第4話 強くてニューゲーム?

その人は年齢的にはただの白髪のジジイのはずである。なのだがそれを疑わせるような筋肉の鎧に覆われており、背も高かった。聞きたいことはあったが、立ち話もなんなので、個室にあるソファーにお互い腰掛けた。


「それで、あなたは?」


そう尋ねると男は


「儂はメルト。この国の元魔物使いで今は魔物関連の殆どを任されておる。」


(なるほど。そりゃあ、ゲームでよくある預かるだけのジジイだけならこんなにならないもんな。)


心の中で納得して、


「俺は佐々木凛です。で、何か用があるんじゃないですか?」


「そうじゃ。お主の身柄についてなんだが……。本当にこの世界の住人じゃないんだな?」


「そうですね。」


「という事は、お主はこれから先何をすればいいか分からないはずじゃ。」


(確かにそうなんだよなあ〜。)


今はエリスのご好意で個室に居候させてもらっているが、いつまでもこうしている訳にもいかない。


「そこでお主、魔物使いになってみんか?」


「え?」


俺はメルトの言葉に一瞬驚いたが、納得もした。確かに魔物使いになったらギルドとかいうところでクエストなどを受けてお金を稼げるとエリスに教えてもらった。また、定期的にそれぞれの大陸の国で魔物使いの大会が開催され、景品や多額の金が出るらしい。


しかし、


「やるのは良いけど、俺魔物持ってないですよ?確か、魔物を持ってない状況で魔物を捕まえに行ってはいけないって教えてもらったんですけど。」


大抵の人は親や親戚、友達から貰ったり、店で卵を買って育てたりするらしいのだが、俺はこっちに家族も友達もいないし、金も持ってない。このままだと、ニートになってしまう。


「心配するな。最初の魔物はこっちで用意する。」


メルトがそう言い


「昔、何度か凛さんみたいにこっちに飛ばされて来た人がいたから慣れているんですよ。」


とエリスが言った。


「そうなの?」


「凛さんと同じ世界からではないと思いますが、今もこっちに飛ばされてきた人はいますよ。」


驚いた。地球以外にも生命があるところがあるのか。


俺がこの世のスケールの大きさに感慨を受けていると、


「それじゃあ、決まったことだし、早速お主の魔物を見に行こうかのう。初めにしてはかなり強いのを揃えたぞ。」


「あ、ありがとうございます。」


初めての魔物か……。強い魔物を用意してくれたって言うし、強くてニューゲーム的な奴じゃね?とか思いながら異世界の新たなスタートに心躍らせながら俺はメルトのあとについて行くのだった。この先の不幸にも気付かずに……。

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