1月1日(水・祝)-前編-

『白組が優勝しました!』


 2019年の紅白歌合戦は白組が優勝した。今年の紅白もとても良かったな。あっという間の4時間半だった。


「今年も白組が優勝したね、悠介君」

「ああ。明日の初詣で栞に奢ってもらうよ」

「約束はちゃんと守るよ。大人だからね」

「おっ、さすが21歳」


 僕がそう言うと、栞は嬉しそうな笑みを浮かべながら大きな胸を張っている。2018年の終わりにも同じようなやり取りをしたような。

 奢ることになったけれど、栞はご機嫌な様子で良かった。紅白を観ているときにカクテルやサワーを呑んで、ほろ酔い状態になっているからかも。そんな栞が可愛くて彼女の頭を撫でる。すると、そのことで更に嬉しそうな笑みに。


「2019年ももうすぐ終わりだね、悠介君」

「あっという間だったなぁ」


 気付けば、2020年まであと3分を切っていた。テレビを観ていると右下に2020年までのカウントダウンが表示されている。

 いよいよ令和最初の年越しを迎えるんだ。あと、2010年代がこれで終わるから、今回の年越しも一つの節目という感じがしてくる……と、僕は考えているが、栞は僕の腕を抱きしめて、ほんわかとした表情を浮かべていた。カクテルやサワーをいくつも呑んでいたからだろう。

 


「悠介君、今年もお世話になりましたぁ。来年もよろしくお願いします」

「うん。こちらこそお世話になりました。来年もよろしくお願いします」


 僕と栞は1年の挨拶を済ませて、互いに頭を下げる。すると、栞は不意打ちにキスをしてきた。おそらく、これが2019年ラストのキスになるだろう。

 それからは一緒にテレビを観ながら、2020年を迎える瞬間を待つ。


『2020年まで……3、2、1!』


『Happy New Year!! 2020年あけましておめでとうございまーす!』


「あけましておめでとう! 悠介君!」

「おめでとう、栞」


 令和最初の年越しはあっという間に終わった。一瞬のことだからそれは当たり前のことだが。

 2019年の間は令和最初であり、2010年代の終わりでもあるので、年を越すことが特別な感じがしたけれど、実際に2020年を迎えると例年とさほど変わらないなと思った。

 2020年になって最初に栞と目を合わせると、栞が笑顔で僕を見てきて、キスをしてきた。


「今年もよろしくね、悠介君」

「うん。よろしく、栞」


 2019年になってすぐにも同じようなことをした気がする。毎年変わらず栞と一緒に新年を迎えることができるのは嬉しいことだ。

 きっと、1年経った2021年になったときも、僕らは同じようなことをするような気がする。


「2020年の初口づけ、美味しくいただきました」

「それは良かった。カクテルやサワーをたくさん呑んでいたからか、栞からはとても甘い匂いがしたよ」

「えへへっ、たくさん呑んだからね。もちろん、私の甘いキスを味わっていいのは悠介君だけなんだからね」

「ありがとう、嬉しいよ」


 そのためにも、栞とは今年も仲良く過ごしていかないと。

 栞は酔っ払っているが、僕はお酒の他にコーヒーも呑んだのでそこまで酔っていない。これも前回の年末年始で学んだことだった。


「ねえ、悠介君」

「うん?」

「2020年も最初のお風呂は悠介君と一緒に入りたいんだけれど……」

「もちろんいいよ。ただ、まだ酔いが残っているようだけど、お風呂に入って大丈夫か?」

「悠介君が一緒だから大丈夫だもん!」


 不機嫌そうな様子で頬を膨らませる栞。子どもっぽくて可愛らしい。これでも21歳の大学3年生なんだけどな。


「分かった。じゃあ、一緒に入ろう。ただ、気分が悪くなったりしたらすぐに僕に言うこと。分かったね?」

「うん、約束する! だから、一緒にお風呂に入って、一緒に寝よう!」

「ああ、分かったよ」

 

 2020年も楽しい1年になりそうな気がしてきた。

 その後、栞の御両親がお風呂に入っていないことを確認して、僕は栞と一緒に2020年最初のお風呂に入った。酔いが残っているからか、栞は終始楽しそうで。湯船に浸かっても気分が悪くなることはなかった。


「はぁ、お風呂気持ち良かった。恒例になってきたけど、新年になってすぐに悠介君と一緒にお風呂を入ることができて幸せだなぁ」

「僕も幸せだよ。いい1年になりそうだ」

「ふふっ、私も。お風呂に入ったら、ベッドの中で色々なことをしたくなってきちゃった。いいかな?」

「ああ。2020年の初めてをしよっか」

「うん!」


 その後、僕は栞と部屋に戻り、ベッドの中でとても楽しくて、気持ちの良い時間を過ごすのであった。

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