風邪×2
【夫のターン】
風邪を引いた。
「ゴホッゴホッ……」
頭が痛い。喉が痛い。体がだるい。信じられないくらい、身体の節々が痛い。もしかして、ただの風邪じゃないのではないだろうか。
「修ちゃん、大丈夫?」
ベッドで横たわっていると、里佳が部屋に入ってきた。
「ゴホッゴホッ……まあ、休みだからな。今日治せば問題ないから、そんなに気に――「ほーんと、なんで風邪ひいちゃったんだろうね?」
!?
「……」
「修ちゃん、昨日、薄着だったから。それが原因だったんじゃない?」
ま、間違いない。
こいつ
移した事実を隠蔽しようとしている。
「お前……昨日、風邪ひいてたよな?」
「治ったよ!」
「知ってるよ! そうじゃなくて、昨日お前が風邪をひいて、俺が今日風邪をひいている……これ、どう思う?」
「ラブラブ!」
「脳みそ腐ってんのか! 移したんだよ! お前が移したんだよ!」
「証拠は?」
「しょ……」
里佳は、大威張りに胸を張った。
「修ちゃん……疑わしきは罰せず、だよ」
「き、貴様……ゴホッゴホッ……」
「大丈夫? 熱測って」
そう言って俺に体温計を差し出す。
・・・
「38度……ププッ……」
「い、今お前笑った!? 笑ったよな!」
「笑ってないよー(棒読み)、あまりに高い熱でびっくりしましたわー(棒読み)。私も39度の時、すっごく大変だったもーん(棒読み)」
か、完全に38度をバカにしている。
「熱は高さじゃねぇ!」
「はいはい、わかったよ。虚弱君」
「やかましい!」
「なにか食べたいものある?」
「ゴホッ、ゴホッ……おじや」
「わかった! すぐに作ってくるね!」
「砂糖入りじゃないやつな」
「やっだ、そんなわけないじゃーん!」
前に、そんな訳、あったんだよ。
里佳は、風邪をひいたというのに、全然優しくない。
妻曰く、『弱っている時だけ優しくするなんて、そんなの本当の優しさじゃない』
……いつ優しくなるんだお前は!?
・・・
ベッドに横になって身動きが取れない。本を読む元気もないし、テレビなんて、見るだけで頭がガンガンする。
「できたよー、おじや」
嬉しそうに、里佳が部屋に入ってくる。
「おっ……ありがとー」
「はい、あーん♡」
ミ、ミロのビーナス級に可愛い。
「……あーん」
パクッ。
「……あま―――――――――――!?」
おじやがあまーい!
「てめえ砂糖入れやがったな!?」
「入れてないよ!」
「じゃあ、この甘さはなんだ!? 俺に説明してみろ!」
「グラニュー糖だよ!」
「砂糖だよ! それは砂糖なんだよー!」
当然、翌日になっても、風邪はひかなかった。
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