、選挙戦中に殺害未遂の被害者になったことで有名な人物である。

今回の連続殺人事件との関係で一気にクローズアップされたことで、Niagara Falls市長選では高い支持率を得ていた。

そのリーマン・R・ドミネイト候補が、鞍替えしてSan Francisco市長選に出馬をすることを表明したのである。

わざわざモンデリーズ候補にあやかって「モンテローザ」と改名し、公約に「美しい」の文字を織り交ぜながら。

出馬表明の翌日、リーマン・R・ドミネイト候補改めモンテローザ候補はSan Francisco市長選で支持率4位を獲得した。

5位まで転落したビーチサイド候補を押しのける形で、である。

また、事件が起ころうとしていた。