第10話 ガルム剣を探す

 ガルムは部屋に差し込んできた朝日に目を射られて目を覚まし、二日酔いの頭痛に眉をひそめてわめいた。もちろん、本物の二日酔いではない。酒に入れられた得体の知れない薬草の後遺症である。

「ルト。水を持ってこい」

 昨夜のように、浴びるほどに酒を飲んだのは何十年ぶりだろう。ガルムは目をつむったままわめき続けた。

「水だ。水」

 誰も応答する気配がない。ルトもベッドの中で頭を抱えており、親方の怒鳴り声が頭に響いて、ひどく迷惑に感じているのだった。ガルムに水を差しだしたのはルシュウである。

「お前、水、言う」

 ルシュウはそう言い、ガルムに水の入った瓢箪を差し出した。

「ルシュウ、水だ。俺にも水をくれ」

「ガルム、水飲む、水、無い」

 ルシュウは当たり前のことを言い、ガルムが飲み終えた空の瓢箪を持って部屋から姿を消した。ルトのために水を汲みに行ったに違いない。

「あうっ」

 ルトは言葉にならないうめき声を上げた。これなら船に揺られている方がましだ。二日酔いなど、ルトには初めての経験だった。いつ治まるのかわからない分、不安は大きいのである。

 ガルムはようやく弟子に目をやる余裕ができ、痛む頭を試しに振ってみて、残った日数を考えた。あと十二日、都までの道のりが八日、武術大会の参加手続きをする日程を加えれば、日程に余裕がない。今日は出発せねばならないとガルムは自分に言い聞かせた。しかし、この不快感はどうだろう。まるで悪い薬でも飲んだようだった。

 ガルムは頭を押さえ、枕元を探った。彼は剣を手にして以来、枕元において寝る習慣がある。その習慣が彼の命をを何度も救っており、その習慣は信仰に近いものがある。しかし、いつもの場所にその剣がなかった。ガルムは憂鬱そうに上半身を起こして回りを見回した。

「儂としたことが、剣の置き場を間違えるなど」

 ルシューが水を汲んで戻ってみると、ガルムとルトが寝床の敷物まで剥して何やら探している最中だった。挙げ句の果てには、小物を入れたずた袋まで裏返しにひっくり返している。ルシューは、やや殺気走ったガルムと視線を合わせて、おどろいたようにどぎまぎしたが、すぐに笑顔を作った。

「ガルム元気。ルト元気。オレ、大変うれしい」

「馬鹿め。我らは剣を探しているのだ」

「ルシューよ、剣を知らんか」

 ルトの質問にルシュウは即座に断言した。

「剣、ここ無い」

「何だ?」

「ガルムここ来る。ルトここ来る。剣持たない」

 ガルムとルトが寝床に入ったときには、剣をどこかに置き忘れてきていたと言う意味だろう。そう指摘を受けると、ガルムに思い当たる節がある。酒場の主人と話を始めた後、二人の男が近づいてきて会話に加わった。その時の記憶の残滓である。

「無粋ではないか」

 そう言われて、剣帯をはずしたときの感触を、今、手の平の中に想いだしたのである。

「酒場だ」

 ガルムはそう叫んで階段を駆け下りた。


「御主人」

 呼びかける口調に媚びる雰囲気が漂っていた。ガルムは下手に出ている。剣士が剣を失ったという後ろめたさがあるのだろう。ガルムの目の前に、昨日と少しの変化もない酒場の主人がいる。酒気が丸い目に浮いており、笑顔がひどく愛想よい。

「昨夜、ここに荷物を置き忘れたはずだが」

 ガルムはそう言葉を継いで、主人の反応を伺うように老人の顔をながめた。

「ふっほっ。ふっほっ」

 主人は口の中に隠るような笑い声をあげて言った。

「覚えておるよ。儂と話した後、あの隅であんたと、そちらのでかい兄さんが、三人組と飲んでおったろ。」

「儂らの相手は二人だったはすだが」

「いいや、三人だ」

 ガルムはルトと顔を見合わせた。ルトの顔は既に不信の表情を浮かべている。

「おい、おっさん。俺はただの阿呆だよ。その阿呆でも、目の前に自分の荷物があるかどうかぐらい分からあ」

 ルトは酒場の主人の言葉ののんびりした口調が腹立たしく、二日酔いの不愉快さも加わって、主人の胸ぐらをつかんだ。

「せっかちなヤツじゃの」

 主人はしばらく呼吸を整えたが、本気で腹を立てた様子もない。

「お前達に飲ませていた二人以外に、隅っこにもう一人仲間がおったじゃろうが」

 ガルムとルトは顔を見つめあった。

「そういえば」

 ルトは店の奥の禿頭を思い出した。そして、意図的に酔わされたらしいという事に気づいたのである。

「おい、じじぃ、お前も仲間だろ」

「ルト。止めんか」

「親方。このじじいは知ってやがったんだぜ」

 机を叩いて怒鳴るルトに、酒場の主人が豹変した。目つきがひどく鋭くなり、小柄な体にルトを黙らせる威圧感がある。

「おい、若いの。ここじゃ、盗るのは商売。盗られるのは、ただの阿呆と決まってるんだよ」

 言い返そうとするルトをガルムが止め、主人は追い討ちをかける様に言葉を次いだ。

「わしにゃ、人の商売を邪魔する気はねぇ。阿呆を助けてやる義理もねぇ」

 その言葉に激高するルトをガルムが制した。

「ご主人。その商売人の居場所はご存知ではあるまいか?」

「そうさな」

 もったいぶって考えるふりをし、ガルムの懐に目をやった。世間慣れしたガルムには、主人が銭をせびろうとしている意図が読み取れる。ガルムは懐を探り貨幣が入った銭袋が無い。剣を奪った連中がガルムの懐まで探って行くのは当然だった。

「ルシュウ」

 ガルムは階段を下りてきたルシュウを呼び寄せた。ルシュウ、その少年ではなく彼が首に革袋を目ざとく見つけたのである。ルシュウは混乱している。水を持ってこいと要求していたガルムやルトがいきなり元気に飛び起きて階下に走り去ったのである。それでもこの人の良い少年はルトのために水を得るべく瓢箪を下げていた。

「貸せっ」

 ガルムは昨日ルシュウに与えた革袋を奪い取った。ルシュウはガルムの意図が分からぬと困惑の表情を見せたが、昨日ガルムに教えられたことを念押しした。

「ガルム。大切に使う、良い。無駄遣いする、良くない」

 ルシュウは裏口に姿を消した。裏に召し盛り女に教えられた井戸がある。

 ガルムは一枚の銭を取り出して、テーブルについた老人の前に置いた。

「ご亭主、昨日、我々と酒を飲んでいた男の居場所はご存知か?」

「やれやれ、田舎者めがようやく町の作法に慣れてきおったか?」

「じじい、さっさと言え」

 ルトが老人の頭を撫で、老人はややムッとした顔でそっぽを向いた。

「わしは物忘れのひどいじじいだよ」

 ガルムはやむなく更に銭を積んだ。一枚、二枚、三枚。その枚数に納得したらしい酒場の主人は口を開いた。

「あの連中に覚えはないな。しかし、あんたらのお探しの物なら、大通りのギグの店に行きな」

 ガルムとルトはルシュウの銭袋が空になるまでに、銭をじわじわせびられて酒場を出た。酒場を出た時にルトが解放されたと思ったのは、彼と老人の格の差に違いなかった。

「お客人。最後のもてなしだ。いま兵士たちが浮浪者狩をやってるから気をつけな。捕まったら生きてらんねえよ」

 酒場の主人はガルムとルトの後ろ姿に、気さくな口調でそう言いつつ、何かトラブルを面白がる様子もある。あの二人について興味深い想像を膨らませているのだろう。杯を傾けて酔いを感じさせる酒場の主人に、無邪気な質問が投げかけられた。

「お前、ガルム知る? ルト知る?」

 いったい、いつから此処にいたのかと驚くほど、突然に現れた少年が主人の耳元で言った。少年は何の脈絡もなく、水を入れた瓢箪を持っていた。その水をちゃぷちゃぷと音をさせながら、老人をじっと見つめているのである。

「お連れさんなら、大通りのギグの店に居る」

 この少年とは言葉の駆け引きを楽しむことができない。この駆け引きに長じた老人が、少年の目に吸い寄せられるように、腹の内を正直に語っているのである。少年は老人の言葉を理解してうなづくと、二階に駆け上がり、大きな自分の荷を背負って、再び老人のもとに現れて宣言した。

「オレ、ギグ行く」

「待ちな」

 酒場の主人はルシュウを呼び止め、先ほどガルムがテーブルに積んだ六枚の貨幣を革袋に戻してルシュウに与えて言った。

「餞別だ、持って行け。店の前の路地を二つ突っ切ってみよ、ギグの店への近道だ」

 老人は身ぶりを交えて少年にそう教えた。

「お前、良い人」

 お礼のつもりだろう、ルシュウは、主人をそう表現し、片手を振って挨拶して出ていった。酒場の主人は一人にんまりと微笑んだ。あの少年の素直な笑顔を浴びると、何やらひどく善人になった気分である。既に昨夜ガルムから多額の貨幣を奪っていた。数枚の貨幣を返したところで痛くもかゆくもないのである。

 観察力のあるルトが居れば気づいたかもしれない。ルシュウはルトたちと出会ったときに、相手を「あなた」、自分を「わたし」と称していた。船旅で水夫たちに囲まれて、いつの間にやら、その妙な上品さが薄れ、お前、オレと呼称して周囲の人々に染まっていたのである。


 ルシュウが酒場の老人の言葉を少なくとも半分は理解した証拠は、路地を一つ突っ切った点だった。ただ、正確に理解したかどうか疑わしいのは、道ばたの物売りや大道芸人に興味を引かれて、ふらふら、きょろきょろと彷徨い始めた点だろう。

それぞれの路地にルシュウの好奇心をそそる賑やかな声が聞こえている、わずかな秩序が感じられるのは、それぞれに小さな縄張りがあるからだった。路地の両端に露店を並べる人たちはそれぞれの小さな縄張りの中に売り物を並べ、或いは、芸を披露する舞台として、日々の糧を得ているらしい。ただし、この路地の人々はおそらくは表通りに店を並べることができない。この街の市民権を持たぬ人々が、この細い路地の露店で日々の糧を稼ぐために汗を流しているのである。

 その一つ、町の人々はネッタの通りと侮蔑的に呼ぶ路地がある。一角に、その細工に首を傾げたくなるほどに、精緻に編み上げられた蔓草の篭に、水差しの壷が入った露店があった。山の民独特の細工だった。その大小の売り物の間に、ネアが膝を抱えて店番をしていた。昨日のスリの少女である。傍らに蜂蜜売りの露店があり、店主がコップ代わりの小さな鉢に、水に溶いた蜂蜜を入れて彼女に与えた。彼女は下卑た冗談を礼に変えつつ、それでもうれしそうに笑った。少女らしい素直な笑顔だった。しかし、すぐに少女はかなり露骨に、イヤな物を見たという表情をし、顔を背けた。


 商品を並べた筵の向こうに、旧知の親しみを込めて、ルシュウがじっとネアを見つめて微笑んでいたのである。やや、はにかんだ様子が見え、知人にどんな言葉をかければいいのか戸惑っているらしい。彼女の傍らの老人が少女に聞いた。

「知り合いか?」

 真っ白な毛髪と額の皺に、老人の年を伺い知ることができるが、それでも節くれだった指先から、貫頭衣の袖口に至るまで、筋肉の筋を描いて逞しい。

「いいえ、全然知らない人よ」

 少女はルシュウを無視して膝小僧を両の腕で強く抱きしめて、その中に顔を埋めた。まもなく少年は去った。遠ざかる足音でそれと知れた。ちらっと振り返った少年の寂しげな表情が、冷たくあしらったことに哀れさえ覚えさせ、また、あの少年の笑顔に素直に応じる事が出来なかった自分が惨めにも思えた。


 領主の兵が徘徊している。昨今、この界隈に数人の兵士が一隊になって姿を現すことがある。何やら捜し物があるらしい。らしい、というのは必ずしも、兵士たちが此処へくる目的が捜し物や尋ね人の為だけではないからである。憂さ晴らしをするのに絶好の場所なのである。

 兵士たちの言いがかりは、そのまま、罪状に直結した。兵士たちに引き立てられた者で、帰ってこなかった者の数が知れなかった。

今日、そんな兵士たちの犠牲になったのは、ネアの隣で店を開いていた蜂蜜売りの露店だった。ネアは大きく目を見開いて成りゆきを眺めた。兵士は、たまたま視線が合った蜂蜜売りを今日の憂さ晴らしの犠牲にしようと決めたらしい。店の前に兵士が立ち止まったことを、その足下だけ見て知った店主が、膝がふるえるほどにおびえているのが見て取れた。哀れな店主に三人でやってきた兵士の一人が剣を抜いた。

「我々は、盗賊を捜しておる」

「お前たちの中に、知っている者もいるはずである」

「名乗り出れば、悪いようにはせぬ」

 兵士はおきまりの言葉を繰り返した。脅しを込めて、背の低い兵士が、両手で握った剣を勢い良く振り下ろした。おそらくは、天幕を支える細い木の柱を斜めに切り落とす算段に違いなかった。しかし、細いが弾力性のある柱は、手入れの悪い剣の衝撃に耐え、剣を噛み込んで離さない。

その衝撃が両の手首に響いたらしい、兵士が小さく悲鳴を上げ、回りを気にしつつ、その悲鳴を悪態に変えた。

人々にとって気味のいい光景だろう。しかし、人々は後難を恐れて、その感情を声にしたり、表情に表したりすることをしなかった。

ただ唯一、ネアの幼い素直さがそれをさせた。声は出さなかったが、反感を込めながら、かなり露骨に兵士の方を向きつつ、素直に兵士の姿を笑ったのである。

「お前」

 先ほど悲鳴を上げた兵士が、ネアの表情に、自らの失態をごまかす言い訳を見いだしたらしい。

「反抗的である」

 リーダー格の兵士がネアに罪状をつけ加えた。人々は息を呑んで黙ったままだ。その重い沈黙が兵士を元気づけた。

「娘。笑ろうたな」

「我らはチムガ様の兵である。お前はチムガ様をあざ笑ろうたのだ」

 兵士はムシロの上の蔓草の篭を蹴り潰し、壷を叩き割った。

「乱暴はしないで、売り物です」

 ネアが兵士の一人に飛びついて、乱暴を止めようとしたのだが、その行為がかえって兵士たちの加虐意識を刺激した。兵士がネアの腕を取りねじ伏せようとしたので、少女は兵士の腹を膝で蹴った。

「兵士様、この娘はまだ子どもです」

 老人は孫娘を取り押さえつつ、兵士の間に割り込んだが、ネアの目は敵意に満ちて兵士を離さない。

「まだ、子どもです」

 老人はそう繰り返したが、兵士に蹴り飛ばされて地面に転がった。

「おじいちゃん」

 ネアが兵士の顔を掻きむしったて反撃したのだが、老人はそのネアを止めようとするばかりで、抵抗する様子がない。

「老いぼれが」

 兵士が当然の成りゆきのように剣を抜いた。その目が血走っていて、老人に向けた剣の先が興奮で震えている。

 人々は息を呑んだ。決して脅しでないことを知っているのである。ただ、老人を切り捨てて、少女を連行すればよい。この場合に一番簡単で自然なやり方だった。

「切れるの?」

 剣を失った兵士に、羽交い締めにされた少女が、地面を蹴って、小石を剣を抜いた兵士に跳ばした。兵士の注意を老人から自分に向けるつもりだ。彼女は目的を果たすために更に兵士を挑発した。

「そんな、なまくらな剣で、私が切れる?」

「娘、まだ我らを愚弄しおるか」

 兵士は怒りを隠せずそう言ったが、興奮でその後の言葉がない。人々はただ黙って見守るだけだ。しかし、短い沈黙を切り裂く声がある。ルシュウであった。

「なまくら、良くない」

 これ程までに顔立ちや肌の色が違う、しかも大きな荷を背負った少年が、いつの間に、その位置に居たのだろう。人々は何やら魔法でも用いた蛮族の少年が、突然そこに現れたような想像にとらわれた。しかし、魔法ではなく、自然体のルシュウに、その場の雰囲気に溶け込んでしまう才能がある。たぶん、人は誰でも、そういう素直さを持っている。ただ、自らが失ってしまった能力を、ルシュウのような少年の中に、見いだしたときに、何やら心地の良い魔法でも眺めたような驚きを感じるに違いない。

 ただし、この少年は、雰囲気に柔らかく溶け込みつつ、突如としてその空間を強引に切り開くということをする。

 この時には、背中からゆっくりと荷を下ろし、剣をとりだして、抜き身の白刃を兵士に向けると言う動作を自然な流れのなかにやってのけた。その白刃は兵士たちの剣より、やや長く、幅が広く、その存在感が重々しい。

 その曇りのない表面に、人々はその角度によって、赤や青や緑の様々な事象の反射光を見た。

「な、何を……」

 何をするつもりなのかと兵士の一人が口ごもって、驚きを声にした。領主チムガの権力を背負った彼らに楯突くものは居ないはずだ。それが、一種の信仰になって兵士たちの精神を支えている。しかし、たった今、一人の蛮族の少年が、彼らに剣の切っ先を向けているのである。少年は敵意をむき出しにしているわけではないが、兵士たちはその少年の表情が、かえって底知れず不気味なものに感じられるのである。

「我らに、逆らうつもりか」

 言った兵士の言葉が、少年にとって意味をなさない。少年は剣を振り上げた。


 カンッッ。


 剣の切れ味が鋭い。少年は剣を右腕一本で振るって、天幕の柱を切断したのである。兵士の剣が食い込んだ部分のわずかに上である。そして、次の瞬間、その下を二撃目で切った。兵士の剣が、丸太の破片を付けたまま地面に転がった。

 支えを失った天幕の端が、兵士の一人に覆い被さって、驚いた兵士が大げさな声を上げた。その兵士の声が収まる間があって、少年が、やや困惑した表情で口を開いた。

「剣、返す。お前、往ぬ、よい」

 少年は兵士たちに、剣は返したから立ち去れと命じているらしい。兵士たちにとどまる理由がなく、少年の言葉に逆らうには、少年の剣の切れ味が鋭すぎた。

兵士たちは舌打ちしつつ去った。剣の先に木片をつけている兵士の後ろ姿は滑稽ではあったが、ちらりとネアを振り返った兵士の目が執念深かった。厄介なことに、兵士はあの少女がこの騒動のきっかけになったと信じ込もうとしているらしかった。

 ルシュウは剣を鞘に戻した。残された人々は黙ったままだ。この見慣れない少年をどう扱ってよいのかわからないのである。

 ルシュウは、困惑の表情でネアに尋ねた。どうやら、少年は最初の目的地を思い出したらしい。ただ、彷徨っているうちに、目的地の位置を忘れたらしい。ルシュウは素直な笑顔で尋ねた。

「オレ、ギクの店行く。お前、ギグの店、知る?」

「知らないわ」

 ネアはそんな言葉を残して、人々を残して山猫のように駆け去った。


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