サンタ
【夫のターン】
降りしきる雪。今年もサンタの季節がやって来た。
「ふんふふんふんーん🎵」
娘もテンションがあがっている。大きな大きな新聞紙の靴下を鼻唄混じりに作成中。
「さぁ、凛ちゃんに今年はサンタが来るかな?」
いたずら心でそんなことを言ってみる。
「くるよー、凛、いい子だもん」
か、可愛い。
みなさーん!うちの娘は世界一可愛いですよー!
「ねぇ、修ちゃん!私のところにもサンタ来るかな?」
「お前のところには来ない」
キッパリと妻に言う。
なぜならいい子じゃないから。
というか、悪魔だから。
「パパー、セミ捕まえるやつある?」
「セ、セミ?ああ虫取り網のことね。あるけど、なにすんの?」
「サンタ捕まえるの!」
!?
「ら、凛ちゃん……今、なんて?」
「サンタさんとお話ししたいから、捕まえるー」
天使のような微笑みで恐ろしいことを言う娘。
「あの……ほらっ、サンタさん忙しいから、それはやめた方がいいんじゃないかな?」
なんとか、説得を試みる。
「大丈夫だよ!ちょっと会うだけだもん。これ書いたから、渡すのー」
そこには、『サンタさんへ』と書かれた手紙が。
可愛い……可愛いんだけど、発想がヤバイ。
「ほら、でも虫取り網はサンタさんも嫌じゃないかな……凛だって虫取り網で捕獲されたら嫌じゃない?」
「やじゃないよー。楽しかったもん」
「……っ」
面白がって、買ったばかりの虫取り網で娘の頭に被せたのがいけなかった……夏の俺をひっぱたいて小一時間説教してやりたい。
「ちょっと里佳、こっち来て」
そう言って、リビングの端に呼び出す。
「……あの娘ヤバイぞ」
サンタ捕獲計画を着々と進行している。
「懐かしいなー、私も毎年サンタ捕まえようとしてたっけ」
遠い目をして、そんなことをつぶやく。
俺はお前のお義父さんを世界一尊敬するよ。
「しかし、どうしたもんかな……」
「まぁ、そんなに心配しなくてもいいんじゃない?所詮は子どもだし、凛は21時には絶対に寝ちゃうし。眠気には勝てないよ。私も高校生までそうだったもん」
「……ちょっと待て」
余談にパンチがありすぎて、話がなかなか入って来ない。
お前、高校生までサンタ捕まえようとしてたのか?
お前、高校生まで21時就寝だったのか?
「深夜0時とかに来れば、もう凛なんてスヤスヤだよ」
自信満々に答える妻の根拠は、自らの経験則から出ているようだった。
俺は今、お前のDNAが恐ろしいよ。
「ねぇ、パパー。セミ入れるカゴあるー?」
!?
凛ちゃん!サンタになにを!?
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