バレンタインデー(2)
【妻のターン】
2月14日。バレンタインデーの朝は一通り夫をからかいつつ、会社へと送り出した。修ちゃんは凄く楽しそうにしていて、『ああ、頑張ってよかったな』って思った。
「いや、完全にキレてるでしょそれ」
冷静にツッコむ親友の真奈は、今、一緒に手作りチョコを製作中。
「な、なにをキレることがあるの?」
「……私はその疑問が出てくること自体、修君が可哀そうだと思う」
「またまたー!」
「……」
真奈はそれ以上はなにも言わずに黙々とチョコレートを作り始める。
「んしょ、んっしょ……」
凛も、パン生地を一生懸命こねている。大好きなパパに手作りチョコレートをあげたいというファザコン娘である。
・・・
「できた!」
2時間を費やした力作。結婚前は、料理や菓子作りが無縁だったのだが、最近は割と成長してきている。
「おお! あんたにしてはまともな形のチョコだわね」
真奈も手放しで褒めてくれて嬉しい。
「ふっふっふっ。パテシィエになっちゃおっかな」
「ちなみにコンセプトは?」
「よくぞ聞いてくれました。トゥルルルッ♪ 『夫婦に刺激をー! ロシアンルーレットチョコレートー』」
「……ドラえもん巻き込んで異常な発明してんじゃないわよ。あんたたち夫婦にこれ以上の刺激は要らないでしょうに」
「そんなことないよ! 最近はマンネリ気味だから、こういうイベントで盛り上げないと!」
「……あんたにとってのマンネリとはなんなのか、全力で問いただしたい気分だけど。で、そのロシアンチョコレートには、一つあたりが入っている訳ね」
「うん」
「なに入れたの? タバスコ? ワサビ? 辛子?」
「チョコだよ!」
「……ん? ちょっと意味わかんなかった」
「えっ? なんで」
「だって、ロシアンルーレットというからには、あたりがあるんでしょ? それは、なに?」
「だから、チョコだよ!」
「それじゃあ外れと一緒じゃん」
「外れはワサビだよ!」
・・・
「ええええええええええっ! あんたその大量の外れがワサビなの!?」
「あっ、ごめん。辛子もタバスコもある」
「種類の問題じゃない! 普通あたりが罰ゲーム系でしょ!?」
「えっ……だってそれじゃあ当たりじゃないじゃん。外れじゃん」
「……そーね、脳みそ腐ってるんだったわねあんた」
親友の容赦のない言葉が飛ぶ。
「うーむ……でも、私の実家では、これが当たり前だったんだけどな」
「……あんたの家もおばさんも、一般家庭のスタンダードではないから、それだけは覚えておくように」
そんなやり取りをしていると、
「できたー!」
と凜ちゃんから声があがる。
「おおっ! チョココロネ……ってこの白いものなにかな?」
……いや、白いモノだけじゃなく、それぞれのチョココロネにバラエティ豊富な色が……
「エヘヘ……いろいろ入れたー♡」
「い、いろいろ?」
「うん!」
「「……」」
・・・
チョコは、全て、夫が美味しくいただきました(妻 談)
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