第12話 アイツの占い
ズイッと顔を寄せてきた洋介に、綾乃はビクリと反応し顔を恐怖で引きつらせた。
「お前は何物だ……目的は何だ……なぜオレの事をそこまで知る必要がある?」
「べ、別に知ろうとかしてないですッ! これは占いの結果でわかった事ですッ! 別に目的とかそんなの全然無いですッ!」
「嘘をつけぇぇぇぇぇぇ!」
洋介は綾乃を威嚇する。
「ホントですぅぅぅ~! 嘘じゃないですぅぅぅぅ! そ、その証拠に、深谷さんのこの先の運命も見えてますッ!」
「……オレの運命だと?」
「は、はいですッ!」
洋介は近づけた顔を離し、綾乃はホッと息をつく。
「はぁ……怖かったです」
「そりゃこっちの台詞だ」
あれだけ正確に自分の過去を言い当てられれば怖くもなるものだ。
しかし、あの事実を知っているのは自分と優香だけでその以外の人達は誰も知らない。 たまたまあの光景を綾乃が見ていた事が考えられるが、それだけだとカンタ二号という自転車の名前を知っている理由にはならない。
信じられない事だが。
「………………」
なんか、本当にコイツは超常的な力を持っている気がしてきた。
「蒼井、お前コイツと知り合いだったりしないよな?」
一応の可能性いう事で優香に聞いてみる事にする。ここに来て一言も喋ってないのが何を無口になっているのだろうか。綾乃の踊りに対しても何の声も上げていなかったが。
と、思いながら振り返ると。
「深谷さんは他の人の運命に色々と関わっていく運命にあるです。そういう星の元に生まれてしまっているようです」
そこに優香の姿はなかった。一緒にこの路地に入ってきたはずだが、その姿が何処にもない。
「深谷さんは“その人”に対して重要な人物となっていくです。思い切りその人の運命に関わってしまうです。それこそ命に関わってしまうくらい、人生に関わってしまうくらい、そんな人物に洋介さんはなってしまうです」
来る途中ではぐれてしまったのか? いや、そんな事あるはずがない。
「もうなんか主人公なくらい影響力強いですね」
ここは長い一本道から少し曲がっただけの場所なのだ。入り組んだ場所などではない。いなくなってしまうのはあまりに不自然だった。
「しかしスゴイです。もうマジで物語の主人公ぐらい深谷さんの行動は“その人”に影響するです。無視する事も可能みたいですが、多分それはしたくてもできないような――――」
「なあ、オレの隣にいた女子が何処行ったか見てないか?」
優香は洋介の後ろにいたので、綾乃は何か見ていたかもしれない。
「女子? 洋介さんの隣には誰もいませんでしたけど? 洋介さん、一人でここに来てたじゃないですか」
「何?」
綾乃は優香の姿を見ていない。
やはり優香はここへ来るまでに洋介の元を離れてしまったようだ。優香は後ろからついて来ていたので、いつの間にかいなくなった事に気づけなかったのだ。
しかし、なぜ突然いなくなったのだろう。
一言声ぐらいかけてもよさそうなモノだが。
「あ、連れの人がいたですか?」
「ああ。オレの後ろにいたはずなんだけど、いつの間にかどっか行っちまったみたいだ」
探そうにも優香が何処へいったかなど解るわけはない。電話してみようと携帯電話に手を伸ばすが、優香の番号もアドレスも知らない事に気がつく。しまった、と洋介は頭を掻くも連絡を取れる手段がないのではどうしようもない。
これではもう帰るしかないなと洋介が思っていると。
綾乃がある方向を指さした。
「むむむ? 深谷さんがお探しの人はどうやらあっちに行ったようです」
「え?」
「この方向は九重病院です。そこにいるみたいです」
綾乃はいつの間にか占いを開始しており、ゴツゴツの水晶をギョロリと覗き込んでいる。さっきの占いのやり方がやり方だったので、水晶を覗いているだけの綾乃が凄く自然に見えた。
「病院?」
普通だと信じるには突発的すぎるが、目の前の少女占い師は最近の洋介をズバズバと言い当てた人物である。
そんなヤツの発言を無視する事はちょっとできない。
「なんで病院なんかに行ってるんだ?」
「さあ? そこまではわからないです」
ウーンと綾乃は頭を捻り、ダメだとばかりに首を振った。
「まだまだ綾乃は修行不足です」
「…………そうか」
なんだか納得できない答えだったが、とりあえず洋介は肯定した。
「気になるなら行ってみるといいかもです。なんかイベントのフラグが見えるです」
「お前に言われるとなんか怖くなるな……」
「占いは占いです。外れる時の方が多いですよ」
「………………」
またも納得できない答えに洋介は黙る。
「まあ、とりあえず行ってみるか……」
行き先など元から解らないのだ。最初の占いの事もあり、素直に洋介は病院に向かう事にした。
「お気をつけて行ってらっしゃいましです~~」
見送られ「またよろしくです~」と綾乃は手を振り、洋介もそれに手を振った。
「…………ん?」
病院に向かう途中、洋介は綾乃が占っていた事を思い出す。
洋介の過去をペラペラと言っていた時だ。そこで綾乃は、
『屋上でのお昼はその友達一号さんとこの先も続くですね』
たしかこう言っていた。
「………………」
知り合った順が友達になった順番だとするなら、この発言はおかしい。
コレは明らかに絵里子の事を言っている。
知り合った順が二番目の竹下絵里子の事を。
「所詮は占いだよ……な」
優香の事ではない。
一番最初に知り合い、放課後二回程一緒に過ごした彼女の事は友達にあげられていなかった。
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