風邪

【妻のターン】


 せっかくの土曜日だというのに、風邪をひいてしまった。1月なのに、薄着過ぎたであろうか……


「大丈夫か、里佳」


 ベッドで横たわっている私を時々覗きにきてくれる。


「……うん、ありがと」


 こんな時、修ちゃんは、凄く優しい。


「なにか欲しいものがあったら言っていいからな」


「じゃあ……ティファニー」


「……バカは風邪ひかないってのは都市伝説だな」


「グッチでもいいよ」


「誕生日か!」


「ふぅ……しょうがないから、おじやでいい」


「……最初から『おじやが食べたいです』と言えんのか貴様は」


           ・・・


 しばらく、寝転んで本を読んでると、修ちゃんが部屋に入ってきた。


「できたぞー」


 おじや到着。


「砂糖入りじゃないよね?」


「俺はお前じゃないから大丈夫だよ!」


 そ、それはすまない……


 モグモグ。


「熱を測ったか?」


「まだー、測ってー」


「……バ、バカ! 自分で測れよ」


 そう言いながら、甘えるとまんざらでもない表情を浮かべる夫は、可愛いと思う。


「まったく……しょうがないな。仕方がないからはか――「じゃ、自分で測ろうっと」


「……」


 心なしか、哀しそうな顔を見せる夫は、可愛いと思う。


             ・・・ 


「げっ、39度か……まだ、下がんないな……ってなにやってんの?」


「インスタ映えするかと思って」


「……寝てろ!」


「はーい」


「なにかして欲しいことあるか?」


「サマソニ行きたい」


「アホか!」


「あっ、フェスは冬はやってないか」


「季節の問題じゃない!」


「ディズニーでもいいよ」


「行先の問題でもない!」


「じゃ……テレビつけて」


「……お前、39度なのに驚異的に元気だな」


             ・・・


 夜になり。


 暇なので腹筋していると、夫が来た。


「安静にしてろバカ!」


「だって暇なんだもん」


「ふーっ……もう、治ったのかな……」


「ねえ、修ちゃん、お腹減ったー」


「……なにが食べたい?」


「焼肉!」


「だろうな!」


              ・・・


 30分後、焼いた肉を持ってくる夫。


「ほらっ……食えるもんなら食ってみろ」


 やったぁ!


「いただきまーす……はぐっ……はぐっ……おかわり!」


「……恐ろしい奴だな」


 朝もおじやだけだったので、たらふく食べた。


「ふぅ、お腹いっぱーい。ごちそうさまー」


 余は満足じゃ。


「おい、熱測ってみろ……平熱だったらもう優しくしねーぞ」


「はーい」


             ・・・


 39度5分


「化け物!」





 結局、明日に熱が下がって、修ちゃんが風邪をひいた。








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