6#風船マブタチのハシボソガラス

 カラスのセナルの死を乗り越えたジョイは、また更なる『風船割り』のライバルを迎えた。


 ジョイは何時もように悠々と空の散歩を楽しんでいた。

 

 「た・・・助けてよお!!誰かあ!!僕の・・・僕のカーキチが・・・」


 ハシボソガラスのカースケが、通りすがりのハシブトガラスのジョイに声をかけてきて付いていくと、カーキチは嘴に割れた赤い風船の付いた紐を絡ませて開かなくなっていた。


 「誰かぁーーーーーーー!僕のカーキチの嘴の風船の紐を取ってくれ!!頼む!!頼む!!頼む!!うわああああーーん!」


 カースケは感極まって大泣き喚いた。


 「おーい!!嘴になにぶら下げんのぉー!!いい気味だ!」


 ジョイ、思わず「ぷっ!!」と吹き出して笑った。


 カラスのジョイは先にこのハシボソガラスコンビに、塒に集めていた風船を全部持っていかれたことを根に思っていたのだ。


 カースケの「きっ!!」とジョイを睨み付けた。


 


 ・・・拙者は何て態度を取ったんだ・・・



 後になって、カラスのジョイは自問自答した。この事件からジョイはハシボソを見かけると、あの時の素振りをしたことを思い出して、避けるようにした。


 カラスのジョイははあのハシブトガラスコンビにまた出会うことに、恐怖を感じた。


 もう誰にも嫌われたくない・・・と思いつつもやらかした他の奴に根に持たれることを、拙者は悔やんだわ。悔やんで悔やんで悔やんで・・・


 

 和解した。

 


 「いいや、全然気にしてないよ。カーキチの嘴に風船が絡んだんでひょ?!僕達、睨まれて当然のことしたまでよ!!睨まれてなんぼじゃ!!はっはっはっはっは!!」


「2羽同時に嘴で割ろうとしたら、お互いの嘴が吹き口の栓にぶつかってぷしゅ~~~~~っ!と萎んじゃったやつよ。そんでさあ、ドジしちゃった!!」


 あれから、ハシブトガラスのジョイとハシボソガラスのカーキチとカースケは、風船が配っている場所の情報のやり取りや、一緒に『風船割り』競争をするマブダチ同士となった。


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