4.杖《ギャザー》

 流れの先は我にあり。

 意思無き者は逆らわず。

 集え。


”ギャザー”


- - - - -


「レイアちゃん。何処なのさ此処?私はアナウンス通りにフクロウ通りに行くものとばかり思ってたんだけど?」

「良い魔道具屋が有るのよ。フクロウ通りでは無くてね。」

「よー、知っとるね。レイアちゃん此処に来たことあるん?」

「初めてよ。噂で聞いただけ。」


 何だそれー。

 これ本当にたどり着けるの?

 何だかどんどん暗い路地に入っていってる気がするんだけど…。


「この辺りは、モズ通りと言うところで、かなり治安が悪いみたいだから荷物を盗まれたりしないように気を付けなさい。」


 ひえー!

 聞いてませんよ、レイアさん!

 取りあえず、背負ってたバッグをお腹側に持ってきて、出してある本も今は中に閉まっておこうっと。


「着いたわ。ここが魔術道具の隠れた名店と噂される『黒の髑髏』よ。」

「名前が不吉やわぁー。ほんまにコレなん?」

「ええ、間違いないわ。扉にクモの巣と髑髏のマーク。一度来てみたかったのよね。」


 そっちが本音ですね。

 まあ、レイヤちゃんが行きたいって思うところだし、きっとすごい名店なんだろう。

 私は全く分からないんだけどなー。


「ごめんください。」


 とか思ってるうちにレイヤちゃんが入ってしまったではないか。


「あ、待って。お邪魔します。」

「なんや、えらい暗いところやね。灯りが欲しいわぁ。」


 それは、光合成的な意味で?

 と思ったけど、口には出さないでおこっと。

 それにしても、本当に暗い。

 本や、商品棚がところ狭しと並んでいて、店自体は広いのに狭く感じてしまう。

 何て言うか、ドン・キ○ーテって感じだよ。


「はぁぁぁ♥すごい品数!聞いていたよりも何倍も素敵だわ‼」

「ふえ?!」


 なんかレイアちゃんが暴走し始めたんだけど!!

 商品棚を回っては、手にとって矯めつ眇ついじり倒してる。

 レイアちゃんってこんな一面があったんだ。


「ちょっと、二人とも何してるの!あなたたちの発動具を買いに来たのよ、此方に来て選びなさいな。」

「「は、はい‼」」


 うむ、逆らっちゃダメだ。


「それで、結局発動具ってなんなん?」

「基本的には、魔法を発動するに当たって、魔力の制御を簡易化させ、安定した発動を促す道具よ。」


 ああ、成る程。

 ミリオンスペルにも、装備品って形で有ったなー。

 それを装備してると、魔法の発動や詠唱を補助してくれるアイテム。


「ごめん、ようわからんかった。結局どう言うことなん?」

「…本当にこの子大丈夫なのかしら?簡単に言うと、魔法を使うときに使ってる道具のことよ。」

「そうなんや、でもうちは使ったことないよ?」


 ああ、自分も結局装備しなかったなー。

 ミリオンスペルには魔法の発動方法が大きく分けて4つ有ったんだ。

 一つは、スペルキャスト。

 名前にもなってるだけあって一番多く、呪文を言えば発動する、所謂詠唱呪文だね。

 一つは、サークルキャスト。

 事前に魔方陣をかいておいて、スタートの魔法を使うか条件を満たしたときに発動する魔法。

 一つは、フルキャスト。

 所謂永続バフ。入手と同時に常時発動状態になる魔法。また、特定の条件で自動的に発動するむのもここに含まれてる。

 そして、マテリアルキャスト。

 特定のアイテム、動物等を使ったり、生け贄にしたりして発動する魔法。

 発動具が効果を発揮するのは上の二つだけ。

 したの二つは効果がない。

 特に、マテリアルキャストの場合はアイテムや、モブを閉じ込めた瓶を持つ必要があったため、発動具を持っていたら、一々持ち変えないといけないので、全部まんべんなく集めていた私からすると、発動具って邪魔になるんだよねー。


「ドライアドは植物を操る魔法が得意で、ちょっと操るだけなら発動具は必要ないわ。でも、今は魔法学院にいるのよ。今後必要になるわ。」

「はーい。」


 私も要るのかなー?

 正直必要性が感じられない。

 というか、まだ魔法自体一度も試したことないのに、発動具って取らぬ狸のなんとやらって感じだしね。


 もしこれで実は魔法なんてつかえませーん。ってなったら。

 …よし、夜になったら試してみよう。


「あらぁー!レイスアランさん。こんなところで会うなんて奇遇ね!」

「う、この声は」


 後ろのドアが開いて、まだ入り口に居た私たちのすぐ横に黒と赤の露出が高めの衣装を着た女の子がたっていた。

 レイアちゃんがなんか居ずらそうな顔つきをしてるけど、知り合いなのかな?


「ごきげんよう。アビランテさん。」

「もう、昔みたいにアランって呼んでくださいな♥」

「それじゃあ男の名前だし、私と被るし、昔も呼んでないでしょうが‼

「じゃあ、あたしがレイスって呼べば万事解決ねー。」

「いや、違うから‼」


 あー、うん。

 苦手な理由は何となくわかった。


「誰なん、きみ?」

「あらぁ。まあまあまあまあ、可愛らしいドライアドちゃんね!私はアビランテ・フィンキャスタ・アツェスターニ、そちらのお嬢さんも宜しくね?」

「え、うん。アグリアです。」

「うちは、ヴァイスカガ・プルーヌス・ム…ふぎゅ!!」


 あ、ヴィスカが抱きつかれた。


「やぁぁぁぁん♥可愛すぎるわー!あたしの妹になってー!!」


 うむ。

 その気持ちは分かるよ。

 でもね、うちのヴィスカちゃんは渡さないよ‼


「なんや、アビランテさん、ええ匂いするなぁ。」

「ヴィスカ、気を付けなさい。アビランテはサキュバスで、その匂いは魅了の効果を持ってるわ。」

「フワッ!?あわぁぁ!離さんねー!」


お、解放された。


「もう、乙女の秘密をばらさないでくださいな。それに、男の人じゃなければあまり効果がないじゃない。」

「そうね、女なら『このまま抱かれたまま死んでも良い。』って思う程度ね。」

「アウトじゃー。」

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