第3話 助け
「はあ…無理だ…体中バキバキいってるよ…」
起き上がろうと奮闘するが、体はいうことを聞かず。しばらく経ったのち、二人の様子を伺ってみれば、何時のまにやら。金髪の男は、倒れ込むようにして地面に伏せっていた。勝敗は決したらしい。金髪の男の体の上には、青い石が浮かび上がっている。所有者の命の危険を感じた魔法証が、放出されたのだ。
「うわ……」
(いつの間に決着ついたんだよ!赤髪の方、強すぎるだろ!あの金髪、死なないよな?)
金髪の男の脇腹からは、大量の血が流れている。大剣の餌食になったのだろう。このままでは、男は死んでしまう。平時ならば助けを呼ぶなりしていたかもしれないが、四季もそれどころではない。動けない金髪の男に止めを指すように、雨霧界が大剣を振り上げたそのとき。
「なんだお前は……?」
金属と金属がぶつかり合うような、凄まじい音。四季の視線の先には、大剣を大鎌で受け止める、一人の少女の姿があった。
「それ以上はやめておきなさい。あなた、この人を殺すつもり?」
金髪の男を庇うのは、セーラー服姿の、長く艶やかな黒髪を持つ少女。前髪は眉の上で、サイドの髪も頬の辺りでまっすぐに切り揃えられている。黄金の大きな瞳が印象的な、恐ろしいまでの美少女だ。彼女も恐らく魔導師であろう。一般人は、魔導師に関わろうとはしない。まるで別世界の出来事かのように、傍観するのみだ。
「俺の邪魔をするならな」
「いくら魔導師同士でも、褒められたことじゃないわね」
「お前も殺されたいのか」
「できるものならどうぞ」
(うわあ、あの女の子、勇気あるなあー。あんな男に睨まれたら、俺なら気絶する。一秒で!)
言い放つやいなや、少女は自分よりも大きな大鎌に炎を纏わせた。それを、雨霧に向かって振りかぶる。雨霧の方は、大剣を氷でコーティングし、応戦していた。
素早い攻防は、目で追うのもやっとだ。少女は、辺り一面を大きな炎で覆うと、四季の元に向かってきた。
「痛そうね」
「いっ……」
「じっとして」
大鎌をおろし、四季の腹部を軽く押した少女は、小さく何かを唱え始めた。だんだんと痛みが引いていき、怪我が治っていく。治癒魔法というものがあることは聞き及んでいたが、それを体感するのは初めてだった。治癒魔法は、ある程度の階級に達していなければ扱うことは出来ないと言われている。
「どう?」
「あ、ありがとう……すげえ、痛くなくなった!」
「早く逃げなさい。あの男、かなり強いわ。戦いながらじゃ、あなたのことは庇えないわよ」
地面に置いていた大鎌を拾うと、少女は再び戦いに戻ってしまった。逃げろと言っていたが、それならば彼女はどうするのだろうか。怪我を治してくれた恩人を残して、去れというのか。
「おい、あんた、大丈夫か」
といっても、四季に出来ることなどないに等しい。せめて、と金髪の男の元に戻ると、肩を揺さぶって声をかけた。しかし、男から返事は返ってこない。完全に意識をなくしてしまったらしかった。
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