娘の友達
【夫のターン】
娘の幼馴染のである剛君が遊びに来た。この子は、妻の親友である真奈と俺の腐れ縁である岳の息子である。ちなみに奴らは、ショッピングに逃走した。後で奴らには、目いっぱい夕飯を作らせてやろうと思っている。
「凛ちゃん凜ちゃんオママゴトしよー」
剛君が、今日も元気にハキハキと話す。
うん、いい子だ。
「いーよー!」
娘が天使のような笑顔を浮かべる。
「なんだか微笑ましいな」
隣にいる妻に声をかける。
「そうだねー、案外このまま結婚しちゃったりしてねー」
「……」
「……」
「剛君、ちょっと娘に近づきすぎじゃないか?」
父さん、中途半端な男じゃ許さんぞ。
「ちょっとーパパ邪魔しないでー」
・・・
「しゅ、修ちゃん。いじけないで……バナナバナナ」
「……俺はゴリラか」
そう言いつつも、妻から差し出されたバナナを頬張る。
「はぁ……凜もいつか『パパとお風呂入りたくなーい』とか『パパの後のお風呂入りたくなーい』とか言うのかねぇ」
ハッキリ言って想像したくない未来だ。
「まあ、娘にはそんな時期あるからねー。『触らないで!』とか『部屋に入ってこないで!』とか『同じ空間にいたくない』とか『えっ……今の面白いと思ってんの?』とか『オヤジギャグばっかり言わないでよマジうざい』とか……」
「……妙に生生しいんだが、お前……まさか……」
「……あははは、一般論よ、一般論」
……お義父さん。俺は、あなたを尊敬しています。こんな娘を持って、さぞやご苦労だったことでしょう。
「でも……大きくなったな」
「……修ちゃん」
「凜が生まれた時は、こーんだけ。たったこんだけの大きさだったんだよな。それが、もう片手じゃだけなくなって……」
「……」
「いつか、両手で高い高いも出来なくなって、『いつの間にこんなに大きくなったんだろう』なんて。そんな想いの繰り返しなのかな」
今の想いを何回も何回も。毎日毎日繰り返して。そんな日々を過ごす覚悟があるかと言えば、少し自信はない。でも、すくすくと成長していくことが……幸せなはずの時間が、寂しい時間だなんて。そんなことは、結婚するまで、想像もしなかった。
「理佳……なんだろうな……俺さ……もちろん嬉しいんだけど……やっぱり少し寂しいんだ。親って言うのは、ずっと……こんな想いをしてかなきゃいけないのかねぇ」
「修ちゃん……」
「……」
「ねえ、修ちゃん」
「ん?」
「モヒカンとモモンガって……なんか似てない?」
えっ、俺の話全然聞いてない!?
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