10年前の私へ
【妻のターン】
午前2時。
夫の手紙を熟読……修ちゃん、私のことをこんなに……
「……きーさーまー!」
「うわっ、びっくりした!」
「なに見てんだよ! 約束しただろう!?」
「……ええ。私、確かに『見ない』って言いました。でも、約束はしてません」
「ああ、そうか……お前には言葉通じないんだったな。じゃあ、お前のも見せろよ」
「ええっ!?」
「……お前のその反応に、俺は今すごく驚いているよ」
*
『10年前の私へ』
ヤッホー、初めまして。10年後の私です。元気してますか?
あなたは5回目の合コンでメチャメチャダサい人に出会います。超絶ダサくて、心の中で『ダッサー! ダッサ――――――――――――――!」と絶叫します。
その人、未来の、夫です。
あなたは『なんてマズそうにビールを飲むんだろう』と興味津々。実はその人、カシスオレンジしか飲めないんです。
だから、もっとビール飲ませたげて。もっともっと。
帰り道に、あなたはメアドを聞かれます。あなたは初めて異性に教えます。
その判断、マルです。
そしたら、イチゴ狩りデートの帰りに告られます。突然、バス停の中心で告られます。メチャメチャデカイ声で。あなたは混乱して咄嗟にワーキングホリデーでオーストラリアに行くって嘘ついちゃいます。
本当は、嬉しかったのに。
きっと、この初めての気持ちがなんなのか整理できなかったんだよね。しょうがないしょうがない。
その時には、もう修ちゃんに惹かれてたのかなー。
でも、そんな私の嘘を、あの人はバカだから間に受けて、貯めます。バイトで100万。
で、私に2度目のアタック。もう、その時には、凄く好きだったと思うんだけど、やっぱりこの気持ちがわからなくて、濁します。
結局、彼はワーキングホリデーに単身オーストラリアへ。
……そしてなぜか、ブラジルにいるフリします。
意味がわからないでしょう? 私も、意味、わかりません。
今まで、本気で好きになったことなくて、恋なんてしたことなくて。漠然と『超イケメンと結婚したいなー』なんて考えてたけど。未来の夫は、普通。これ以上ないくらい普通です。
でも、全然いい。私は普通の修ちゃんがいい。そんな風に思えるくらいには、私は今、幸せです。
だから、待ってて。恋なんて一生縁がないと思ってたあなたに、とびきりの出会いが待ってるから。
PS
その後、あなたは何度も怒られます。
バナナをあげてください。
とにかく、怒ったらエサを与えてください。
*
「えへへ……どう? 修ちゃ……泣いてる!?」
「……うるさい」
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