地球終了まで残り一週間と二日ぐらい

①𓃠 セカンドサイト・ガール!

 まず、この話を語るには、山田ヒロハル青少年のことと、彼のクラスに現れた転校生の話をする必要がある。

 ちなみに、ここは朝礼間際のある高校の教室の一角である。


「おっす委員長! 元気してる?」

「や、やあ、おはよう川崎君……」


 今この委員長と言われた人物は、山田ヒロハル青少年、人間の男性で年は十六歳だ。

 身長は同じ年代の個体より頭一つ分ぐらい高い、三対七の面積で割り振った前髪、視覚能力は他の同個体より劣っており、眼鏡という視力向上の道具を常時身に付けている。

 社会的立場は高校一年生で、委員長というこの教室ボス、ある種の取り締まり役に就いている。

 そして彼は、この高校という場所に義務的に通い、知識を得たり、他人と交流したり、自宅で女性の裸体の絵を鑑賞することを日課として日々を過ごしていた。

 そんなある日、山田ヒロハル青少年の所属する教室に、他の国から来訪者が現れる。周りの言葉を借りるなら転校生というものだ。


「イギリスから来た……キャサリン・マヒルダです」


 小柄で、照明や角度によって白銀に映る程の綺麗に輝く黄金の長い髪、華奢な体に白色の肌、青い瞳の三白眼の少女だった。

 人形のように整った容姿の少女に、教室内にいる高校生達は騒然となる。

 山田ヒロハル青少年も平常心を保とうとしているが興味津々だった。

 まず、キャサリン氏の容姿を一通り眺め、最後に胸囲を確認する。


「……」


 可愛いが、胸がないなと彼は分析した。

 彼は表情や行動には出さないが、人種問わず女性の身体を好む性質を持っており、特に胸囲をいつも気にかけている。

 これも、誰にも打ち明けたことのない、彼の日課なのである。


「……ん?」


 山田ヒロハル青少年が、キャサリン氏の身体を舐め回すように黙って分析していると、彼女と目線が合ったのだ。


「……」


 たまたま目線を交えた訳ではない。

 じぃーっと、彼女は山田ヒロハル青少年を見つめていたのだ。


「え? ……な、何でだ?」

 まさか、自分がキャサリン氏の身体を舐め回すように見ていたことがバレてしまったのではないか。

 そんなことを考えた矢先――


「……」

「え? ちょ、ちょっと!」


 キャサリン氏が、山田ヒロハル青少年を見つめながら、無言で近づいてくるのだ。唐突な出来事に彼は困惑するしかなかった。


「……」


 周囲の高校生達が注目する中、山田ヒロハル青少年の目の前でキャサリン氏が止まる。

 彼女は山田ヒロハル青少年の頭上をしばらく眺め、そして彼の顔を見つめる。


「……どうしてアナタは、そんなに大きなネコを被っているの?」

「……はい?」


 教室に沈黙が走る。

 これが、山田ヒロハル青少年とキャサリン氏のファーストコンタクトである。

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