子ども
【夫のターン】
妻の出産が無事完了した。
と言うか、
「あの……次の出産がありましたら、全国の研修医に立ち会わせてもいいですか?」
出産後に院長さんが頭を下げてきた。
「えっ……なんでですか? ま、まさか、なんか悪いところが?」
「いえ、逆です」
「ぎゃ、逆?」
「私が見た患者の中でもダントツに早く出産して、術後の回復も驚異的な速度です。是非とも、研修医たちに見せておきたい極めて優秀な妊婦さんなんです」
「い、いや。その……さすがにそれは……妻以外でお願いできませんか? その、他にもいるでしょう?」
「それが……前回までの新記録が、あの……娘さんを出産された時で……その前が……理佳さんの母親に当たる方で……」
な、なんちゅう一家だ……
「今後の医学の発展に何卒!」
院長が土下座せんばかりに頼み込んできたが、丁重にお断りした。
妻の入院している部屋に入ると、聖母のような顔で赤ん坊を見つめていた。
「おぅ……ご苦労」
そう言いながら。理佳の横に座ると。
「ん……」
コツン、と俺の首に顔をもたれてくる。
うん……どんなにスムーズな出産だとしても。出産は出産だ。こいつは頑張った。
「でかした」
「……ん」
赤ん坊も元気で生まれてきて、もうなにも言うことはない。どっちかと言うと、俺似だろうか。でも、理佳の面影もあるから、きっと格好よく育ってくれるだろう。
「ねえ、修ちゃん」
「うん?」
「私、さっき名前考えてたんだ」
「……そう言えば、まだ決まってなかったな」
あの名前論争がまた繰り広げられると思うと、今から頭が痛い。
「でね、さっきふと思いついたんだけど――」
「雑草はダメだぞ」
「そんなわけないじゃーん!」
「……前に、お前から提案されたんだよ!」
「まあ、草系ではあるけどね」
ポケモンか!
「まあ、言うのはタダだから。言ってみろよ」
「
「……うん、
「キラキラネームだよ」
「……うん。そうだな」
俺たちだけのキラキラネーム。
「凜ちゃんはどう?」
「わーい! わーい! ヨモギっ! ヨモギッ!」
凜ちゃんの嬉しがる声と共に。
我が息子の名前が決定した。
・・・
ゴ、ゴミ箱によもぎモチの空パックが……
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