7#風船割りカラス同士
同じハシブトガラスのキィオ。
このカラスも、同じく何百もの風船を割り続けた『風船割りカラス』だった。
ジョイが出遭ったのは、一つの悩みふごとを抱えていた時だった。
カラスのジョイの知り合いの、ドバト『ポポ姉さん』・・・
一羽で何百のハトを束ねる雌リーダーハト・・・
ハトの糞公害対策とかで、心無い人間に駆除されそうになったとこをハト達をかばって虐待され、その看病をしていたのだ。
丁度、街の公園で祭りがあり、食べかけがよく出そうだったから、何個かポポ姉さんに食べさせて、栄養をつけさせて元気にしようと思ったのだが・・・
その祭りの会場から、飛んでいく風船を見たら、何もかも忘れてしまい・・・
パァーン!!!
「?!」
赤い風船を思いきり嘴で突っ切き割ったカラスのジョイは、突然迫ってきたカラスの嘴に危うく激突しそうになった。
「誰だよ!!アブねぇじゃねーか!」
相手のカラスが言ってきた。
「それは拙者の台詞だ!!」
ジョイは言い返した。
「なん・・・だと?!謝れよ!」
「そっちこそ謝れや!!」
2羽のカラスは上空で激しく喧嘩した。
2羽はもつれ合いながら墜落し、アドバルーンと雑木林がクッションとなり、ドタッ!とお互い尻餅をついた。
「まさか同じ風船を狙ってたんじゃないの?」
「拙者が先に見つけたんだぜ!あの風船。」
お互いの体には、今さっき割った風船の破片がへばりついていた。
「ぷっ!!くっくくく!」「何がおかしいんだよ!」
「だって君の顔、ニワトリ見たく鶏冠生えてるよ!」
「そういうお前は、頭に長い毛が!かあああははは!」
「かあああはははは!!」
2羽のカラスは、お互いの風船の破片が張り付いた頭を見て大笑いした。
「ところで、」「なあに?」「君の名前聞かなかったんだけど、名前なあに?」
「拙者の名前はジョイ。風船割りのジョイだ!おっと失礼!」
上空に緑色のゴム風船が飛んでいくのを見つけたジョイは、すかさず勢いよい飛び立ち、パァン!と脚の爪で割ってまたキィオのいる地上に降り立った。
「話の途中ごめんね。拙者、風船を見るとつい嘴か脚の爪が出ちゃうたちで・・・」てへっと苦笑いするジョイの脚の爪にはしっかりと割れた緑色の風船の破片が握られていた。
「お~凄い凄い!!」
キィオは思わず翼で拍手した。
「あ、そうだ!で君の名前は?」
「自分の名前はキィオ。」
「キィオか。いい名前だね。」
「ありがとう。で、聞いていいかな?ジョイさん。君は何個今まで風船割った?自分はざっと1000個かな?」
「1000個?甘いな。拙者は10万5000個だよ。」
「じゅ・・・10万・・・?!」
「間違えた!1万5000個だった!」
「1万位でも凄いよ。ジョイさん。」
「やっぱり風船の割れる音って快感だね。」
「拙者はどでかい音がした時が、この世の至福を感じるね。パンパンに膨らんだのを。で、キィオとやら。風船を嘴で膨らましたことは?」
「えっ?自分はまだ・・・」
・・・とキィオとジョイは風船談義や武勇伝、美味しい残飯がよく捨ててある飲食店のゴミ箱の隠れスポット等色々話し会った。
話の途中にジョイは「ちょっと失礼!」と言ってはいきなり飛び立って、上空を飛んでいく風船を嘴や脚の爪で割ってはすぐさまキィオのとこに戻ってきた。
「いちいちすまんね。拙者、つい風船を見ると反応するもんで。」
また中断した話を話し始めると、今度はスティックに付いた黄色い風船が転がってきた。
「えいっ!」
パァーン!
今度はキィオの嘴の反応が早かった。
「う~ん、拙者の獲物だったのに。すんばらしい割りっぷりだ。」
ジョイは翼で拍手した。
「いえいえそれ程でも。」割れた黄色い風船の破片を嘴に付けたキィオが得意げに「ふんっ」と鼻息荒く胸を張った。
「で、ところでさあ。」
「なあに?」
話を切り出したのは、ハシブトガラスのキィオだった。
「ジョイさんとやらはどこの『群れ』の所属なの?」
「はあ?」
「だから『群れ』に入って食べ物を・・・」
「拙者はどこの『群れ』でもないよ。『群れ』に入るのは大嫌いでね。だって、厳しくて嫌なんだよ。何も『群れ』に属しなくても食い物に困らないしさあ。それに、『群れ』でこき使われると負け・・・」
「『負け』?」
「拙者は束縛されるのが大嫌いなの。分かる?自由に気ままに生きるのが本性なの。」
「要するに『にーと』でしょ?ちゃんと『群れ』に就けよ。」
思わずキィオは嘴を滑らせてしまった。
その瞬間、ジョイはカチンときた。
ジョイの顔は強ばらせ、怒りで震えた。
・・・まずいことを言ったかな・・・
キィオはしまった!と思った。
「ふざけるな!てめえ!拙者は拙者だ!てめえの生き方を強要するんじゃねぇ!!」
声を荒げたジョイはキィオに思い切り翼で叩き、脚蹴りをして飛んで逃げていった。
キィオは叫んだ。
「ジョイさん!ジョイさん!ごめんなさい!自分が悪かった!やっぱり同じ世界に生きられないんだね、自分達!ごめん!本当にごめん!」
キィオは大粒の涙を流しながら、怒りの収まらないジョイを飛んで追いかけた。
2羽とも目もくれなかった青い風船がかすめ飛んでいき、雲間に吸い込まれていった。
怒りの形相で飛んでいく、カラスのジョイ。
それを後悔の念でいっぱいに泣きながら追いかける、カラスのキィオ。
晴天の霹靂だった空はいつの間にか雲に覆われて、雨がポツポツと降り始めた。
どの位家の屋根や、山林を超えたのだろうか。
振り出した雨足は更に激しくなり、土砂降りになった。
2羽がずぶ濡れになりながらそれでも飛んでいった。
先頭のジョイは、街の外れに出たところでいきなり急降下していった。
追いかけてたキィオも、ジョイを見ながらついていった。
キィオの目の前には、閉店になったコンビニの廃屋が迫っていた。
その廃屋の割れたガラス窓からジョイは、中に入っていった。
キィオは、ジョイに悟らないように割れたガラス窓からそっと覗き込んだ。
中には1羽のハトが、ハアハアと息絶えだえに寝ていた。
そしてそのハトのすぐそばで、カラスのジョイが付き添っていた。
「ジョイさん・・・」
豪雨に濡れたキィオの目からまた大粒の涙がこぼれた。
「そこにいるのはキィオだろ?隠れないで出てこい!」
割れたガラス窓の中からジョイの声が聞こえた。
びっくりしたキィオは脚を滑らせて、廃屋の中へ落っこちた。
「ごめんよ~!ジョイさん!自分は!自分は!ごめんよ~!自分は!何と言って謝れば~!かああああ!」
気が動転したキィオはわあわあと大声で号泣した。
「うるさいなあ!さっきの件は許すから静かにしろよ!病気の者の前だろ?」
「・・・」
キィオは涙目で呼吸が荒い一羽の病気のハトを見つめていた。
「で、あの公園で風船を割りまくってたのは何で?まさか・・・」
キィオのジョイを見つめるその目に、はっと気づいた。
・・・拙者・・・何やってるんだ・・・?!
「本当は・・・この公園の祭りで食べかけがよく出そうだったから、何個かポポ姐さんに食べさせて、栄養をつけさせて元気にしようと思ってたのに・・・つい・・・風船を見たら、何もかも忘れて・・・病人をほったらかしで・・・一番悪いのは拙者だ・・・どうか拙者を一発張り倒してくれよ・・・」
俯くジョイの目にも、大粒の涙がこぼれ落ちた。
「何を言ってるんだジョイさん・・・君を張り倒せないよ・・・その前にやらなければならないことがあるでしょ?」
キィオは、ジョイとお互いの額をすり寄せて言った。
「それは・・・?」「彼女の元気を取り戻すことだよ。」
やがて、数日が過ぎた。
市民祭りの終わった公園でカラスのジョイは、木に引っかかっていて日が経ってガスの浮力が無くなり垂れ下がり性の抜けた風船を何個か取ってきて嘴に紐をくわえて、ベンチでぼけ~っとしていた。
そこに、カラスのキィオがやってきた。
「おっす!ジョイさん、久しぶりだね。今さっきハトのポポ姐さんとその部下達にの部下達に会ってきたよ。」
それを聴くとジョイは目から涙を滲ませ、キィオを振り向いた。
「キィオ!風船どれか1つあげるよ!浮いてないけど。」
「じゃあ、あの一番膨らんだ状態のピンクを・・・」
「だぁめぇ!これ拙者のお気に入り!」
「じゃあ、悄々してる青いのでいいや!」
「はい!青いの!今なら拙者が息で元通りのパンパンに・・・」
「いいよ、このままで。」「あっそう。」
「ところでさあ・・・」
話しを挙げたのはキィオだった。「なあに?」
「ポポ姐さんは、素晴らしいリーダーハトだよ。厳しいけど部下思いだし、包容力あるし、肝がすわってる。このリーダーハトならついて行ってもいいなと思うんだ。自分がハトだったら・・・でも自分がちゃんとしていればの話しなんだけど
な・・・」
キィオは一瞬顔を曇らせた。
「キィオ、君がどんな目になっているのかポポ姐さんから聞いてるよ。
『群れ』から追放された『放浪カラス』だってね。
ポポ姐さんは、今までずっと君の事を見守ってたて言ってたもん・・・!」
「ええっ?!」キィオはビックリした。
「ポポ姉さんが助かって本当に良かったよ・・・自分、本当に本当に・・・」
キィオは目から涙が溢れてポロポロととこぼれた。
「泣くなよキィオ、拙者まで泣けてくるじゃん・・・」
キィオとジョイは一緒にかあああ!かあああ!と貰い泣きした。
「あっそうだ!キィオ。」「なんだいジョイさん。」
「ポポ姐さんから聞いたんだけど、今度隣のまた隣町で市民祭りするんだって!一緒に行かないかい?」
「うん!行く行く!」
「当日ポポ姐さんと部下達もやって来るよ!毎年楽しみなんだって!優しい人間が食べ物いっぱい分けてくれるし、ポポ姉さん達も風船が大好きなんだって。う~んと、人間の時間で日曜日。日が後3回昇る頃だよ。大きな橋が掛かってるのが目印の公園だよ!」
「ありがとう!よし!この日一緒に楽しもうぜ!」
互いにキィオとジョイは、ニコニコして羽根と羽根で『ハイタッチ』をした。
橋のある公園の市民祭りの当日になった。
「お~い!キィオ!遅いぞ~!ポポ姉さんも隣にいるぞ~!」
カラスのジョイは、赤い風船を嘴にくわえて飛んできたキィオに声をかけた。
「すまん!すまん!寝坊しちゃった!で、風船がニアミスしてきたから追いかけていたし。」
キィオはジョイにペコペコと平謝りした。
「もぉ~遅いんだから~っ!拙者はこんなにも風船を割っていたんだよ~!」
『どや顔』のジョイの体には、無数の割れたゴム風船の破片がこびりついていた。
それを見たキィオは思わず、プッと吹き出して笑った。
「笑ったな~!よ~し!キィオの嘴の風船も割っちゃうぞ~!!」
「うわっ!よせっ!よせったら!」
体を芝生と割れた風船の破片だらけで戯れて、笑いながらはしゃぐキィオとジョイを見ながら拾ったポテトフライを頬張るドバトのポポ姐さん。
「アタシも入れて~っキィオさんの風船欲しい~っ!」思わずその輪の中に入り、もみくちゃになった。
ポポ姐さんの部下達は自由時間。追いかけてくる子供に翻弄されたり、ポップコーンを分けて貰ったり、素敵な時間を互いに過ごした。
赤い風船をキィオの嘴から奪い取り、ジョイの風船への攻撃から守ったポポ姐さん。飛ばないように脚に絡ませて、そよ風にフワフワ揺れている綺麗なゴム風船に見とれていた。
「仕方ないなあ。自分が拾った風船はポポ姐さんにあげるとして・・・うわぁ~風船がいっっぱぁ~い!!」
カラスのキィオは、催し物のブースで沢山配っている風船を何とか1つくすねようとして、そろりそろりと近づいた。
「こら~っ!!」
ブースのスタッフに追いかけられ、危うく大切な翼を掴まれそうになったキィオは、大急ぎで上空に飛び立った。
「全く危ないことするねえ。拙者も他鳥のことは言えないけど。」
飛んでくる風船を待ちわびながら、気持ちよく上空を飛んでいたジョイは、命拾いしたキィオに言った。
「自分も何回もこういうこと経験してるから、もう慣れっこだけどね。あっそうだ!!
一緒に飛びっこしようぜ!テクニックなら自分は負けないぜ!!」
「拙者こそ!」
雲ひとつ無い青空の風を切り、2羽のカラスは自由に羽ばたいた。
旋回
切りもみ
宙返り
急降下
縦横無尽に乱舞する2羽を縫うように、フワフワと白い風船が大空高く飛んでいった。まるで、2羽のスカイダンスを楽しむかのように。
しかし、
パァーン!
すかさずカラスのジョイは、その白い風船を嘴で割った。
それを見たカラスのキィオは感嘆した。
「ジョイさんの飛行テクニックは自分より凄い!風船を割ってもバランスを崩さずそのままの姿勢を保つことが出来るんだから・・・!自分の場合は、おっとっと!となるんだけどなあ。
あ、ちょっと休憩!」
キィオは、すぐ下の芝生に降り立った。
暫くして、
「お~い!かあああ!ははははは!」
「何?その変な声になっちゃって!どうしたの?」
「ん?拙者は風船の中のガスを吸い込んだんだよ!君もやってみる?」
変声になったジョイは、キィオに風船の吹き口に取り付けてある栓・・・この風船は今さっきキィオがくすねようとして、スタッフに追いかけられた時と風船と同じの・・・を嘴でポン!と引き抜き、
「さあ、これをくわえて息を吸い込むんだ!」
「はい?」
キィオは言われるがままに、風船の吹き口をくわえて息を吸い込んだ。
すると、
ぷしゅ~っと風船が萎み、風船のガスが一気にキィオの口の中に入り込んだ。
「うわ~!何これ!自分の声が!」
「どうだい!面白いだろ!かあああああっはっはははははは!!」
「かあああああっはっはははははは!!」
キィオとジョイはお互いの変な声に、思わず大爆笑した。
「あっそ~ぉだっ!!キィオ!」
「なあに?」
相変わらずヘリウム声の2羽は会話した。
「この萎んだ風船にさあ~、今度は息を入れてみてよ~!」
「え~~~~~~~~~っ?!」
日が暮れて、楽しかった橋のある公園の市民祭りは終わりを告げた。
スタッフが後片付けに入り、辺りは祭りの後の寂しさを醸し出していた。
ポポ姐さんは、脚に絡んだ赤い風船を得意げに靡かせて、「いいなあ~!」「風船欲しかったなあ~!」と羨ましがる部下達と一緒にねぐらに帰った。
カラスのキィオとジョイは、渦高く積み上がったゴミ捨て場で一緒に残飯を漁って腹ごしらえをしていた。
「焼きそばうめぇ~!!全く人間は食べ物を粗末にするんだから。」カラスのジョイは夢中で頬張っていた。体には、まだ割りまくった風船の破片が若干こびりついていた。
「この時を楽しみにしてたんだぁ!これぞ『後の祭り』だっ!食べるぞぉ~!久しぶりにお腹をパンパンにするぞ~!!」
数日前に『群れ』から追放の後に、ポポ姉さん達に弁当の中身を沢山くれた時から何も食べていないカラスのキィオは、豚汁の食べかけを片っ端からムシャムシャ食らいつき汁をジュルジュルと一気に吸い上げていた。
キィオもジョイもお互い声が元通りだ。『風船膨らましっこ』の時に、気嚢に入ったヘリウムガスを全部吐き出したからだ。
キィオは、『風船膨らましっこ』の時に自分が息を吹くときにどんどん膨らむ風船を見て、今を生きる喜びまで膨らんできた。
そして風船がキィオの吐息でどんどん膨らみ、やがてパァーン!と破裂した時、何かをやり遂げた優越感を感じた。
キィオはジョイに『喜び』を貰った。
ジョイは、『飛びっこ』の時、縦横無尽に自由に飛んで『飛ぶこと』の素晴らしさを通じて、それが今この時を生きる大切さを再認識した。
羽ばたいて風を切るごとにジョイは、心地よい優越感を感じた。
ジョイはキィオに『喜び』を貰った。
キィオのお腹もジョイのお腹も、いっぱいの残飯でパンパンになった頃、
「あの・・・」「あの・・・」
2羽はほぼ同時だったので、はっ!とした。
賺さず2羽はまた、
「自分とまぶだちになりませんか?」
「拙者とまぶだちになりませんか?」
また2羽は、「はっ!」と顔を向き合った。
「同時だね」「同時だね」
暫く2羽のカラスはお互いの顔を見ていた。
それからも、ジョイとキィオは一緒に風船を割ったり、膨らましっこをしたり、あるいは冒険したり・・・
と、親睦を深めていった。
ところが・・・
ある日を境に、キィオの姿が忽然と消えた。
「キィオ・・・あいつ『群れ』から追放されまくって、段々俯いてたからな・・・拙者のように『放浪カラス』でいいのに・・・『放浪カラス』より『群れ』で居たいのは分からくもないけどなあ・・・」
かあかあかあかあ・・・
「馬鹿だよ・・・あいつ、本当に馬鹿だよ・・・」
電柱の電線に、カラスのジョイのマブタチのアスレッドが屯していた。
「キィオの馬鹿・・・何処に行きやがった・・・」
「アスレッドさん?!『キィオ』と言ったよね?!」
「ああ・・・あいつ・・・行方不明になっちまった・・・!!『放浪カラス』より『群れ』でいたい拘りがあったんだろうな・・・この前逢った時には、交通道路から飛び降りて死のうとしてたし・・・慌てて止めたんだが・・・馬鹿だよ・・・あいつは・・・『アホー』だよ・・・『どアホー』だよ・・・!!」
ジョイは絶句した。
・・・あいつも、あの死んでしまったライバルのセナルのとこへ・・・
・・・拙者のライバルが次々と逝ってしまう・・・
「ねえ!!アスレッドさん!!」
「なんだよ?」
「風船持ってない?」「風船なら・・・君がいっぱい持ってるだろ?!あいつの弔いなら、しないよ。だってあいつ!!顔もみたくない・・・」
「何であいつを嫌う!!拙者は!!キィオの・・・ことが・・・いちばん・・・!!」
ばさ!ばさばさばさばさ!!
カラスのジョイは飛び立った。
ジョイは思いだしていた。
ジョイは思い浮かべた。
あの日、野鳥病院のゲージでもう飛べないと自暴自棄になった時に叱咤した、あの今は亡きドバトの『アンちゃん』のことを。
・・・何で拙者はドバトのアンちゃんのようなことを、キィオさんに言ってやらなかったんだ・・・!!
大粒の涙を流して飛び立った。
その涙の一粒一粒は、まるで風船となって空へ飛び立っていった。
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