小学校
【妻のターン】
今日は家族で凜の入学準備だ。まずは、なんと言ってもランドセル。そして、その他諸々の道具も、近くの百貨店で一気にそろえる覚悟だ。
まずは、ランドセル売り場に足を運ぶ。
カーマインレッド、ローズピンク、ブラウン、パールピンク、パールブラウン、パールパープル、パールサックス……なんか、名前までお洒落だ。
「ふーん……私の時代では女子のランドセルと言えば
「Xジャパンか! 普通に赤と言え!」
「紅の豚の方だよ!」
「どっちでもいい!」
そんな夫婦のあたたかなやり取りの横で、凛ちゃんがホケーっとランドセルを見つめている。まさに、心ここにあらず状態。娘は、人体模型や、日本戦国時代の城には興味を示すものの、ランドセルとか服とか小物には、あまり関心がないようである。我が娘ながら、末恐ろしい。
「凜ちゃんはどの色がいい?」
「うーん……ここになーい!」
そう言って凜はランドセル売り場を飛び出して、トテトテと走り出す。
「か、可愛い……娘が可愛すぎるんですけど―!」
「……」
娘の後姿に悶えている夫を全力で無視して、凛の後についていく。
まったく……あの我儘娘はなにを選ぶつもりやら。
私的には、ランドセルなんて何色でもいい気がする。修ちゃんは断固新品を主張したが、私は最後まで中古(友達からタダでもらう)を主張した。最後は夫の猛烈な土下座に屈したが、値段を見てみると、屈するべきではなかったと後悔の念が募る。
安くても3万。高くて8万。親心を巧妙にくすぐるいい値段設定。セールスマンはこう言うだろう。『6年使うとなったら安い買い物ですよー』と。確かにそれを想定したら月額500円~1000円前後だろう。
でも……タダだったら、実質500円~1000円前後のプラスなのにー!(心の声)
「理佳……だいたいお前がなにを考えているのかわかるが、俺は夫だ。一家の大黒柱だ。天地がひっくり帰ったとしても、俺は娘に新品のランドセルを買う」
「……」
夫の断固たる決意に、全力でひいています。
娘が他の売り場に到着した。でも……こんなところにランドセルは置いていただろうか……
「り、凛ちゃん。私たちが言ってるのはランドセルの色のことだよ」
値段は3万円だよ。
「理佳……凜ちゃんが欲しいものを買う。これは、決定事項だ。俺は一家の大黒柱だ」
「……」
恐ろしい……娘の溺愛ぶりが恐ろしい。
「あっ、これがいい!」
凜が天使のような笑顔で指さしたのは……
どっからどう見ても、キャリーバッグだった。
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