第16話 彼氏彼女の関係性



 恋人の露出をどこまで許せるか?

 なかなか悩ましい問題ではある。


 見せるための彼氏彼女か、見せないための彼氏彼女か。

 単純に目的によって異なるということではないかと思う。

 もちろん、その両極端ではなく間にあらゆるバランスが存在する。


 ただ、付き合い方にはこの双方の因子が見え隠れする。

 見せるための彼氏彼女なのか、、、それとも自らのみが愛でるそれなのか?

 どちらにしても、相手を所有物的な扱いをしているという面では変わるところがない。

 だから、根本的に恋愛として間違っていると言われればそれまでなのだが、でもその側面が恋愛の一部として厳然と存在することも否定できないと私は思う。

 それも含めて恋愛なのだろう。


 さて、ある場所で似たテーマに触れたときコメントにおいて次のような感じの書き込みを頂戴したことがある。


「彼氏彼女に自分だけがわかる美点があれば、周囲にうらやましがられるような相手ではなくても良い。」


 このような考えとは、今回のテーマは少し違ったイメージになる。

 上記の意見は、見せる見せないではなく彼氏彼女を選定する基準である。

 一方、今回のエントリは彼氏彼女の関係になった後に、それを衆目の視線にどれだけさらすのかということである。


 まず、完全に隠すことは容易ではない。

 漫画にでも出てきそうな感じで、瓶底メガネにぼさぼさの髪型、いけていないファッションで彼氏彼女は普段過ごしている。しかし、実際には凄い美男美女。。。。なんて極端な例も考えられなくはないけど、そこまでする必然性がなければ現実にはそんなことは続きはしない。


 いや、普段はぱっとしないけど磨けばヒカルと自らが最初に気づいたとすれば、先ほど提示した二つの議論は収束する。自分だけが気づいたという優越感、それがポイントになるであろう。


 結婚が将来にわたる契約であるとすれば、恋愛はそこまで至らない緩い関係性の約束である。

 気持ちは常に必死であっても、それは練習であり、様々なことを試す機会でもある。

 もちろん人によってはその恋愛が全てと打ち込む人もいれば、軽い気持ちでつながる人もいる。

 ただ、結婚との差を明確にするのであれば、やはり恋愛は形式上そこまで強い関係性を強要しない。


 人に見せるための関係というものもあれば、自分だけが見たいという関係もあるだろう。

 そこには、結婚という契約が存在しないが上の、相手を(社会的に)縛りきれないもどかしさが感じられる(もちろん、結婚が絶対というものではないのだが。。。)。


 自らの彼氏彼女を自慢したい。。。それは、そうした彼氏彼女を得ることが出来たという自らのステータスの自慢でもある。結果的には周囲における自分の立場を高くしようという考えだ。

 そのためには、彼氏彼女を見せなければならない。

 しかし、一方で恋愛は緩い約束でしかない。別の相手に奪われるかもしれない。。。だから、あまり目立つことはしたくない。出来る限り人の注意を喚起するのは避けて欲しい。

 こうした考えは、見せる見せないのベースになる思考である。これは誰にもすぐ気づくことだ。


 しかし、同時にそれ以外の思考も働く。

 先ほどと同様に自己自慢につながるという点は変わらないが、自己の所有欲を満足させるための行動としてのそれである。この場合、人に見せる必要など無い。自分が満足すればそれで良いのだ。だから、心許せる一部の人にしか見せたくない。。。という心理もあり得る。


 この議論は、恋愛相手を目立たせるか目立たせないかの議論である。

 しかし、他方で自分が目立つかどうかの議論もある。

 恋愛関係にある相手がすでにいる。しかし、ファッションはそれとは別。だから目立つ格好をしたい。これも、自己ステータスに関する顕示欲の発現だろう。

 恋愛とは別に、自己の満足を得るための行動である。場合によっては、その結果としてよりベターな恋愛への移行を考えていることもあるだろう。要するによりよい相手への鞍替えである。


 ここまでの話の展開では、わざと恋愛関係における相手方への愛情は無視して考えを展開してきた。本来であれば、恋愛関係に至るためにはそれが基本である。

 お互いに相手のことを優先的に考えれば、こんな議論は大きな問題ではないのだ。


 それでもこうした話が止まない理由。それは、結局のところ相手をそこまで信じられない。

 言い換えれば自分にそこまでの自信がない。

 話はそこに行き着く。


 自分に自信がないから、彼氏彼女を自慢することで自らのステイタスを向上させようと企み、それが故に彼氏彼女を失うのではないかと心配する。


 恋愛とはやはりやっかいなものだ。


「恋愛の自由度を妨げるのは、その夢に対する思い入れの弱さであろう。」

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