タイガー〇・バーサス・ジャイア〇ツ!(3/3)

 ……真っ白な思考の中から、

 ……ようやく視界が開けてきた。


 我が輩達の目の前には、金色に輝く、艶やかで長い髪と、ネコミミの付いた頭部が見えた……

 キャサリン氏である。

 キャサリン氏が、山田ヒロハル青少年と松本氏の間に割って入ってきたのだ。

 両手を広げ、まるで彼を守るように……

 突然の乱入者に松本氏はたじろぐ。

「え、えっと……あ、貴方は……なんや?またワシ等と話せるチビが来おったんか! 確か昨日階段のところから落ちてきた……」今取り込み中なんや!水を差すじゃねぇぞゴラァ!

「これ以上は十分。もう、山田君を攻め・・・・・・ピクピクないであげて」

 キャサリン氏は松本氏の頭のトラに話しかけているのだろうが、当の本人は何のことだか良く分かっていないであろう。

「え!? わ、私は別に、ああ? さては自分も、そのモヤシとグルになってお嬢をハメに来た輩か?山田君を攻めてる訳じゃ……あ……」 あまり調子に乗ってると、その耳を剥ぐぞゴラァ!

 トラはキャサリン氏に対して、お得意のゼロ距離メンチを放つが、キャサリン氏は動じない。

 そんな中、松本氏はハッと何かに気づいたように、山田ヒロハル青少年を見る。

「……そうよね。これじゃあ、そうや! エリナお嬢も言うたれ!ただ山田君から逃げてるだけになるよね」 この敵共を粛正した……お嬢……今何を言うたんや?

 松本氏は自身の胸に手を置き、ゆっくりと一回大きな深呼吸を挟む。

 トラも、彼女の様子を伺うように制止する。

「ごめんなさい山田君。貴方の思いは、受け取れないわ……私には・・・・・・お嬢……心の底から思ってる人がいるの」

 彼女は、おっとりとした可愛らしい瞳をほんの少し吊り上げ、真っ直ぐ

山田ヒロハル青少年を見る。

「私ね……凄く精神的に辛い時期が昔あって……もう、どうでも良いって思ってた頃があったの……実は今もそうなんだけどね。正直隕石が・・・・・・落ちて、みんな居なくなってほしいって、心の奥底では少し思ってたりするんだ……」

 山田ヒロハル青少年は思う。

 こんなに暗いことを言う松本氏は初めてだと……

 自分の知らない、彼女がここに居ると……

「でもね、みんなの前では明るく振る舞ってた……ううん、振る舞えたんだ・・・・・・……ユウキさんの御陰でね」

 彼女は、自身の書いた手紙を見つめる。

「私のお兄さんの友達なんだけど、私の家庭教師でもあるんだ・・・・・・……私が辛い時には、いつも相談に乗ってくれて……いつしか、好きになってたんだ」

 しばらく松本氏は目を伏せ、風に髪を揺らし、そして、またゆっくりとこちらを見据える。

「だから、山田君の気持ちは受け取れないの・・・・・・……でも、ありがとう」

 彼女は、いつも見せる慈母の微笑みを……いや、そんな幻想的な、完成された微笑みではなく。

 決意を感じさせる、強い意志を持った表情を見せる。

「嫌なことばかりの生活だったから……このまま、自分の思いを・・・・・・伝えないまま終わりにしようと思ってたけど……やっぱりダメだよね!」

 強く、手紙を抱きしめる。

「山田君に、こんなこと言うなんて、私は最低で自己中心的な女だけど……でも、貴方の御陰で……今までモヤモヤしてた思いが晴れた気がする。・・・・・・貴方の姿勢で私は勇気を貰えた。貴方の御陰で決心がついた……私も、思いを伝えに行きたい!」

 彼女は最後に……

「ありがとう……私なんかのことを好きになってくれて……私は何も返せない・・・・・・……お礼しか言えない。本当にゴメンなさい……だけど本当にありがとう!」

 山田ヒロハル青少年に伝えた後に、キャサリン氏に目線を向け、軽く笑顔を作る。

 そして、彼女は我々に背を向け、


「さようなら……山田君……」今までのお嬢の言葉は本物や……口が悪くすまんかった……ありがとうな


 走り去る。

 山田ヒロハル青少年よ、追わなくて良いのか?

 まだ、事情を説明して、内容によっては接吻して人類を救えると思うが?

「良いよ……もう……」

 ……そうか。

 なら、ここまでのようだな。



 人類の滅亡は、これで確定したのだ。

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