12月24日(火)

特別編-Merry Christmas in 2019-




 2019年もクリスマスイブとなった。今年は令和最初のクリスマスなので、平成最後だった去年と同様に例年とは違って特別な感じがする。

 大学の授業は昨日で一旦終わりとなり、今日から冬休みが始まった。

 一昨年や去年とは違い、今年は夕方から栞とクリスマスデートを楽しんだ。そのときは、栞が一昨年のクリスマスプレゼントでくれた青いニットキャップを被り、去年のクリスマスプレゼントでくれたシルバーのネックレスを付けて。

 栞も僕が一昨年プレゼントした赤いマフラーを巻いており、そこからチラッと去年プレゼントした金色のハートのネックレスが見えた。それが嬉しかった。

 この日のためにバイト代を貯め、予約した高めのイタリアンレストランで栞とクリスマスイブディナーを楽しむのであった。



 クリスマスイブの夜はどちらかの家で過ごすのが恒例となっている。もちろん、お泊まりで。

 去年は栞の家で過ごしたので、今年は僕の家で過ごすことに。それは前から決まっていたので、昨晩、栞と食べるクリスマスケーキを作った。

 僕の家に帰る途中、ケーキのときに呑みたいと、栞がスパークリングワインを買ってくれた。


「あぁ、今日のデート楽しかった! イタリアンの夕ご飯も美味しかったよ。ごちそうさまでした」

「そう言ってもらえて良かったよ」


 クリスマスイブっていう特別な日の夜を彩ることができたみたいで。レストランを予約した身としては、嬉しいし、ほっとした気持ちもある。ちなみに、夕食代は栞の分まで出しました。


「栞。さっそくクリスマスケーキ食べる? それとも先にお風呂に入る? 僕はどっちでもいいけど」

「まずはケーキを食べたいな。夕ご飯の後に、イルミネーションのある並木道を歩いたりしたから、お腹が空き始めてて」


 と、栞は照れくさそうな様子で言った。


「あのイルミネーション綺麗だったよね。分かった。じゃあ、さっそくクリスマスケーキを食べようか」

「うん! でも、戻ってくるときは扉をノックしてくれるかな。今年も例の服を持ってきたから着替えたくて」

「おっ、毎年恒例のやつか。分かった。僕は1階からクリスマスケーキとグラス2つを持ってくるね」

「うん!」


 僕は1階にあるキッチンに向かい、チョコレートケーキとグラスを2つ用意する。栞も食べるから甘めのチョコレートケーキにしたけど、気に入ってくれると嬉しいな。

 トレイに乗せ、自分の部屋の前まで戻っていく。

 ――コンコン。

 ノックをしてと栞に言われたので、忘れずにノックをする。


『いいよー』


 中から栞のそんな声が聞こえたので、ゆっくりと部屋の扉を開けた。すると、部屋の中で、


「悠介君! メリークリスマス! 栞サンタ2019だよ!」


 ノースリーブのサンタワンピースを着た栞が待っていてくれた。去年までとは違った雰囲気の服で可愛らしい。あと、去年までは年を追うごとに露出度が増していたけど、今年は足と腕の露出が多いだけだ。


「おおっ、今年も可愛いね。サンタワンピースの服か。新調したんだ」

「うん! その……胸が大きくなって、去年のものが着られなくなっちゃって。だから、今年はこれまでと違った雰囲気の服を着ることにしました!」

「そうだったんだね」


 ケーキとグラスを乗せたトレイをテーブルに置き、スマホを手に取る。去年の栞サンタの写真と今年のサンタと見比べてみることに。……確かに、去年よりも胸が大きくなっている気がするな。


「もう、悠介君ったら。視線がちょっと厭らしいよ」

「ごめん。胸の話をされたから、去年と見比べたくなって」

「ふふっ、正直でよろしい。ご褒美に写真を撮るのを許可しよう」

「おっ、嬉しいな。では、お言葉に甘えて……」


 僕は栞サンタ2019をスマートフォンで撮影する。毎年思うけど、栞がサンタさんの姿になってくれるのも素敵なクリスマスプレゼントだなと思う。


「じゃあ、クリスマスケーキを食べようか。今年は手作りのチョコレートケーキです。栞好みの甘いケーキにしたよ」

「嬉しいな! 作ってくれた悠介君に、栞サンタがスパークリングワインを注いであげましょう」

「ありがとう、栞」


 僕らはお互いのグラスにスパークリングワインを注いでいく。綺麗なピンク色だな。

 ケーキにスパークリングワイン、そして美女サンタさんと、僕の部屋の中が一気にクリスマスらしくなった。


「じゃあ、悠介君! メリークリスマス!」

「メリークリスマス!」


 グラスを軽く当てて、僕らはスパークリングワインを呑む。炭酸は強めだけれど、甘味があるので呑みやすい。


「美味しいね、栞」

「悠介君に気に入ってもらえて良かったぁ。実は、前に呑んだことがあって。美味しかったから、クリスマスケーキを食べるときにはこれがいいなって思っていたの」

「そうだったんだ」

「うんっ! じゃあ、主役のチョコレートケーキを食べよう! いただきまーす!」


 既に酔っ払い始めているからか栞のテンションが高めだ。

 栞は僕の作ったチョコレートケーキを一口食べる。


「う~ん! 美味しい!」


 とびきりの笑顔になって、僕にそう言ってくれた。クリスマスケーキを頑張って作って良かったな。栞からまた一つクリスマスプレゼントをもらった気がする。

 僕もチョコレートケーキを一口食べる。僕にとっては甘めだけれど、チョコの味もしっかりと感じられて美味しい。我ながら上手く作ったな。


「悠介君。美味しいクリスマスケーキを作ってくれたお礼に、あ~ん」

「栞サンタは色々なことをしてくれるね。あーん」


 栞にクリスマスケーキを一口食べさせてもらう。栞のフォークで食べさせてもらったからか甘さが倍増した気がする。あぁ、味わい深くて美味しい。


「美味しい。じゃあ、栞にも。はい、あーん」

「あ~ん」


 可愛らしい声を出して口を開けてくる栞。そんな彼女にチョコレートケーキを食べさせる。柔らかな笑みを浮かべながらモグモグする姿が可愛らしい。世界で一番可愛いサンタクロースだと思う。


「作った人に食べさせてもらうケーキは最高だよ! 凄く美味しい!」

「最高の褒め言葉だ。ありがとう、栞」

「えへへっ」


 栞はグラスに残っていたスパークリングワインを飲み干した。


「あぁ、美味しい。そろそろ、栞サンタから悠介君にクリスマスプレゼントを渡そうかな」

「おっ、ついにプレゼントタイムか! どんなプレゼントか楽しみだな。僕も栞にクリスマスプレゼントを用意してあるんだ」

「嬉しいな。じゃあ、同時に渡そうか」

「分かった」


 僕は勉強机の引き出しから、栞へのクリスマスプレゼントが入った桃色の袋を取り出した。

 栞もバッグから水色の袋を取り出していた。僕のプレゼントの袋よりも大きめだ。

 僕は栞と向かい合うようにして座る。


「悠介君。日頃の感謝も込めて。メリークリスマス!」

「メリークリスマス、栞。気に入ってくれると嬉しいな」


 栞と僕はクリスマスプレゼントを渡し合う。

 栞から渡された水色の袋を丁寧に開けてみると、中には黒い手袋が入っていた。


「おっ、手袋だ! 嬉しいなぁ」

「去年はネックレスをプレゼントしたし、今年は何にしようか迷っちゃって。そのとき、3年前のクリスマスに手袋をプレゼントしてくれたことを思い出して。それで手袋にしたの。スマホにも対応しているよ」

「そうなんだ。さっそく使わせてもらうよ」

「そうしてくれると嬉しいな。私には……あっ、お財布だ!」


 栞は嬉しそうな様子で、僕のプレゼントした革製の長財布を袋から取り出している。


「来年には就活があるし、その先の社会人になっても使えるものがいいと思って」

「そうなんだ。素敵なお財布だよ。大切に使わせてもらうね。ありがとう、悠介君」

「いえいえ」


 栞に喜んでもらえて良かった。

 プレゼントを何にするか考えているとき、スーツ姿の栞がふと頭に浮かんだので、そういった場面で使えるものがいいと思った。何だか、僕らは少しずつ大人になっているんだなと実感した。


「悠介君」


 僕の名前を呟くと、栞は僕をぎゅっと抱きしめてくる。チョコレートケーキを食べたり、スパークリングワインを呑んだりしたからか、それらの匂いが栞の匂いと混ざって香ってくる。とても甘い。


「……今年ももう一つプレゼントがあるんだよ。去年のクリスマスにもあげたんだけど」

「……それって何だろう」


 すぐに分かったけれど、本人の口から言わせてみたくて。

 栞は至近距離で僕を見つめ、キスをしてくる。そのことで彼女から香る甘い匂いが強くなった。


「……私です」


 はにかみながらも、はっきりと言う栞。やっぱりそうだったか。


「……今年ももらうことができて嬉しいよ」

「……良かった。残りのケーキとワインをいただいたら、私と一緒にお風呂やベッドの中で楽しくて気持ちのいい時間を過ごしてくれますか?」


 大学生になってから、毎年クリスマスイブの夜は楽しくて気持ちのいい時間は過ごしているけれど、こうしてお願いしてくるのがとても可愛らしく思えた。


「もちろんいいさ。可愛い栞サンタさん」


 今度は僕の方から栞にキスをする。多分、これから寝るまでの間に数え切れないほどに彼女とキスをするのだろう。

 ゆっくりと唇を離すと、うっとりとしている栞の顔があった。そんな彼女を見て、出会った頃に比べるとだいぶ大人っぽくなったなと思った。


「ありがとう。今夜はよろしくお願いします。もう冬休みだし、たっぷりと楽しもうね。その前に、まずは残りのケーキとワインを楽しもうか」

「そうだね」


 それからは残りのクリスマスケーキとスパークリングワインを楽しんだ。僕の作ったケーキを完食してくれてとても嬉しかった。

 そして、その後は約束通り、お風呂やベッドの中で、栞と楽しくて気持ちのいい時間を堪能した。時折、これが彼女のくれた一番のクリスマスプレゼントかもしれないと思いながら。


「悠介君、大好き」

「僕も栞が大好きだよ」


 そんなことを言い、キスしたやり取りもたくさんあって。

 令和最初のクリスマスはとても愛おしいものになった。学生最後となる来年のクリスマスも、栞と一緒に楽しく過ごせればいいなと思うのであった。




特別編-Merry Christmas in 2019- おわり

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