7.入寮《ファーストエイド》
癒せ、治せ、我が憂い。
彼の者は我の愛しき子。
快癒ならずも、力の限り。
”ファーストエイド”
- - - - -
「キッヒッヒ。もう行って良いよ、用事はそれだけだから。」
うん?
用事がその報告だけってどういうことだろ?
呼び出さなくても、使い魔とか使えるんなら、それで連絡付ければ済むんじゃないかなー?
「キッヒ。アグリアちゃんも他の生徒や教師に後ろ指刺されたくないだろう?」
うむむ。
どういうことだろう、余計わかんないぞ?
「全く、しょうがないね。『私が君の入学を認めた。』と言う事実が必要なだけなんだよ。ここまで言えば分かる?」
「えっと、つまり鶴の一声ってことで?」
「キッヒ。そうそう。私が正式に入学を認めれば、五月蠅く言ってくる奴は少なくとも公では居なくなるってことさ。それくらいの権力は有るからねぇ。」
「成る程、お心遣い感謝します。」
「キッヒ。敬語が似合わない子だねぇ。でも、心遣いじゃないよ。此れは貸しだからね。」
貸し?
何か不穏な気配だよ…。
「キッヒッヒ!そう、身構えなくてもいいさ。ちょっとカヴンに入って貰いたいだけだからね。」
カヴン?
聞いたことは有るけど…。
確か、魔女の団体の事だったっけなー。
学長のカヴンかー、ろくな奴が居なさそう。
「キッヒ。失礼なことを考えてるね。まあ認めるよ、確かに変な奴しかいないねぇ。一番の良識の持ち主はきっと私だろうね。」
「あー、そう言うの良いんでどんなのか教えてもらえます?」
「キッヒッヒ。勘違いしてないかい?アグリアちゃんに拒否権は無いよ?どんなカヴンかは、入ってのお楽しみってことで。」
全然楽しめない。
拒否権無しって、断ったら即退学の花火行って事かな?
ああ、私運が悪すぎる。
そして学長は人でなしすぎるよー。
「キッヒ。まあ、下調べは魔女の基本だからねぇ。”マリーズカヴン”と呼ばれている事だけは教えてあげるよ。数日後、集会を開くそうだから、そうなったら私の使い魔が伝えに行くよ。覚悟するんだねぇ。キッヒッヒ!!」
黒い黒い!
魔女ってこんな感じの人ばっかりなのかな?
この学校でやっていけるかなー…。
「さあ、そろそろ帰ってやりなさい。外にレイスアランちゃんとヴァイスカガちゃんが居るよ。君たちは同じ寮にしておいてあげたから、案内してもらって直接寮に行きなさい。キッヒッヒ。せいぜい楽しむと良いよ。」
うーん、悪い人なのか、優しい人なのか分からないな。
いや、悪い人だよね。
流石にカヴンに生死を握った状態で勧誘(強制)するとか十分横暴だよ。
「それじゃあ、失礼しました。」
「キッヒ。またね~。」
出来ればもうお会いしたくない。
と思ってるのもバレてるんだろうなと思いながら扉から出る。
学長の言っていた通りレイアちゃんとヴィスカちゃんが待ってくれていた。
「生きてたのね。」
「う、うちは…。信じとったよ!」
「チクショウメェェェェェェ!」
- - - - -
「うちらの寮はここやね!寮母さんは居らんらしいけん、大概の事は魔法でどうにかせんとあかんらしいよ?」
「まあ、魔女になるなら当然ね。寮生の顔合わせは夜に行うらしいわ。」
と言われて来ているわけですが…。
「これ本当に寮なの?」
何と言うかな~。
塔?そうだ塔だよこれ。
無計画な増築を上方向にしまくった結果こうなりましたと言わんばかりのアンバランスさ。
城みたいな学院の広大な敷地にある草原の一角が寮の場所なんだけど、どれもそれぞれ個性的な増築がなされてる。
特に私たちの寮は和室っぽいのやら、おでんのシルエットみたいなのとか、ゴテゴテと色んなメカっぽいのがくっ付いて居たりと好き放題である。
「魔法による改築は基本的に自由だから、いつの間にかこんな感じになっていたらしいわ。」
「うちらは、此処のX=3Y=26Z=5に有るらしいんよ。で、どうゆうことやろ?」
「えっと、単位はメートルで良いのかな?じゃあ空間座標?基準は入口かなー。で、セオリー通りならXのせいの方向が北で…。あれかな?」
「へぇ。アグリアって意外と頭いいのかしら?」
意外は余計だよー。
で、その外見が…。
埴輪?
「その、何と言うか凄くハニワなんだけど。」
「一部の部族で儀式を行うときに使うと聞いたことが有るわね。」
「そうなん?なんか愛らしい顔やね。全然似てへんのに、どことなくサボテンを思い出すと言うか。」
ああ、それはf・ファンタジーです。
あんまり言うとアウトなので気にしないでヴィスカちゃん。
「まあ、いいや行こうか。」
「せやね。」
さあ、アグリアとしての初めての帰る場所はどんなところだろうか!
…は良いんだけど。
「これ、どうやって登るの?」
通路や階段なんて都合の良いものは有りませんでした。
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