5 ミナ
「おー。休みなんだ」
「うん。まだ雨降っとる?」
「やみそう。でも今日は外で滑れんね!」
十九歳のレイタが来て話していたら二十五歳のシュウくんが部屋に入って来た。
411ビデオマガジンの最後はスケーティングで怪我をするシーンばかりが映る。流血や痛がるプロスケーターを見ていると滑る気が失せた。
ビデオが終わる頃ナツの携帯が鳴った。
「今から女の子が食べ物を買って来るから、ミナはシュウくんの友達ってことにしてよ」
「ナツの彼女なの?」
「違うよ、近所の同級生。俺のことが好きだで、すぐ怒るんだよね」
振られたレイタが頷いた。
「みんな飯食っとらんしさ」
「分かったよ」
「ミナごめんね」
シュウくんの友達かぁ。
近所の女の子はコンビニで二つの袋にいっぱいの食べ物や飲み物を買ってきた。
部屋に入ってくるとナツの横の狭いスペースに入り込んで床に座った。
私と目が合うと、女の子はナツに振り向いて笑いながら、目は笑ってないけれ
ど「誰?」と訊いた。
「シュウくんと一緒に来たんだよ」
ナツが答えると、女の子はもう一度、目を見開いて私の顔を見てすぐにナツに問い質した。
「は? シュウくんと⁉︎ ほんとに? 何歳なの?」
同級生くらいかと思った、と言って笑いかける女の子に
「二十二だよ」 って言うと、またナツの方を向いて
「二十二歳なの……? じゃあシュウくんと友達でもおかしくないね」
と納得していた。
ビデオが終わってナツはCDをかけて、二つのコンビニ袋の食べ物と飲み物と雑誌を部屋の床に広げた。
「CD返す。車に入ってるから、ついてきて」
食べ終わってライフガードを飲んでいるレイタに頼んだ。
「シュウくんも来て」
外に出ると雨はほとんど止んでいて、数台とまっている車を少しだけ濡らしていた。
ナツの部屋の下に止めた車の前で、煙草を出す。ナツは煙草を吸わないし、部屋の中では誰も吸わないから。
「ありがと」
レイタに借りていたCDを返す。
マンションの駐車場で三人で煙草を吸っていると、上から声が聞こえた。見上げるとナツが通路に出ていて、手を振って笑いかけていた。
「このまま行くわ。ボード取ってきて」
いちどドアに消えたナツは私のスケボーを持って出てくると、二階の通路から手を伸ばしてぶら下げた。
フェンスによじ登ったレイタが、ギリギリでスケボーを受け取った。
「またね!」
ミニのトランクにボードを載せて、運転席に座る。フロントガラスの細かい水滴が流れるのを見ながら、車を車道に出す。
ビルと高速道路の隙間には白い雲が続いていて、車道に雨を落としていた。
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