ツンツン
【夫のターン】
12月25日。恐ろしい一夜が明けた翌日の朝の寝室。娘は、プレゼントの大きなくまさんを片手に1200%の猛烈はしゃぎっぷりを見せ、現在、俺のお腹の上で飛び跳ねている。
「パパ――――――――――――――――――――! パパ―――――――――――――――――! サンタさんにもらったの―――――――――! もらったのー―――――――――――!」
り、凛ちゃん……俺の耳元で叫ぶと、鼓膜破けるよ。(心の声)
その時、ドアが開いて妻が入ってきた。
「あっ、おはよう修ちゃん……なんか、機嫌悪そうだね?」
「……」
こいつ……凛がいると思って、敢えて聞いてきている。
昨日の夜、泥棒よろしく窓から逃走を図った俺は、なんとか壁を這いつくばって、よい子は真似しちゃダメな感じで地面に降り立った。娘の目を盗んでリビングに戻り、なんとか下手な説得兼ごまかしをすること一時間。ようやく、娘が納得して眠るという、思い出したくもない暗黒クリスマス・イブだった。
しかも、無理な態勢で身体の節々が筋肉痛。これから(恐らく娘が高校生になるまで)、毎年クリスマス・イブが命がけになることを想像し、今から頭が痛くなる。
「凜ちゃん、ご飯作ってるから、先食べてて」
「うん!」
大きなくまさんを抱きかかえながら、娘は階段を降りて行った。
寝室に残されたのは、俺と妻。
「修ちゃん、お疲れ様」
「……疲れた」
そうつぶやくと、理佳が俺の横にストンと座る。
「よく頑張りました♡」
ナデナデ。
「……っ」
ミロのヴィーナス級に可愛い。
ギュ―っ。
「お、おい理佳」
「エヘヘ……修ちゃーん」
や、ヤバい……可愛すぎて、ヤバい。
なんか、そのままコテッっとベッドに寝転ぶ。
「……」
「……」
すぐ横を見ると、理佳の綺麗な顔がある。雪のように白い肌。大きくクリっとした瞳。精緻に整った輪郭。相変わらず、とんでもなく美しい顔をしている。
「ツンツン」
「ば、ばかやめろよ……」
「へへー、やめなーい。ツンツン、ツンツン」
ぜ、全然やじゃない。
「……」
「……」
「……ツンツン」
「やん、修ちゃんこそやめてよー」
「ヘヘ、やめなーい。ツンツン、ツンツーン」
ああ、なんて幸せなんだろうか。
「ツンツン」
「ツンツン」
「ツンツン」
「ツンツン」
「ツンツン」
「ツンツン」
「ツンツーン! ツンツンツンツーン」
・・・
「ツンツ……なにしてんの?」
「エヘヘ、可愛いから拡散しちゃった♡」
『第3段! 夫のツンツン動画』
妻を強めに殴った。
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