なぜ屍体は二度殺されたか

モンデリーズの意思を継いでSan Francisco市長選に出馬した人物の中に、モンデリーズJr.候補という人物がいた。

モンデリーズJr.候補は、モンデリーズのただの猿真似をしていると命が危ないと考え、公約を9999文字にして出馬したのである。


9999文字で「美しい」と書かれるその公約は、今までのものとは質的に違った視覚効果を有権者に与えた。


この一風変わった公約が有権者の心を大きく打ち、モンデリーズJr.は初登場でSan Francisco市長選7位の高支持率を得たのである。



この日、San Franciscoの市長選は大きな転換点を迎えていた。


モンデリーズの死の影響でサイドビーチ候補の悪評が広まり、トップで独走していた支持率が急降下。

そして新星のように現れた無所属の新人、フラワービレッジ候補によって支持率で抜かされたのだった。


サイドビーチ候補が圧倒的な支持率だったのも一時のこと。

翌日にはモンデリーズJr.にすら支持率で抜かされそうになっていたのである。



そして、また事件は起こる。


まず既に殺されていたはずの5人の『モンデリーズ』たちが、二度『殺された』。


屍体が『殺された』という奇妙な言葉の意味はこうである。

すでに屍体となった体に、剽窃を意味する「plagiarism」という文字が何者かによってナイフで刻み込まれたのだった。

もしも屍体がまだ生きてとしたら、そのナイフの傷が致命傷になって『殺されていた』というわけである。


しかし、屍体をもう一度殺すというこの奇妙な事件には続きがある。


時を同じくして、モンデリーズJr.が新たな6体目の屍体となって発見されたのだ。

「plagiarism」という文字がナイフによって刻み込まれて。

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