泣き止まない
【夫のターン】
一応、日常が戻ってきたと言っていいのだろうか。妻も娘も、そして息子も帰ってきて、朝からドタバタが始まっている。
しかし……
「泣いてるな」
「う、うん。泣いてるね」
蓬が、めっちゃ泣いてる。
「ベロベロベロバー」
「ッハハハハハ!」
「なんで理佳が笑うんだよ!」
「つ、つい……変な顔過ぎて――「うるせーバカ!」
とは言え、中々泣きやまない。妻もアレやコレやとやっているが、全然泣きやまない。
「あーん! なにがして欲しいの?」
ほとほと困り果てて、嘆く妻。
「凛ちゃんの時は、そんなに泣いてないんだけどな」
と言うか、夜泣きも、全然しなかった。泣かなさ過ぎて、病院に見てもらったら、とんでもなく健康優良児だった。
まぁ、普通の赤ん坊は蓬の状態に近いのだろう。
「おしめは? ミルクは?」
「問題なし。私という聖母がこれ以上なく優しく抱いているし」
「……」
もう、お前に、何も言うことはない。
しかし、赤ん坊は泣くもんだと言っても、これは少し泣きすぎなんじゃないか。
「修ちゃん、ちょっとお義母さんに電話してよ」
「……普通、実の母親に相談しないか?」
とは言え、この女が子どもの時は、恐ろしくたくましく子どもだったんだろうと容易に想像はつく。残念ながら参考にはならないだろう。
仕方なく、母親に電話をかけ、スピーカー機能に。妻にも聞こえるように話す。
「あら、修。どうしたの?」
「いや、蓬が結構泣いてるんだけど。どうやったら泣き止むかなと思って」
「あらー、ヨモちゃんはお前似なんだねぇ」
シミジミと母親が言ってくる。
「ふーん、俺ってそんなに泣いてたんだ」
自分のことだからわかんないかったけど。
じゃあ、大丈夫ってことなのかな。
「ヨモも苦労しそうだね……」
どういう意味かな。
「で! どうやって泣き止んだんだよ」
「まー、あんたはお母さんのおっぱいが好きでねー。とにかくおっぱいが好きで好きで」
おい―――――――――――――――!
「ちょ……おまっ……なにを……」
「理佳ちゃーん、とりあえずおっぱい飲ませて見て―。息子似だったら、絶対におっぱいに――」
ガチャ
あんな奴は、もう、親じゃない。
「修ちゃん……」
「……」
もう……俺、妻の顔見れねぇよ!
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