暇を持て余した神々の生活

蒼井茜

第1話:世界創世記~伝説と真実

 初めに神は自分の分体を創り出した。

 世界を作るにあたって補助の役割を任せる者達だった。

 最初に創られたのは【水の女神】だった。

 生命に幸有れと、命を繋ぐ水をつかさどる神だった。


 続いて作られたのは双子の神、【光の女神】と【闇の女神】だった。

 優しく生命を照らす光と、眠りをもたらす闇をつかさどる神々だった。


 それからは駆け巡るための大地をつかさどる【大地の女神】、ぬくもりを与える【炎の女神】、香りを運ぶ【風の女神】、変動をもたらす【時の女神】が生まれた。


 こうして世界の骨子を創り上げた神は、それぞれの女神に眷属を創るように命じて深い眠りについた。


 その結果生まれたのが生命である。

 【光の眷属】であり傷を癒す魔術の心得と空を羽ばたくための翼を持つエンジェル。

 【闇の眷属】であり戦いの魔術の心得と強靭な肉体を持つデーモン。

 【水の眷属】であり水の魔術と水陸での生活が可能なマーメイド。

 【炎の眷属】であり炎の魔術と器用さを誇るドワーフ。

 【風の眷属】であり魔術と共に生きる種族フェアリー。

 【大地の眷属】であり特筆した能力は持たずとも多種族にはない繁殖力を持つヒューマン。

 そして【時の眷属】でありながらにして不変の能力を持つクロノス。


 それらの種族は互いに混ざり合い、新たな種族を作ることもあれば帆r日を迎える種族もあった。


 これがこの世界で語り継がれる世界創世記だけど、実情を知っている私たちから言わせたらとんだ茶番だ。

 確かに私たち女神は最高神であり、お父さまであり、お母さまであるあの方から産まれたけど、その理由は単純に面倒臭いから全部やっておいてという丸投げ精神からくるものだ。

 眷属だってじゃあ好き勝手にやってやるという私たちの意趣返しみたいなものだったし、ちょいちょい手助けとかはしたけど私たちは大したことをしていない。

 何万年という時間をかけて勝手に進化していったのを眺めているだけだったから。

 いやはや長い時間だった。


 けどそれも今日でおしまい、私は私の仕事を終えたし、妹たちも姉たちも、私の息子たちもみんな揃ってお仕事は一度終わり。

 別にこの世界に暮らす人々に何かがあったわけじゃない。

 むしろ私たち神様の手助けが必要ないところまで成長したといえる。

 だから私たちはそれを見守ることにした。


 長い長いお仕事を終えて休暇を取ることができたわけだ。

 でもね、それは文字通り休んで暇を持て余すことだったんだ。

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