タイガー〇・バーサス・ジャイア〇ツ!(2/3)

……へ?……あ?

 山田ヒロハル青少年は頭を上げず、ただ返事を待つ。

 彼からは、松本氏の様子が見えないので、我が輩が状況を解説することになるが、松本氏と頭のトラは、言葉通り目が点になっている。

 だがしばらくして、松本氏は徐々に頬を赤らめていくのが見て取れる。

「え……や、山田君!? じょ、冗談・・・・・・……だよね?」

 その答えに、山田ヒロハル青少年は思わず頭を上げる。

「いえ! 冗談なんかじゃありません! 私は……私はアナタのことが本当に好きなんです!」

 正直、冗談と捕らえられたことは、非常にショックだった。

 それだけで泣きそうになるが、まだ答えは出ていない。

 そう、答えはまだ聞いていないのだ。

 松本氏は、戸惑いの表情を見せ、目を泳がせながらしどろもどろになる。

「え、えっと……そのなあ・・・・・・モヤシ……」

 すると、告白してから今まで黙っていた松本氏の頭のトラが、口を開く。

「・・・・・・えっと・・・・・・」自分……エリナお嬢のことがホンマに好きなんか?

 と、トラは睨み、ドスの利いた声で確認する。

 山田ヒロハル青少年は、松本氏に悟られないよう静かに頷く。

 すると、トラは松本氏の頭の上で座り直す。

「……あ、あのね……山田君なら教えたるわ……お嬢が本当は、自分のことをどう思っとるのかをな!……その……えっとね!」 ええか? エリナお嬢はな!

 トラは息を吸い、言葉を吐き出す用意をする。

 松本氏はオドオドしながらも意を決し、


「ごめなさい!! モヤシのことなんか、元から私も好きな人が居るんです!」眼中にないんじゃ!! このボケ!!


 ……頭を下げるのであった。


「……」

 山田ヒロハル青少年は……いや、山田ヒロハル青少年の頭の中に、松本氏の声が響き渡る。

 それだけである。


「あ、あのね、別に山田君のこと元からモヤシに興味なんかないんや!!は嫌いとかじゃないんだよ!」 のぼせとるんやないで!!


「……はい」

 ……山田ヒロハル青少年よ。これは自分で分かっていたことなのだ。

 別に気にする必要はない……

 考え過ぎなくて……よい。


「え、えっと、山田君のことは、可愛いテメェは、お嬢のことを好きだと思うなら、テメェのやってることは、後輩だと思ってて……だから、全然嫌いお嬢にとってタダのストレスってことに気づかんかったんか!!とかじゃなくて……」

「……スト……レス?」

 山田ヒロハル青少年よ……その言葉は聞かなくて良い……君のせいでは……


「え!? ストレス? いいえ! お嬢はなぁ、テメェ以外にも、ぎょうさん男達に告られてきとるんや!別にストレスなんか感じてないよ! 今まで話したこともない、好きでも何でもないいつも助けてもらってていろいろ手伝って 有象無象の男共からお嬢は告られてきたんじゃ!くれてるわ! だからストレスなんて……」そして、全員断ってきた! モヤシ、自分は好意を断った事があるんか!


「え……」

 こんなところで……川崎氏の……思い出しても……


「……えっと……ごめんなさい。相手の好意を裏切り、それによって傷つく人々を見たことがあるんか?だから……その……嫌いとかそういうことそれで自殺しようと考えるロクでもない奴も中にはおるんやで!じゃなくて……」


「傷つく……」

 ……山田ヒロハル青少年よ、余計なことを……考えるな。

 我が輩の……言葉を聞くのだ……


「き、傷つく!? や、山田君!告られただけならまだしも、周りの女共から陰口叩かれ始めるや! べ、別に私は傷ついてないよ!  何であの女ばっかりモテるんや!そ、それとも私、山田君のこと ってな! そんなん自分が努力してへん顔も性格もブスやからに傷つけてしまったの!? そ、その……決まっとるんやけどな!それで叩いてくる奴がおんねん!ごめんなさい!」


「……」

 山田ヒロハル……青少年の……せいでは……


「や、山田君、そんなに落ち込まないでモヤシ、エリナお嬢が学校のSNSで毎日叩かれてるのは知っとるか?……私なんかより、もっと良い それも知らなそうやな。何で自分より頭が良いや?何で自分より運動できるんや?人はいるから……ね? 何で先生と仲良くしとるんや? 何で自分よりモテるんや? わ、私はほら! 性格悪いし、何で自分よりスタイルが良いや? 何でいつも笑っとるんや?ってな!可愛くないからさ……山田君と テメェは、お嬢のことが好きだったのに?きっと釣り合わないよ。山田君にはもっと不特定多数から嫉妬の目で見られてたのも知らんのやろ? ああ?……」


「……はい」

 考えるな……青少年よ


「だ、だからね? 落ち込まないで?お嬢はな、いろんなストレスが積み重なって、壊れそうになってたんや! ね? ほ、ほら! こ、こんな時だけど、 そのことすらモヤシは気づかなかったんやろ?生きてれば なあ?良いことあるからさ!」

 

「……」

 ……


「や、山田君?」テメェも周りのゴミ共と同じや


「ゴミと……」

 ……同じ


「山田君……もしかして……泣いてテメェも、周りの悪意と同じ、エリナお嬢の敵なんや!!る?」

「松本先輩の……敵……私は、敵で……」

 ……女性を苦しめる……悪意

 父親と……同じ……


「山田君!? だ、大丈夫? 残り少ない、貴重なエリナお嬢の時間を潰して、乙女心を利用した上に自分本位でそ、そんな泣かなくても! は、ハンカチ呼び出して、自分と付き合ってくれだぁ?……テメェはなぁ……ハンカチ!」



「松本……先輩に……めいわく、を……」

 母を狂わせ……身勝手に振る舞っていた……父と一緒……

 母の……言っていた……通りだった……

 父親の血を受け継いだ……

 女を不幸にした男の子供……



「山田君……」身勝手で、自分のことしか考えられへん……



「わたし……は……」

 結局……自分の本質は……









      か え ら れ な い











「山田君!」テメェはゴミクズ野郎なんや!!

















「もう止めて!」・・・・・・!







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