三、灰吹く炎

 僕はそこから動けなかった。じりじりと謁見の間に向かって足を伸ばして行く焼け焦げの跡から目を反らさず、震える手で杖を真っすぐに構えた。

「……ロゼ・アクアレーナ。焰の蜘蛛は糸の家に眠れ」

 僕の杖の蕾の先端から、水が糸のようにちゅるちゅると螺旋を描いて噴出される。それらは炎を纏った黒の染みに絡み付き、その足先に蜘蛛の巣のような網を張った。壁と床の隙間を駆けるように進んでいた火の足は、網の中でぐるぐると戸惑うように回り、湯気を出して消えていく。

 僕はそのまま、ゆっくりと体を回して、腕を使って杖の先端をぐるぐると回転させた。水の糸を黒い染みにバネで包むように絡み付けていく――少しずつ、来た道を戻りながら。壁の両端に気を配らなければいけないから、集中力がいる。僕のこめかみから、たらたらと汗が零れて床に落ちた。背中の向こうから誰かの足音が近づいていたけれど、僕は名前を呼ばれるまでそれを認識できていなかった。

「アズ様!」

 聞き慣れたウバロの声に、集中力がふっと途切れた。僕は息を細く吐きながら、もう一度水の糸の終点にさらさらと透明な蜘蛛の巣を編んだ。振り返ると、ウバロは真っ青な顔で駆け寄ってきた。僕の目の前で止まっても、しばらく苦しそうに胸を押さえて蹲まっていた。僕はウバロの背中を撫でながら、彼が話せるようになるのを待った。焦げ茶色の髪は艶をなくして、白いほこりを被っていた。そっと指で撫でて見ると、それは白く細かい灰の粉だった。

「アズ様……火事です……っ、恐らくは、魔法、の」

「うん。そうだろうと思った。まるで意志を持つように火の足が揺れているからね。それで、誰がそんな火をつけたの。事故か故意か、それが問題だと思うけど」

「モルダ室長は、〈メメントモリ〉の仕業だろうと……」

「本当に?」

 僕の声に、ウバロは視線を上げた。ウバロの青みがかった翡翠のような目は、戸惑うように揺れていた。

「どうして、……アズ様は、そんなこと」

 ウバロはごくりと喉を鳴らした。僕は歪む口を必死で釣り上げ、灰の香りが沁みる目をそっと細めた。

「……無闇に罪人を増やすのは、好きじゃないから」

 ウバロは僕を見上げたまま、微かに口を開いて押し黙っていた。ややあって、俯き、か細い声で呟いた。

「でも……アズ様、事故だろうと、故意であろうと、それが【王宮に火事を起こした】と言う事実に変わりはありません……問われる罪は同じです。罪の数が増えるか増えないか、ただそれだけなんです……」

「そうだね」

 僕は哀しいなと思いながら、笑った。

「アズ様……」

 擦れた声で、泣きそうな顔で僕を見つめるウバロの手を引いて、僕は彼を立ち上がらせた。

「それで、火の元はどこ?」

「図書室です。室長は……恐らく文化的財産を狙った犯行ではないかと……仰っていました」

「そう」

 僕は僅かに動揺しながら辺りを見渡した。炎がこの回廊に押し広がるのはどうにか食い止めた。けれど早く火の元へ行かなければ、燃え上がる炎の核を潰さなければ、城の半分は燃え落ちてしまうことになる。

「それじゃ、大事な歴史書や文献は燃えてしまうね……。陛下はもう避難された?」

「はい、先刻外へお出になりました。……アズ様の姿が見当たらなかったので、ぼくが……ぼくだけが、もう一度中に入ったんです」

「大きな怪我がなくてよかった」

 僕は笑って、ウバロの髪を撫でた。ウバロは俯いていた。長い前髪が、睫毛に触れて、瞬きの度に僅かに揺れていた。

「アズ様……連絡を聞いていなかったんですか? どうして……一体どこにいらっしゃったんですか」

「地下牢にね」

 ウバロははっと顔を上げて、顔を歪めた。

「死ぬところですよ! 炎を甘く見ないでください! そのせいで、ぼくの……ぼくの親だって……」

 僕は目をゆるゆると見開いた。ウバロが孤児だと言うことは知っていたけれど、詳しく聞いたわけじゃなかった。僕は俯くウバロの頭を撫でながら、ふと、燃えて画用紙に戻ったんだろうか、だなんて、変なことを考えていた。……僕は、どうしてしまったんだろう。どうしてそんな、荒唐無稽なことを今思ってしまったんだろう……?

「それで、ウバロ」

「はい」

 ウバロは拗ねたように低い声で、顔もあげずに言った。

「陛下は何を優先するようにって?」

 ウバロはまたわずかに顔を上げて、泣きそうな顔で眉根を寄せ、視線を泳がせた。

「庭を……」

 ウバロは肩で息をしていた。声はか細かった。

「図書は諦めて、庭を、守れとのことです。使用人は……全て避難させました。魔道士達は現在、全て火の消去と庭の防壁魔法に当たっていますが、火の方は術式の解除が難しく、現在なす術がないと言うことです。勲一等魔道士は全て庭で花を守っています。アズ様以外の勲二等魔道士も少しずつ合流していますが、全員庭の防護に当たっています。火の消去に当たっていたのは、ぼく達下等の官僚でしたが、ぼく達にはもうなす術がなく、今から全員で避難を始めるつもりです。モルダ室長はアズ様も見つけ次第庭へ寄越せと仰ったのですが、でも……でも……」

 ウバロは唇を引き結んだ。ぼたぼたと雫が落ちて、床のタイルを撫でた。僕は目を伏せてそれを見つめながら、銀色の杖を手が白くなるほどに握りしめていたウバロの指を、そっとほどいてやった。

「うん、大丈夫、言ってごらん」

「アズ様、は、だれにも言いませんか、ぼく、ぼく、すごく、不遜なことを、」

「大丈夫だよ。君が不遜なら僕はもっと罪深い。さっきも、図書室の上階に勝手に入ろうとして、スフェンに鼻で嗤われたよ」

 ウバロは目だけを上げた。目がまるで幼い子供のように大きく見えた。ウバロは鼻をぐすっと鳴らして、唇を僅かに開けたまま口で静かに息をしていた。

「あの……まだ図書室は、全部燃えてはいないんです」

「うん」

「ぼく……ぼくが、このお城で……役人として雇ってもらえることになった論文があるんです……あそこにしか、保管されていないんです。ぼくの父も、母も……がんばったねって、褒めてくれて……燃えちゃったら、ぼく……でも、だれにも言えなくて、そんなの、諦めろって言われそうで……」

「ウバロは、あの図書室を守る価値があると思う?」

 僕は不意に、そんなことを呟いていた。

「……え?」

 戸惑うように、ウバロは瞳を揺らした。

「あの図書室に納められた知識に、守る価値はあるのかな」

「アズ様……」

 ウバロは唇を閉じた。僕は笑った。

「ごめん、変なことを聞いたね」

「アズ様」

 ウバロは縋るように僕の袖を引いた。

「もしも……もしもあの知識の宝庫が焼け落ちれば、あれらの知識を得ている魔道士は国家財産となるでしょう。そうすれば、ぼく達には……今よりももっと自由がありません。いや、ぼくはいいんです。すみません、子供みたいなことを言いました」

 ウバロはぐすっともう一度鼻を鳴らして、袖で目を擦った。

 ――十三歳なんて、まだ子供だよ。

 僕はふと、そんなことを考えた。自分だって年は変わらないはずなのに。

「ぼくはいいんです、でも、そうじゃなくて、たぶんアズ様が……アズ様、だって、ぼくよりずっと、自由がないじゃないですか」

 ウバロはぐすっ、ぐすっ、と鼻を鳴らしながら僕の杖を見た。袖で擦りすぎて、目の周りが真っ赤になっていた。

 僕は思わず目を見開いて、そしてなんだか可笑しくて笑ってしまった。そういえば、ニーナの車椅子はウバロを介して注文させたのだった。

 僕はニーナのことをあれ以外で一言も誰かに話したことはなかった。だけど、覚えていてもらえることは、なんだかとても嬉しいなと思った。

「君は優しいね」

 僕が目を細めると、ウバロは泣きそうな顔で頭を振った。

「そうじゃないです。ぼくはただ……やっぱりあそこに置いてるぼくの論文が……燃えてしまうのがちょっと惜しいだけなんです。そりゃ、もちろんまた書けばいいことなんだけど」

 ウバロはそう言って、頬に垂れた涙をまた袖で拭いた。僕は笑って頷いた。

「そうだね、僕も、また論文なんて書き直すのは骨が折れるなあ。ちょっと遠慮したいよね。いいよ、僕は火を止められるか頑張ってみる。これは僕が勝手にやることだ。だから、もし何かあっても僕の全責任だよ」

「いえ」

 ウバロは目を擦った。

「元々あなたに言い出したのはぼくです。だからぼくだって、王命に歯向かっ――」

「だめだよ」

 思いの外、強い口調で言葉が零れた。ウバロが口をぎゅっと歪めたけれど、僕は視線を逸らした。

「それで、罪人は? 罪人は地下牢に繋いだままだろう。火の始末を放棄したと言うことは、陛下はこの城が燃え尽きても構わないというご判断を下されたと言うことになるけど、罪人の避難はちゃんと予定に入っている? あそこは音魔法耐性の術を施しているせいで、罪人達は火事の知らせを知らないだろう? 僕達が直接誘導しないと」

 僕は、顔をそらして俯いたまま、前髪の隙間からそっとウバロの表情を伺った。

 瞬間、ウバロは目を見開いて、ぶるりと小さく震えたのだった。僕の言葉に怯えるように、肩が小刻みに震えている。それなのに、ウバロは僕から目を逸らさなかった。つくづく、世渡りの下手な部下だなと思う。

「そう」

 僕は短く呟いて、小さく息を吐いた。これ以上をこの素直な人間から口に出させるわけにはいかない。

「ウバロ。君は避難して、室長の指示を仰いで。僕には伝えたと、それだけでいい」

 ウバロは黙っていた。何かを言おうとして、言えないでいる。彼の喉からひゅうひゅうと隙間風が零れる。僕はわざと苛立ったような声で言った。

「聞いていたの? ぼうっとしていないで。さっさとして!」

「は、はい」

 ウバロは唇をぎゅっと噛みしめ、くるりと僕に背を向けた。そうして震える足を踏み出して、あとはがむしゃらに回廊を駆けていく。ふと、ここに室長がいたらこんな時でも「廊下は走るな!」と怒鳴るのだろうか、それとも見て見ないふりをするんだろうか、だなんて、僕はどうでもいいことを考えた。

 ウバロの後ろ姿が見えなくなってから、僕はふっと笑みを消した。耳にはパチパチと火花の弾ける音が聞こえていた。体中ががくがくと震えて、僕は目を見開いたまま、杖を床につき体を支えて、僕の顔が映る緑のタイルを見ていた。

 自分でもわからない想いが、体の内部でどろどろになって渦巻いている。目の前が真っ赤に染まっていく。それがじわじわと広がっていく火の手のせいなのか、体中を苛む微熱のせいなのか、もう何もわからない。僕は杖を軸にして体を回転させ、元来た道へゆっくりと足を踏み出した。やがて歩調は早くなって、我に返る頃には僕はがむしゃらに駆けていた。髪の先を透明な雫が伝って弾けた。僕は汗で濡れた髪を一束指で抓んで、目を伏せた。地下牢へ続く石の扉は、固く閉ざされ黙している。

 僕は息を吐いて、吸って、吐いて、扉を撫でるようにそっと手で触れた。そのまま冷たい扉に額を当てて、目を伏せた。ずりずりと、額が下がるのに合わせて前髪が石と擦れ、音を立てた。そうして俯いていたら、またふつふつと紅い気持ちが胸から沸き上がって、指の先までじんと痛んだ。僕は歯を食いしばって顔を上げ、思い切りノブを引いた。開かない。

 開かない。開かなかった。誰かが、この扉に封印魔法まで施している。

「はは……ははは……」

 もうだめだ。頭が怒りで沸きそうだ。かけられていた封印魔法は少しだけ複雑で、魔法を使えない罪人達には到底解除できるような物でもなかった。更にそれを覆うように、僅かな防壁魔法まで施されていた。罪人にはここから出る権利もないというのか。誰がこんな扉、わざわざ気にかけて開けにくると言うのか。用意周到だな。こんな魔法、僕が破れないとでも思ったの。しかも、防壁魔法だなんて――こんな初歩魔法、勲四等級の魔法使いがどうすることもできないような魔法の炎に勝てるわけがない。それでもせめてもの情けをかけたつもりか?

「はは……誰がかけたんだよ。杜撰だな。ほんと、笑っちゃう」

 目の前が真っ赤に染まって何も見えない。僕は魔方陣の真ん中に杖の先端を突き刺した。陣の文字が青と緑の文字になって浮かび上がった。青の封印魔法の上からかけられた緑の魔方陣の文字には見覚えがあった。ウバロは必ず、「M」の文字が山三つになる。それから、「C」が蜷局を巻く。僕は扉に額を押し当て、もう一度笑った。目の前の赤が少しずつ溶けて、景色が戻っていく。

「ウバロ……ごめん、ありがとう」

 扉をそっと撫でて、息を吐いた。

「……助けなきゃ」

 僕は呟いて、陣に突き刺した杖を引き抜いた。

「カルペ、ディエム《花を摘み取れ》。汝ら、我に帰れ」

 杖の先端が、青と緑の糸を纏う。それを糸玉にするみたいに、僕は半ば雑にぐるぐると杖の先端を回して、魔方陣を破壊した。ノブに手をかけて、引く。今度は重い石の扉は擦れるような音を立てて開いた。僕はそのまま階段を駆け下りた。

 ユークを含め、収容された罪人達が僕の足音に気づいて、驚いたように顔をあげた。僕にはのんびりと説明できるだけの心の余裕はなかった。杖を真っすぐに構えて、目を閉じる。

「ロゼ・アズライト」

 花魔法を表す「ロゼ」の言葉のあとに、僕の真名をささやかな声で唱える。

 真名は、魔術を発動する際、一種の鎖となる言葉だ。〈マグ・メル〉の時間は二十四色の色名を冠している。住人達の名前は、生まれた時間の色を持つ宝石から一部を取ってつけられるのだ。真名はその宝石そのものの名前だった。僕の真名になった宝石は藍銅鉱アズライト、そこから名前を取って、【アズ】だ。真名を術式に組み込めば、かけた魔法は術者本人か、術者の真名を知っている者でなければ解除できない。

「フラマレーナ。焰の蛇よ、骸の跡を焼き焦がせ」

「ちょっと……」

 戸惑う様なユークの声が聞こえた。僕の杖の蕾から炎の糸玉が吹きだして、罪人達それぞれの牢の柵に絡みつく。

「何してるの、これ……」

 ユークが呟くのが聴こえたけれど、無視した。罪人たちがざわめいている。説明しているような余裕はないけれど。同じ花魔法使いなら、きっとユークには僕が何をしようとしているかは分かると信じた。

 ……本当は花魔法使いなら、炎の魔法は使っちゃいけない。炎魔法は花魔法の一部としては認められていないからだ。――けれど、花魔法として使えないわけじゃない。それを知っているのは僕達勲二等以上の魔導士だけだ。

 花魔法としての炎魔法。炎の蛇は、術を解除した途端燃え上がり、柵を溶かし壊すだろう。どうしても、それを花魔法として詠唱する必要があった。僕は紅い蛇達が全ての柵に絡み付いたのを見届けて、別の魔法の詠唱に移った。

「ロゼ・アズライト・アクアレーナ。水の帳よ、命の盾となれ」

 青い魔方陣が、僕を包み込む卵の殻となって浮かび上がる。そこから無数の水の糸が吹きだした。糸は重力を無視して縦横無尽に網目を作る。あっという間に水の壁が出来上がって、罪人たちの牢を水で覆い尽くした。

「な、お、俺達を殺す気か……!」

 誰かが叫んだ。僕には答える余裕はなかった。額から汗が滲んで零れていく。僕はただ笑って、安心してと伝えたくて、頭を振った。網が編み上がったのを認めて、最後に杖を糸を切るように上に振り上げた。その瞬間、杜撰だった水の網目は綺麗に合わさって、絹のようなヴェールを作った。水の向こう側で戸惑うように僕を睨んでいるユークに、僕は唇を大きく動かして呟いた。

「君なら、これを解除できる。きっと、触れるだけで」

 ユークは眉を潜めて、視線を揺らした。

 ――逃げたくなったら、ここから逃げて。

「じゃあね」

 僕は轟々と音を立てて流れ続ける水の壁にそっと指で触れた。ユークが最後に何かを言いたげな様子で僕に視線を寄越したけれど、僕は目を伏せてそれを見なかったことにした。僕はただ笑った。爪を撫でていく水が冷たくて、心地よい。僕は杖をぎゅっと握りしめてくるりと踵を返し、後は振り返らずに階段を駆け上がった。轟々という水の流音にかき消され、彼らの叫びは何一つ僕の耳には届かない。それでいいのだ。だってこれは、この魔法は僕のエゴだから。冷たい石の扉に触れて、押し開ける。夕焼け色のような明るい光が隙間から差し込んで、僕の目に沁みた。

 花枯らしのユークの魔法原理は単純だ。花を咲かせるための花魔法は、彼にとっては花を枯らすために働く。つまり、彼は【花魔法】を唯一解除できる人物なのだ。たとえそれが術者でなければ解除しえない魔法――詠唱の初めに術者の真名が固定された術式であろうと、きっと彼ならばそれを容易く解除できる。だから僕は願いを込めて、彼に託した。僕にしか解除できない水の防壁。けれどもしも逃げるのならば、彼がそれを解除して、ここから逃げ出せるように。炎の罅で脆くなった牢の格子をこじ開けて、足を踏み出せるように。

 扉を閉め、辺りを見渡すと、火の手がすぐ傍まで回っていた。灰の粉が揺れる空気に漂っている。こんな時だと言うのに、僕の心はどこか弾んでいた。進んでこの燃え盛る城に残ろうとしたのは、僕の狡さに他ならない。僕は心のどこかで、こうして火事が起こったことを喜んでいた。図書室が燃えるだなんて、そんな行幸、どうして逃せるだろうか。陛下はあれを諦めた。あの図書室に納められた知識の宝の山を放棄したのだ。今なら――今なら、僕は――。

「アズ様?」

 僕が揺らめく灰を見つめて立ち尽くしていると、煤けた空気を纏って柔らかな声がかかった。僕ははっと我に返って振り返った。ほどけた髪を手でまとめるように掴み、首を傾げてスフェンが僕を見つめていた。頬や首を、煤の灰色が汚している。濃紺の服も、今は白く斑に汚れて見えた。

「スフェン……君、まだ逃げてなかったの」

「今から逃げるところですよ。酷い話ですよね。一向に僕には退避命令が出ないんです……きっと皆さん、僕のことは忘れてしまっているんでしょう。僕は責任もってあの場所に留まっていましたけれど、これ以上は僕も死んでしまうので、命惜しさにここから逃げ出しますよ。正当防衛ですからね。たとえお咎めを受けたとしても知ったことではありません」

「うん。僕からも言っておくよ」

「生きて帰れたら、でしょう?」

 スフェンは狡猾な光を瞳に湛えて、嗤った。僕もまた、白を切るように微笑んだ。

「僕は、今から火を止めに行くだけだよ」

「止めた方が無難と思いますけどね」

 スフェンは肩をすくめた。スフェンの髪は、先端が僅かに焦げてちりちりになっていた。本を守ろうとしてあの場所に留まっていたのだろうかと思ったら、心が痛んだ。

「髪、焦げてしまったね」

「え? ああ、いいんですよこんなのは。切ればいいんだから」

 スフェンは髪から手を離し、払うような仕草で頭を振った。

「じゃあ、くれぐれも適当なところで切り上げてくださいね」

「何のこと?」

 スフェンはにやり、と笑った。

「勿論、無駄に足掻いて火を消そうとすること、ですよ。アズ様」

 スフェンはふわりと髪をなびかせ、僕とは反対側へ駆けていく。僕もまた、息を切らしながら駆け出した。そうだ。今なら――今なら僕は、あの最上階の書物を読むことができる。誰にも邪魔されずに、僕はその知識を手に入れられるのだ。視界が紅く燃えている。僕にはもう、炎の紅と、橙に照らされたエメラルド色の廊下しか見えない。

「ロゼ・アクアレーナ……」

 走りながら水の呪文を唱えて杖の先端から流れ出す水色の糸をくるくると自分の身体に撒きつけた。水は竜巻となって僕を包み込む。僕は図書室の扉を勢いよく開くと、赤々と燃え盛る炎の壁に飛び込んだ。思った通り、最上階はまだ無事だ。

「だろうと思ったんだ」

 僕は口の端を釣り上げる。陛下がすんなりと図書室を見放したわけ。ウバロには想像もつかないだろう。簡単に手放すはずがないのだ。ここには世界の知識がすべて詰まっているのだから。それを簡単に見捨てる理由なんて限られている。その知識を他でも補えるか、あるいは強力な【防御魔法】で保護されているか――。僕は、炎に照らされてほんのりと赤く光り空に舞う、白い魔術用の象形文字の羅列を見て笑った。普通の魔導士なら解読すら出来ない古代文字だ。僕は階段を駆け上った。階上から見下ろす景色は、赤く爛々と輝き、夕焼けを映し出す海原のようにうねっていた。炎の中で金色の象形文字がちらちらと光の塵のように見え隠れしている――高度な炎魔法だ。こんな魔法をどれ程の魔道士が使ったのか気になるけれど、今はどうだっていい。

 僕は頭の中で素早く暗算した。この全属性に耐性を持つ強力な防壁魔法が、この炎から受けるダメージ率。少しの猶予はありそうだ。僕は炎を放棄した。

 いつかは罪が露呈するかもしれない。でも、もうそれでも構わない。僕はユークを助けたい。あの子を見捨てるために、今まで生きてきたわけじゃないのだから。

 弾む息が耳に煩い。僕はどくどくと心臓がけたたましく鳴り続ける胸を押さえながら、急いで本棚に視線を滑らせた。目星を付けた本を手に取って、パラパラとページをめくる。罪という灰で汚れた僕の指が白いページを汚していく。……これも違う。僕は本をそのまま床に落とした。そうして本を開いては閉じることを何度か繰り返した頃、僕は本の中に気になる一文を見つけた。

「『炎が《マグ・メル》の脅威となる理由についての詳細な考察――何故花を枯らしてはいけないのか?――』

 本の表紙を見ると、禁書の印が押されていた。本のタイトルと著者の名前は汚く塗りつぶされ、まるでこの研究を行った者は最初からいなかったかのようだ。

 ――僕が今探しているのは……これじゃない……だけど……。

 指の先が、じんと冷えきっていた。そう言えば、この世界はなぜ、こんなにも花を枯らすことを恐れるのだろう。それを罪だと捉えているのだろう?

 そんな疑問、持たないようにしていたのだ。そのことに気づいて、ぞっとする。

 魔法をかけ続けていなければ枯れてしまう花。人も動物も虫もいつかは死ぬ。それが自然の摂理なら、花を咲かせ続けることは、その摂理に反しているんじゃないだろうか。だけど、それを僕達は考えないようにしていたのだ。花だけは例外なのだと信じて。

 罪の重い罪人は生きる権利を剥奪され、殺されるのに。花の命を摘み取ることは重罪だと言う。

 僕は震える手で指を這わせ、文字を追った。

「『この世界の始まりを、誰も知らない。この世界は花を絶やさない。私はそこに、何か怯えにも似たものを感じるのである。花が枯れてしまうことを恐れるがあまり、花を枯らすことを罪と捉えるのである。では、なぜ花を枯らすことが罪なのか。全ての書物にはこう記してある。【花が枯れることは災厄である】と。災厄とは何か。この世界の始まりを、誰も知らない。災厄とは、この世界の根幹に関わる部分なのであろうか。』」

 しばらくは、その【災厄】についての考察が延々と記されていた。僕はざっと目を通して、次のページを捲った。

「『炎は花を枯らすものである。ゆえに花魔法には含まれない。だが炎は果たして花を枯らすものであろうか? その問いに対する答えを誰も持ち得ないが、私はこう考える。炎は花を枯らしているのではない。燃やすのである。灰にするのである。そのような炎を、花に対する禁術として世界では認識がなされているのである。ならば、ここで問題となっているのは【花を枯らすこと】ではない。この世界から【花が失われること】である。この違いは些細なことであると捉える者が多いであろう。だが、私はここにこの世界の真実が隠れていると信じる。』」

「花が失われる、こと……?」

 僕は呟きながら、その後に続く具体例を読み飛ばし、更に次のページをめくった。そのページの下の方は、インクが水で溶かされ、文字が滲んで消えている。次のページも、そのまた次も、全てインクが滲んで消えてしまっていた。

 故意的なものだと思った。誰かが、この先の文章を誰かに読まれることを恐れて、消したのだ。僕はポケットからピンク色のマニュキアを出し、右手の人差し指に雑に塗った。その指を滲んだ文字の上に押し付ける。ぶわり、と青い水の魔法陣が浮かんで、霧散した。この魔法は、僕には解除することが出来ない。誰かの真名が施されているのだ。それでも諦めずに、一つ一つのページに指を押し当てていった。……やはりどれもだめだ。どこかに綻びがないかと思ったけれど――諦めかけた頃、不意にじわりと指が湿った。最後のページに、殴り書きのように書かれた誰かの文字だ。そこに、それまでの水魔法とは違う、別の誰かの魔法が施してあった。子供騙しのような、誰でも出来るような術だ。

「一体誰の……」

 浮き上がった文字を眺める。その字面に、どこかで見覚えがあるような気がした。どこで見たのかわからず、僕は指を自分の額に押し当ててぐるぐると回した。小さな黄色のカード。貸し出し用のカード。司書のサイン――そうだ、これは、スフェンの字だ。

「『王は言った。我らがしゅは、炎のために心を壊した。炎のために大切な人を失い、心を閉ざし、闇にうずもれたのです。故にこの世界では炎が脅威なのです。炎が花を枯らすからではありません。私は、あの子のために、この世界を花で満たさなければならないと思いました。あの子は花ばかりを描いていたからです。きっとあの子にとって、花は心の救いだったのでしょう。ゆえに私は炎を脅威と見なすのです。つまり、この論文はでたらめ。こっちが真実。終わり』」

「え……?」

 僕は言葉を失った。僕は元あった通り、スフェンの書いた文字を真名付きの水魔法で滲ませ、消した。他の本を手に取って、ページをぱらぱらと捲った。最後のページを開いて指を押し当てる。誰かの魔法で文字を消されている本の最後には、必ずスフェンの文字が隠されていた。僕は唖然とした。あの人、自分の権限を利用して知らないうちにこの上階の本も読んでいたのか。……ばれたら重罪ものなのに。

 どの殴り書きも、スフェンがその本に対する自分の簡単な意見をまとめたものだった。けれど、他にはめぼしい記述は見つからなかった。僕は溜め息をついて、本を戻した。随分と奥まで来てしまった。見上げると、高い本棚の上にほこりを被った二つの本が置きざりにされていた。棚に戻されずに。僕は目を細めて杖をくるりと回した。

「……ロゼ・テララレーナ。我が足となれ」

 僕の靴の下から土の糸がにょきにょきと生えて、僕の足にツタのように絡み付いた。そのまま土はねじれて幹のうねる木に姿を変え、僕を棚の上に押し上げた。僕は二冊の本を手に取った。土の木はしゅるしゅるとしぼんで、僕が床に爪先をつけた途端に弾けて壊れた。砂埃のように舞った土の粉は、やがて空に霧散した。

 よく見ると、埃を被っているのは下にあった方の本だけだった。上にあった方、深緑色の表紙の本を開く。その本は白紙だった。否、全ての文字を消されていた。僕は期待を込めて最後のページに人差し指を押し当てた。やはり水の魔法が解除され、銀色の文字が浮かび上がった。

「『アドニス・ゼピュロダイ・シンドローム、別名【春待ち病】。その存在は古くから知られ、しかし存在を抹消されて来た。彼らの病は先天的なものではなく、全て後天的に獲得されているものである。現存している彼らの記録は非常に少なく、全て【花枯らし】の罪にて処刑されているという点が共通している。近年は《メメントモリ》の台頭により、花枯らしが横行しているが、それ以前は非常に稀なケースであったと考えられる。法典を見る限り、花枯らしに対する処罰の重さは枯らした花の数による。最大の罰であろう死刑に処された彼らは、恐らくは広範囲に渡る多数の花を枯らしたのではないかと考えられるのである。もちろん、記録は残っていませんが』」

「これだ……」

 僕は、震える声で呟いた。

 呆然としていた。これはきっと、スフェンが僕のために残していったのだ。そうでないはずがない。僕の声が零れると同時に、白いページに灰色の染みが広がった。僕の目からぼたぼたと零れていく。続く文章を目で追いながら、手が震えた。僕は曇る視界を凝らすように、目を見開いた。

「『後天的に獲得された病気だとすれば、その病気にかかるきっかけがあったはずです。しかしそれに対するまともな研究もなされず、記録も残っていない。文献1671-2や1325-6、546-1を参照する限りでの、僕の予測をここに記したいと思う。彼らは世界を壊したいのです』」

 僕は眉をひそめた。

「『無論、彼らに自覚はないでしょう。本心からそう思っているかも定かではない。ですが花を枯らすことは世界の脅威であり、恐らくは世界の崩壊に繋がる事象であると僕は認識します。ならば彼らの【花枯らし】の能力は、世界を壊すために存在するのです。本能的に、彼らは世界に対する反逆心を抱えているのではないか。その心を抱えるに至ったきっかけはなんだったのか。……これが、僕の予想です。なんだかこれだけで論文が一つ書けそうですね。まあ、書けたところで行き着く先は無職でしょう』」

「はは……いちいち口が減らないなあ……」

 僕は弱々しく笑った。適わないなあ、なんて。赤い本の表紙には、擦れた金の文字が書かれている。【花火は芸術であり、花咲く世界の宝である】――それが表題だった。花火もまた、この世界では禁忌の一つに数えられている。花のようで綺麗だけれど、飛び散った火花が花を枯らしてしまう可能性があるからだ。だからこの本は文字を消されてしまったのだろう。でもいずれにせよ、この本の内容と、スフェンの書き残した言葉には何の関連性もないように思えた。スフェンはただ、僕が読めるように、ただそれだけのためにこの本に最後の言葉を書き記し、ここに置いていったのだ。

 ――原因は、ユーク自身にあるかもしれない、ってことか。

 僕は濡れた目を手首で擦って、もう一つの本を眺めた。僕の指の形に埃が取れて、臙脂色の表紙が見えた。爪の中に埃の塊が紛れ込んだ。スフェンはこれを触っていない。だとしたら、ここに僕の望む知識はないのかもしれないけれど――僕は興味半分で、その本の表紙を掌で撫でた。

 その本は、他の本と趣が異なっていた。布表紙の真ん中に、女の子の絵が刺繍されているのだ。女の子は長い金髪で、車椅子に乗り横顔を見せている。僕はどきりとして、しばらく動けなかった。赤と白の服を来て、ふわふわとした髪を下ろして。それがまるで、僕のよく知っている女の子そのものに見えた。

 金色の文字を爪で擦る。張り付いていた埃が取れて、浮かび上がったのは、


【歩けない女の子の物語】


「……え?」

 心臓が、ばくばくと煩く鳴り続ける。金槌で打たれているような痛みが僕の頭を穿った。目の前が痛みに霞む。本は薄っぺらく、まるで児童書だ。どうして……どうしてこんなものが、こんな場所に……まるで、まるでこれは、この女の子は――

 震える手でページをめくろうとしたら、パリパリと音がした。ページとページの間が張り付いて、綺麗に剥がれない。僕は荒い息を繰り返しながら、杖の先端を本に押し付けた。ニーナは僕が物心ついた頃から歩くことができなかった。医者も原因さえ分からないと匙を投げた。彼女のそれもまた、春待ち病のように過去に見られた何かの病気なのだろうか。この童話のような本の中に、その端緒が記されているのかもしれない。だから、だから――

「ロゼ・ヴェンタ――」

 その時だった。

 ぐらり、と視界が反転した。何が起こったのかわからなかった。本棚が傾いて、詰められていた本がばらばらと隕石のように降ってくる。黒と白の市松模様に敷き詰められたタイルの床で、零れ落ちた本がチェスの駒のように滑っていく。

 僕は傾く視界の中で眼下を見下ろした。なんてことだろう。炎が先刻よりも勢いを増して、予測できないような速さで防御魔法の陣を焼きつくしてしまった。火が最上階にまではびこって、柱を焦がしていく。焦る想いで僕は炎の中で揺蕩う術式を睨んで、呆然とした。これは増幅式の魔法だ。炎の威力も効果範囲も、綻びなく確立された鼠算式で時間と共に増幅されていくのだ。見落としてしまった。普段だったら気づけたはずだ。今なら手に取るように何もかもわかるのに、どうしてあの時僕は炎を消すよりも階段を上ることを優先してしまったのだろう。僕は驕っていた。いざとなれば燃え尽きてしまえばいいんだと、結局はどこかで思っていたのだ。心の中の悪魔に当に屈していた。

 さっと血の気が引く。今更もう後悔したところで遅いのだ。なんてことをしてしまったんだろう。僕は罪を犯してしまった。僕が罪に問われ、処刑されたらニーナはどうなるだろう。どうしてそんなことさえ、思いつかなかったんだろう。僕は手に握りしめた【歩けない女の子の物語】の臙脂色の表紙を見つめた。ニーナ。ニーナ……本当に、僕は、馬鹿だ。

「ロゼ……」

 声が震える。けれど、今更でも、僕は僕の責任を全うしなければいけない。ウバロの言葉を利用して、この場所に足を踏み入れた者として、せめて今できることをしなければいけない。

「アクアレーナ」

 僕は杖を高く掲げて、振り下ろした。僕の眼前に水の弓が浮かび上がる。僕は児童書を脇に抱えると、その弓に杖を添えて、矢を射るように弓の弦を思い切り弾いた。弓が弾けて飛び散った雫が無数の水の矢となって炎に降り注ぐ。矢は炎に融け込んだ術式を模る象形文字を貫いて溶かした。僕は夢中で弓を弾き続けた。やがて火の勢いは収まっていく。僕は緩やかに落ちていく――堕ちていく。

 僕は燃え尽きた灰の山へと叩きつけられた。それを追いかけるように、本と焼けてバラバラになった木の破片やつなぎを無くした石のタイルが僕の上に降り注いだ。僕は咄嗟に呪文を呟くこともできず、目を固く瞑った。

 運がいいのか悪いのか、結果的に僕がそれらに潰されることは無かった。傾いた本棚同士が重なり合って、三角屋根を形作っていた。僕は、そこからはらりと落ちてきた一冊の本に頬を打たれながらのろのろと立ち上がった。灰の匂いですっかり鼻はおかしくなってしまった。図書室も、本も、僕も、もう滅茶苦茶だ。

 右手に握りしめていた杖を背中にかけなおすと自分の頬を殴った青い表紙の本を拾い上げて、左手には【歩けない女の子の物語】を抱えて、のろのろと三角屋根をくぐって外へ出る。ぼろぼろになった図書室は一種の出口のない洞窟のようになっていた。ぱちぱち、と焚火の燃えるような音が聴こえて、びくりと肩が跳ねる。火は消したはずなのに――そこまで思って、瓦礫の山から滲むように広がる黒い焦げが目に留まった。

 再び火の手が上がっていた。どうして――そこまで考えて僕は、先刻までの僕が、重要なことを忘れていたことに気付いた。火が広がっているのは、もうこの部屋だけではなかった。と言うことは、僕はいよいよ火に四方八方を囲まれてしまったと言うことだ。

 一人でその全てに対応できるだろうか。陛下の判断は正しかったと言うべきだろう。この火は、もはやこの城を燃やし尽くすまで消えはしない。けれどもっと早くに全ての官僚を集めて大本の火を消していればここまで炎が広がることもなかったはずだ。花なんて、また咲かせばいいのだから――陛下の判断と己の浅はかさの両方に、僕は苛立って項垂れた。鼻はとうに馬鹿になってしまった。けれど僕を囲むように迫る黒い焦げと赤い炎は視界の端から滲んでくる。

「はは……どうしようか」

 僕は乾いた笑いを漏らした。どうすることもできない。冷静なら、もう少しましな選択ができるのかもしれない。けれど僕はもう燃え尽きてしまった。先刻まで僕を突き動かした怒りも執着も炭になってしまった。僕はもうどうしたらいいのかわからない。黒く染まっていく天井を見上げながら呆然と立ち尽くしているだけだ。不意に、がたり、と音がする。瓦礫が崩れて、埃が舞う。その向こう側から爛々と輝く炎が見えて、赤く照らされた人影が揺れた。――生きている。それが黒焦げの死人ではないことに、ずれた頭でぼんやりと安堵しながら、僕は彼を眺めていた。赤い炎に照らされて、彼の深い紅色の髪が宝石が瞬くみたいに輝いた。


 炎の向こう側から現れた紅い髪の少年は、その鮮やかな瑠璃色の眼で僕を見つめて固まっている。僕は熱っぽい頭で、見たことがない顔だな、だなんて、どうでもいいことをぼんやりと考えていた。



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