サンタ(2)

【妻のターン】


 深夜0時。凜がスヤスヤ眠った後の外。


「さ、さぶぶぶぶぶ……り、理佳。早く早く」


 極寒の中。夫は凄く薄着で凍えている。


「あいさー」


 とりあえず、修ちゃんにサンタスーツを着せる。


「うん、修ちゃん、似合う似合う」


「ふぅ……で、髭つけて、風呂敷もって……」


「ふ、風呂敷って。プレゼント袋でしょ?」


「い、いい方どうでもよくないか?」


 違う。やっぱりこう言うのは雰囲気が重要で、あーる。


「ところで、修ちゃん……ちょっと痩せた?」


「自転車通勤だからな!」


「うん。健康的でいいね」


 私はなんて良い妻なんだろう。


「……」


 納得のいっていない夫を無視して、ミッションを開始する。


 とりあえず、私が先んじて部屋に入り、凛が寝ていることを確認。それから、修ちゃんに合図を送って、泥棒よろしく部屋に侵入。新聞紙で作った大きな靴下にプレゼントを入れる算段である。


 万が一、凜が起きていたとしても『うわっ、サンタって本当にいるんだぁ』ってなって子どもの夢はめでたく壊さなることはない。


 おっと、サンタさんは本当にいるんだったー。(棒読み)


 ドアをそっと開けて、ベッドの上にいる凜を確認。どうやら、スヤスヤと眠っているようだ。


 そして、起こさないようにゆっくりと凜の横に入ってスタンバイ。


 隙間から覗いている夫に、ラブ・アイコンタクト。


 ソローリ、ソローリ……


 修ちゃんが忍び足で、それはそれは忍び足で歩き、ピアノ線で吊るされた新聞紙の靴下を拡げて中をまさぐる。


 パチンっ!


「……っ!」


 弾けるような物音がして、夫がうめき声をあげそうになる。


 こ、この子(凛)……ネズミ捕り仕込ましている……恐ろしい子っ。


 しかし、耐えた。


 修ちゃん、偉い!


 プレゼント袋から大きなクマさんぬいぐるみを靴下に入れた――


 ゴトッ 

    グイッ 

       カララララ 

            カチッ!


 ――ジリリリリリリリリ!


              ・・・


 ホームアローンか!?


「はっ、シャンタシャーン!?」


 ガバッと寝ぼけた娘がネムネム瞳で周りを見渡す。活舌すらハッキリしてない状態で、本能的にサンタに扮した夫に抱きつく。


「パパ―――――――――! ママ―――――――――! パパ―――――――――! ママ――――――――――!」


 ひ、ひいいいいいいいいいいいっ!


「り、凛ちゃんどうしたの?」


 さも驚いたふりをして娘の側に近寄る私。なんとかして、夫を逃がさなければ、娘の幻想を打ち砕いてしまう。


「ママ! サンタさん捕まえた―!」


 修ちゃんが必死に振り払おうとするが、娘はガッチリと獲物を離さなずに食らいつく。


「ほ、本当だ!? 凛、パパ呼んできて! 私、捕まえておくから!」


 そう言って私も修ちゃんをガッチリと抱きしめる。


「うん! パパ―――――――――! パパ――――――――!」


 ドタドタドタ。


 娘は一階へ降りて行った。


「さっ、早く! 窓から」


「えっ……」












 娘が戻ってきた頃には、見事サンタは逃走に成功していた。


 


 

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