メテオ・ストライク!(3/3)

 山田ヒロハル青少年は思考の限界に達しているようだな。

 簡単に言うなら山田ヒロハル青少年の興奮度を最高潮にすることで隕石衝突を食い止められる。今の現状から考えると、交尾することで最も興奮を高ぶらせた状態で絶頂させることが出来そうではあるな。

「……分かったわ。早くやりましょ」

 キャサリン氏は服を脱ぎ始める。

 しばらく放心状態だった山田ヒロハル青少年もその様子に気が付く。

「な!? キャ、キャサリン君! いったい何をやっているんだ!」

「山田君。私とセックスして」

「な、なに!?」

 キャサリン氏は上着のボタンを外し、下着が見え隠れする。それを山田ヒロハル青少年は制止する。

「キャサリン君! ま、待つんだ! そんなことをするんじゃない!」

「……何故? 人類の存亡が掛かっているのよ?」

「そうかもしれないが、早まるんじゃない!私達はまだ未成年だ! 付き合ってもいないのに、そういうことをしてはいけない! もっと自分のことを大事にするんだ!」

 山田ヒロハル青少年はそれとなく、キャサリン氏のあまり膨らみのない胸元に視線をやる。

「お、おい! 変なことを言うな!」

 ポーカーフェイスだったキャサリン氏が少し顔を赤らめ、胸を押さえた。

「ごめんなさい……私の身体では役不足ということね……」

「ち、違う! 貞操概念の問題だ! デブネコ君! セ、セセ、セックス以外で、代わりになる解決法は無いのか?」

 あるにはある。

「あるなら、それを早く言うんだ!」

 簡単だ。接吻をすれば良い。

「せ、せっぷん?」

 要はキスだ。

 ちゅーである。

 ちゃんと口同士を重ね合わせ、お互いの舌を絡めながら脳が痺れるような錯覚を覚えるほど濃密に行えば、0.0005%の可能性で成功するかもしれない。

「生々しく言わなくて良い! ほ、他は? 他にはないのか?」

 残念なことに、それぐらいでないと山田ヒロハル青少年の興奮度を限界まで上げることは出来ない。

 ……今、自慰行為をすれば良いのではと考えたようだが、それは山田ヒロハル青少年は毎日日課のように行ってしまっている為、その行為に慣れが生じてしまっている。

 慣れは作業性を生み出してしまい、興奮度の限界値を越えることが出来ないのだ。

「……じいこうい?」

 キャサリン氏はあまり聞き慣れない言葉だろうが、キャサリン氏が産まれた国の言葉を使うならオナニー又はマスターベーションだ。

「オゥ……」

「私をそんな目で見るなキャサリン君!」

 何はともあれ山田ヒロハル青少年は童貞。自慰以外の全ての性行為において慣れがないのはチャンスである。

「女の子が居る前で、ど、童貞って言うな!」

「知っていたから大丈夫よ」

 好意を持っている人物と性行為を行った方が、興奮度が増しやすい傾向にあるが、だが童貞ならばちょっとした刺激で絶頂に達する場合もある。

 我が輩は、山田ヒロハル青少年の精神状況も考慮した上で0.0005%と言ったが、もしかしたら予測以上の結果が出るかもしれない。

「山田君。私とキスしましょ」

「いや、だからちょっと待て! 早まるな!」

 大胆にも、キャサリン氏は彼に顔を近づけていく。

「デブネコ君! 君、もしかして楽しんでるだろ! キャサリン君もこの胡散臭いネコの言っていることを真に受けるんじゃない!」

「キスするだけなら簡単よ。私の国ではキスが挨拶なんだから」

「確かイギリスだろ? き、聞いたことがあるが、それは確か頬にじゃなかったか?デブネコ君が言っているのは口だぞ! しかも舌を絡ませる、その……ディ、ディープキスだぞ……」

 そう聞くと、色白のキャサリン氏の頬がまた赤くなる。

「だ、大丈夫よ。頬が口に変わっただけ……それだけで世界が救われるなら、私の初めてなんて安いもの……」

「初めてなら尚更ダメだ! もっと失敗した時のことを考えるんだ!」

 ふむ、確かに山田ヒロハル青少年の言っていることにも一理ある。

 これでもし失敗してしまった場合、慣れが生まれてしまう可能性がある。そうすると、好意を持っている人物と性行為をしても慣れで失敗する危険を伴う。

「デブネコ君! もっとそういう大事なことは、早く言ってくれ!」

「……つまり、プレイボーイでは世界が救えない。本番一発勝負って訳ね」

 それが一番確実に人類を救える方法だ。

「山田君。好きな人とセックスしてきて。早く」

「い、いや、待て待て! キャサリン君は言葉を慎むんだ! べ、別に好きな人とか……」

 いるではないか、松本エリナ氏が、

「うおおおおお! な、何を言っているのだデブネコ君!」

 隠すことはない。我が輩は山田ヒロハル青少年のことよく知っている。さらにキャサリン氏もネコの声が聞こえるなら、とっくにここに居る者達は知っておる。

「……山田君は、やっぱり松本エリナさんが好きなのね」

「あ、いや……その……」

 キャサリン氏の表情が少し暗いぞ。

「え? な、何故だ?」

「その……」

 彼女は少し黙り込むが、やがて山田ヒロハル青少年の目を見る。

「松本エリナさんには好きな人がいるのよ……」

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