メテオ・ストライク!(2/3)

 キャサリン氏の為にケーキとジュースを運ぶ山田ヒロハル青少年。何だかんだ紳士的な面を持ち合わせているのだな。

「お客さんが来ているのだから当然だ。それより君の分は良いのか? ケーキが苦手なら猫缶でも用意出来るが?」

 我が輩は構わない。

 我が輩達の栄養素は、君達の思考と感情だ。もう十六年間分は供給している。

「……私が産まれた時には、デブネコ君は頭の上に乗っていたのか?」

 その通りだ。我が輩にとっては、たった十六年間だが、山田ヒロハル青少年のことは良く知っている。

 しかし、良く知っていると言っても君の考えていることぐらいで、山田ヒロハル青少年の深層心理……無意識下にある君の声まで分からない。

 つまり、君のことを全て知っている訳ではない。だが、君は一番ではないが、人類の中では頑張っている方だと我が輩は思うぞ。

「……」

 そうこう話している間に、山田ヒロハル青少年の部屋に着く。

 部屋の中に入ると――

「……」

 キャサリン氏が、女性の身体構造と性行為を描いた書物を広げていた。それは、紛れもなく山田ヒロハル青少年の所有物である。

「ああああああああああああ!」

 山田ヒロハル青少年は書物を奪い返す。

「キャ、キャサリン君! ひ、人の、へ、部屋を勝手に物色するんじゃない!」

「……やっぱり、山田君は胸が大きな女の人が好きなのね」

「ああああああああああああ!」

 絶叫し続ける山田ヒロハル青少年。

 落ち着くのだ山田ヒロハル青少年。

 キャサリン氏は、ネコの声が聞こえていた。君が女性に対しての思考方式は、すでに筒抜けである。

 故に、君が女性の胸囲を眺める性癖は、とっくに知られているのだ。

「ああああああああああああ!」


 山田ヒロハル青少年が落ち着いたところで、先程の続きを行おうか。

「さっそく本題だが、隕石が落ちるとはどういうことだ?」

「言葉通りの意味、今大型の隕石が地球に向かって来ているの……推定あと二日後に」

 山田ヒロハル青少年の質問に、またしても淡々と答えていくキャサリン氏。山田ヒロハル青少年は眉間を押さえる。

「押さえたくもなる……それは何処で手に入れた情報なんだ?」

 そう言うと、彼女は我が輩を指さす。

「ネコ達からよ」

 さらに彼女は言葉を続けた。

「私が産まれた時から、大型隕石の存在は示唆していたわ。恐竜世代の前例があったから彼等はその予兆を教えてくれた」

 最後に彼女は――

「私の使命は……この大災害を食い止めること。人類の滅亡を阻止しに日本まで来たのよ」

 小柄な彼女は、気高く自身の使命を告げる。

 理解に苦しむ山田ヒロハル青少年は、さらに頭を押さえた。

「キャサリン君の言いたいことは分かる……だが、このネコ達が、本当のことを言っているという根拠が――」

 突然、さっきからつけっぱなしだったテレビから、アラームが鳴り響く。とっさに我々はテレビ映像をのぞき込む。すると、頭にネコを乗せたニュースキャスターが映し出されていた。

”「ただいま入った情報によりますと、国際的ハッカー集団アノエマスより、アメリカ航空宇宙局NAHAの隠蔽された極秘データが公開さたこやき食べたいれたとしてインターネット上に流出しました」”

 画面が切り替わり、英文が書かれたホームページが映し出された。

”「公開されたデータの内容は、超巨大隕石が予定では明後日地球に衝突することを記載されたものであり、AR通信によるばいっぱいたこやき食べたい隕石が衝突する確率は99.7%と非常に高い数値であることが伝えられております」”

 さらに画面が切り替わり、今度は国際会議場内を映し出される。

 そこには、白いロボット達が席に座り、会議をしているかのように稼働していた。

”「隕石衝突に対して政府関係者は、感情認識ヒューマノイド・ペパー君を残し、議員全員が行方を眩ましている状況です。なお、ペパー君は取材に対し、「大きなたこが入ったたこやきが食べたい誠に遺憾です」「申し訳ございません」とコメントを繰り返すばかりとのことでした」”

 引き続き、情報が入りしだいお伝えしますと、ニュースキャスターも一区切りつき、評論家達が隕石衝突について話し始める映像が流れ始めた。

「ようやくテレビでも流れたわ、これで隕石衝突裏付けにならないかしら?」

「……なんかこう……いろいろと突っ込みたいことがあるが……」

 山田ヒロハル青少年は非常に混乱する。

「まあ、隕石が落ちることは信じる他ない。なら、ネコ達の存在を知っている人々が人類の存亡の為になんとかしようとしていないのか?」

 しようとしている者も、人間の指で数える程にはいるが、大半は自身を守ることしか考えていない。

 保身に入っているようだ。

「ええ……」

 それにキャサリン氏が、山田ヒロハル青少年を見つめ直し、

「大丈夫、私もその指の数内の一人よ。そして、この事態を止める方法も知っているわ。この隕石衝突を止められる鍵は――」

 彼女は、スッと山田ヒロハル青少年を指さす。

「……え、わ、私が?」

 そう聞くと、彼女は首を横に振るう。

「正確に言うと、アナタの上に居るネコよ」

 我が輩に視線が集中する。

「デ、デブネコ君が?」

「そうよ、この子はネコ達の中枢部分にあたるの。ネコ達の統括みたいな感じ」

 如何にも、我が輩は我が種族の情報通達の特異点。指揮命令権も持っている。ボスネコと言った方が良いだろうか?

「何でそんな奴が私の頭に?」

 たまたまである。

「え?」

「そして何よりも、この子の物理干渉能力は他のネコ達と比べものにならない力を発揮するわ。地球にいるネコ達の力を全て引き出すことが出来るのだから……」

 そう、宿り木である山田ヒロハル青少年の感情を大幅に増幅させる必要があるが、我が輩の力を利用するほか隕石を止める方法はないだろう。

「……」

 キャサリン氏、山田ヒロハル青少年の思考が停止してしまったようだ。

「……そう、でも良いわ。元から全てを理解出来るとは思っていなかったから……」

 すると、キャサリン氏は立ち上がり、我が輩を見た。

「デブネコさん。どうすればアナタの力を引き出せるの?」

 と、我が輩に問いかける。

 何、簡単なことだ。

 山田ヒロハル青少年をさせれば良い。

「そう……」

「……え?」

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