蓬
【妻のターン】
退院して、3日が経過。赤ん坊の状態、良好。もう、これ以上ないくらい幸せなのだが、当然二人目ならではの困惑もある。
「よーも。よーも。ふふっ、ふふふふふふ、ふふふふふふふふふは」
「……」
娘が、弟を愛しすぎている件について。
最初は、えらく気に入ってくれたと夫と共に喜んでいたが、ヨモギを見つめるその瞳が異常なほどキラキラしている。
「ねぇ、ママ」
「ん?」
「私、ヨモと結婚したい」
!?
「ちょ、凛なにを――「り、凛ちゃん……パパじゃないの!?」
娘大好きパパは黙ってろ!
「あの……凛、弟と結婚はできないのよ」
「なんで?」
「え゛っ!」
「なんで? なんでヨモと結婚しちゃダメなの?」
そ、そう言えばなんでだろう。
「ちょ、ちょっとタイム! 修ちゃん集合」
そう言って、夫と作戦タイム。
「なんだよ?」
「修ちゃんって、妹の美幸ちゃんと結婚したいと思ったことある?」
「あるか! ふざけんな!」
こ、これ以上なく全否定。
「なんで? 私、一人っ子だからその感覚わかんないのよ」
「普通に考えたら、その思考に行きつかないだろうが」
「でも、娘は弟と結婚したいって言ってるよ!」
「そんなもん、『将来はパパの奥さんになるー』とかってのと大差ないだろうが」
「でも、娘は今までそんなこと一言も――「うるせーばーか! 凜ちゃんと結婚したらお前となんて即離婚だ!」
ひ、酷い。
「じゃあ、私もヨモギと結婚して修ちゃんと離婚する!」
「上等だこの野郎!」
「「ふんっ」」
となんだかよくわからない喧嘩をしつつ。
「凛……パパじゃダメ?」
「やだー」
「だって」
ニヤリ。
「き、きたねーぞ!」
夫は胸が苦しそうだ。
「ねえ、ママー。なんでヨモと結婚しちゃダメなの? なんでー? なんで―? なんでー?」
でた! 子どもの『なんでなんで攻撃』。
「……そう言うルールなの」
「えーっ! 誰が決めたの?」
「……総理大臣」
「ふーん……じゃあ、凛、ソウリダイジンになってルール変えるー」
「そ、そう。頑張ってね」
一通り満足したのか、再び娘はヨモの方へ行き、「フフフー、フフフフフー」と笑っている。
まさか……本当に、総理大臣にならないよね。
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