俺のバナナ(2)


【妻のターン】


 朝。いつもより少し早く起きてご飯の準備。どうやら、修ちゃんは仕事が大変らしい。夫想いの貞淑な妻として、ここは一肌脱がなくてはいけない。ターンと愛情の込めた朝ご飯を作ってあげないと。


「おはよー」


 ネムネム顔で、娘が起きてきた。目がしょぼしょぼしてるのか、一生懸命目をこすっているのが、可愛い。


「パパは?」


「んー? まだ寝てたー」


「そろそろご飯だから起こしてきて?」


 そう言うと、凛の瞳がきら―ンと光る。


「わかったー。フフフフフ」


 笑いながら、2階へ駆けて行く娘。


             ・・・


「ぐわ------------」


 しばらくして、夫の叫び声が響き渡ってきた。どうやら、娘との子ミニケーションに勤しんでいるらしい。なんて、暖かな家族だろうか。


 それから少し経つと、はしゃいでいる凜を抱きしめながら、瀕死の様相で夫が食卓につく。


「おはよー、修ちゃん」


「……」


 む、無視。


 どうやら、昨日バナナを食べてしまったことを、まだ怒っているらしい。割と器の小さい夫である。


「ねえ、機嫌治して。ねつ♡」


「……牛乳」


 ぶ、ブリっ子も通じない。今回は相当怒っている。


 バナナだけに……バナナ怒っている。


 仕方ない……大人しく言うことを聞こう。


 冷蔵庫から夫のコップに特性牛乳を注ぐ。


 ゴクゴク……


「……あまっ! お前、これ牛乳じゃ……まさか……おまっ」


「ふふっ、気づいた?」


「お前、これ……」


「うん」


「バナナオレじゃねぇか―――――――――――――!?」


「ピンポーン!」


「じゃねぇよ! お前、俺のバナナでバナナオレ作ったのか!?」


「うん」


余りで。


「なんでだよ!?」


「……トットゥルーー! サプラーイズ!」


「ふざけんな! 俺はバナナが食べたかったんだよ! 昨日の夜、ちょうどあの時にバナナが! なんでバナナオレなんかにしたんだ!?」


「えっ、だって修ちゃん牛乳好きじゃん」


「だから何だ!」


「好きなバナナと好きな牛乳組み合わせたら美味しいに決まってるじゃん!」


「そう言う問題じゃないんだよ! 俺はバナナの食感が楽しみたかったの!」


「まあまあ、まだあるから……はい!」


 そう言って修ちゃんにトーストを差し出した。


「お前……まさかこのジャム……」


「うん、バナナジャム」


まだ余ったから。


「ふざけんな―――――――――!」


「えっ、美味しいよ」


「単体でバナナ食わせろよ! というか一つぐらい残しておけよ!」


「まあ、食べて♡」


「そもそもバナナジャムなんて気持ち悪いだろ! 美味しいわけあるか!」


「美味しいって」


「てめー、絶対だな」


 夫は私を睨みつけながらバナナジャムの塗られたトーストを頬張る。


 モグモグ……


「なんで美味しいんだよ―――――――――――!?」







 どっちにしろ、絶叫する、夫だった。






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