2#ジョイの巣立ち
それからしばらく巣にくくりつけられた、黄色い風船は艶がなくなって浮かばなくなり、だんだん縮んで雛カラスの体くらい萎んだ。
逆に巣の7羽のカラスの子の体は、日に日に大きくなり、翼も動かせるようになった。
やがて時の兄弟は一羽一羽この風船の巣を後にした。
いつの間にか巣立っていないのは、兄のジョイだけになっていた。
ジョイは相変わらず母カラスに食物をもらっていた。母カラスは飛ぼうとしない拙者にしびれを切らしているのは薄々気付いた。
飛ぶのが怖かっただけだった。
ある日、母カラスが緑色の風船。しかも洋梨を逆にしたくらい大きく膨らんだ風船を嘴に加えてやってきた。ジョイは、
・・・貰える・・・!!
と嘴を開いて身構えて思った。
だが、母カラスはその風船を離した。
どんどん空にのぼる緑色の風船。ジョイは追いかけた。いつの間にジョイは羽ばたいていた。
・・・拙者は飛んでいる・・・!自分の力で飛んでいる!いつの間にか・・・ただ拙者はもう飛べるのに飛ぼうとしなかったんだ・・・!!
ジョイは遥か向こうまで拡がる大空を、翼を大きく羽ばたき扇いだ。
羽ばたいた。
羽ばたいた。
羽ばたいた。
羽ばたいた。
一生懸命羽ばたいてやっと緑色の風船に追いついた。ジョイはその緑色の風船に嘴を近づけた。
ぴゅう・・・
風がそよいだ。
ふわっ・・・
・・・ミスった!もう一度・・・
ぷすっ!!
パァ~ン!!!!
緑色の大きく膨らんだ風船は激しい音を出して破裂した。
ぶおおおおおおお!!!!
「うわぁっ!!」
割れた風船から猛烈に飛び出す圧力によってビックリしたジョイは、翼を必死に激しく羽ばたかせた。
ばさばざばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさ!!!!!!
ひゅうううううううう・・・!!
「うわぁぁっ!!」
ばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさ!!!!!!!!!!!!
ふうわり・・・
必死に羽ばたき、カラスのジョイの翼に風を与え、上昇気流に乗って高く高く飛ぶことが出きた。
「ほお!!」
カラスのジョイは、眼下に拡がる地上の景色に思わず感嘆した。
・・・拙者の母ちゃんの緑色の風船が拙者を自立させてくれたんだ・・・!!
・・・母ちゃん・・・!!
・・・達者でな・・・!!
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